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2016年07月19日

非正規3000人「5年でクビ」
〈東北大学雇い止め問題〉

無期転換ルールの脱法

 東北大学(里見進総長)が、3000人以上の非正規職員を雇い止めする意向を表明したことで、労使の対立が深まっている。無期雇用への転換を避けるのが狙いで、東北非正規教職員組合と首都圏大学非常勤講師組合が6月27日に共同で行った団体交渉では、大学当局が就業規則を一方的に変えて一律の雇用上限を定めた経過が明らかになった。

 東北大学では正職員4686人と非正規職員5771人(15年5月現在)が働いている。18年4月以降に雇い止めの可能性があるのは「準職員(フルタイム)」と「時間雇用職員(パート)」と呼ばれる非正規職員計3243人だ。事務員や技術補佐員、研究員、非常勤講師、医員など幅広い職種が含まれており、大学の運営を支える職員が大量に雇い止めに遭えば、職場は大混乱に陥ると危機感が広がっている。この問題については、東北大学職員組合が当局と交渉を続けてきた。

▼無期転換の前にクビ

 背景にあるのは13年4月に施行された改正労働契約法の無期転換ルールだ。同法18条では、同じ使用者のもとで5年以上働いた有期契約労働者は、希望すれば期間の定めのない雇用に転換できると定めている。それを免れるために使用者が雇用上限を設定することは、法律趣旨に反するもので許されない。当時の厚生労働大臣も国会で「5年のところで雇い止めが起きてしまうと、この(雇用安定の)狙いとは全く違うことになってしまう」と戒めている。

 しかし東北大学は14年4月、非正規職員の契約更新の上限を一律5年以内とするよう就業規則を変更。さらにその契約年数のカウントを1年さかのぼって13年4月から始めることを決めた(図)。無期転換権が発生する18年4月の前に労働者を雇い止めするという、法の趣旨に逆行する行為と言わざるを得ない。

 非正規労働者にとって雇用継続に関わる重大な不利益変更だが、この決定について事前に職員組合との団交は行われておらず、一方的に実施されたことが両労組の団交で明らかになっている。

▼「希望者全員」が前提

 大学側は「財源問題」などを理由に無期転換者を選考する方針を示している。今年2月に大学側が雇い止めを通告した際に示した説明文書は、無期雇用化の対象について「能力が極めて優れた者で一般職員と同程度の職務を担っている場合等」と記載。該当者はごく少数で大多数が雇い止めされることが予想される。

 組合側は、無期転換は法律で定められたものであり、財政上の問題は理由にならないと主張。「無期転換後の労働条件は、従来の契約と同一」(改正労契法)とされており、追加の財源が発生しない点も合わせて追及している。

 6月27日の団交で大学側は、数百人いる非常勤講師について雇用の上限を適用しないと回答。しかしそれ以外の非正規職員については雇い止めの姿勢を改めていない。

 次回の団交は9月。組合側は、法律通りに希望者全員の無期転換を前提に、1年前倒しで17年4月の実施を要求している。

「無期転換の波 東北から」組合側は攻めの団交へ

 改正労働契約法の無期転換ルールを無視して3000人以上の非正規職員を雇い止めする意向の東北大学。東北非正規教職員組合と共同で団体交渉を行う首都圏大学非常勤講師組合の志田昇書記長は、「この闘いは全国の大学で無期雇用を求める非正規職員の雇用安定にも大きく影響する。無期転換の大運動を東北から起こしたい」と訴える。

▼民間の流れにも逆行

 国の試算によれば、改正労契法で無期転換対象となる勤続5年以上の有期契約労働者は約440万人。民間企業にその対応を尋ねた労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査によると、「何らかの形で無期契約にしていく」と回答した企業が昨年7月時点で6割を超えている。今回の東北大学の姿勢は、こうした流れにも逆行している。

 志田書記長は「他大学にも影響の大きい東北大学が、全国に先駆けて前倒しで無期雇用化を実現すべき」と指摘する。信州大や徳島大、島根大、山口大などでは、一律の雇用上限を設けず無期雇用化していく方針が既に確認されているが、多くの国公立大学はまだ明確な姿勢を示していない。無期転換権発生まで2年を切るなか、東北大学での無期雇用化を実現し、それを全国的に波及できるか重要な局面になっている。

「次回の団交が行われる9月までが勝負」と志田書記長。問題の大きさを社会に広く訴えて世論の力で東北大学を包囲し、前向きな再回答を引き出す構えだ。両組合は7月7日、全国の大学関係者や弁護士などによる雇い止め撤回の「アピール」を発表。雇用不安を招き震災復興を妨げる当局の雇い止め通告を撤回し、希望者全員に無期転換を認めるよう訴えている。(連合通信) 

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