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2016年09月05日

背景に地方経済の疲弊
鳥取最賃審の混乱

使用側は中小対策拡充求める

 鳥取地方最低賃金審議会では今夏、専門部会の改定案が公益委員の反対で否決されて差し戻される異例の事態となった。公益委員による運営の不手際だが、背景には地方経済の疲弊を訴える使用者側の強い反発があった。最賃審議の今後を考えるうえで軽視できない問題だ。

 地方の改定審議は、公労使各3人でつくる専門部会で改定案が全会一致にならなければ本審で採決する決まり。鳥取では8月10日、目安プラス1円の22円を示した専門部会報告(改定案)に対し、専門部会委員ではない公益委員2人が、本審で反対を表明。労働側が1人欠席したため、賛成6・反対7で否決された。

 鳥取労働局によると、専門部会報告に公益委員が反対した例は過去にない。反対の理由は、目安が高いうえ、1円上積みは納得できない――というものだったという(同労働局)。当該の委員は取材には応じていない。

 こうした展開は想定外だったと労使共に驚きを隠さない。労働側の田中穂・連合鳥取事務局長は、民主主義の原則上あり得るとしたうえで、「専門部会内では、労使の意見のかい離が大きいため、公益委員が裁定して改定案をまとめた。公益内の意見不一致で、改定の発効が遅れることは納得できない」と厳しく批判する。

▼政府へのアンチテーゼ

 一方、使用者側は目安に激しく反発した。当初主張したのが「第4表(零細企業の賃金上昇率)」に基づく7円の引き上げ。次が16春闘の賃上げ率を乗じた16円。最後に「『目安マイナス1円』の20円ならば賛成する」と表明した。政府のトップダウンに対する「アンチテーゼ」の意味が込められていたという。

 使用者側の宮城定幸・鳥取県経営者協会専務理事は「なぜ21円の目安なのかの具体的な説明がなかった。中賃の補足説明も不十分で納得できない」と憤る。特に強調するのが中小企業の疲弊だ。最賃引き上げのための現行の助成金が非常に使いにくいと指摘。設備投資を促すなどのきめ細かな対策が必要と述べ、次のように語る。

「鳥取県は2次、3次の下請けがほとんど。大企業から発注を受ける側だ。発注額の(人件費に相当する)単価を3%上げるなど、大企業に利益が集中しないような方策を望む声が中小の経営者には多い。『(低単価で)おたくでできないならよそで』といわれる弱い立場。発注の改善がないと最賃の上昇にはついていけない。中小にも付加価値の配分が必要だ」

▼支援具現化がポイント

 審議は8月16日に再度、同じ「22円」の改定が諮られた。前回反対した公益委員1人が「どうしても抜けられない用があり」欠席。賛成多数で決着した。
 答申は最賃審の要望として(1)中小企業・小規模事業者の生産性向上のための支援の実施及び事業者間取引条件等の改善(2)中小企業・小規模事業者の支援策の周知徹底及び利活用の促進――を明記。昨年より踏み込んだ書きぶりとなった。

 田中事務局長は中小支援の拡充について「労使の一致事項。発注システムを是正しないといけない。そのうえで、中小がしっかり経営できるということを確立しないと、加重平均千円といってもなかなか難しい。具現化が最大のポイントだ」と語る。

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 審議を傍聴した鳥取県労連の役員によると、使用者側委員が目安に執ように反発する場面が例年以上に多く見られたという。
 景気の波に置き去りにされがちな、地方の中小企業への支援。今後千円以上をめざすに際し、労働側からもしっかり提起していく必要があるのではないだろうか。(連合通信) 

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