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2016年07月19日

今こそ、まっとうな最賃を
〈働く・最前線からの告発〉

ジャーナリスト 東海林智

 選挙の年は、政治が発信する言葉がブームになる。古くは池田勇人の「所得倍増」、小泉元首相は「抵抗勢力」「刺客」などの言葉で劇場型選挙とも呼ばれた。

 今回の参院選はどうだったか。安倍晋三首相はひたすら「アベノミクスの成果」を主張し、野党は「改憲勢力の3分の2阻止」を掲げた。どちらもブームにはならなかったが、与野党に共通する言葉もあった。その一つが「最低賃金の引き上げ」だ。選挙の影響もあり、現在審議中の16年度最低賃金の改定は例年にない注目を集めている。

▼従来通りなら限界

 最賃をめぐる与野党の主張をまとめると、政府は「年3%の引き上げで1000円にする」で、野党は「今すぐ1000円を実現し、1500円を目指す」だ。政府案だと1000円の実現は、2023年。野党は、いくらなんでも射程が長すぎると「今すぐ1000円」を主張している。

 厚生労働省の幹部はこう言う。

「野党は今すぐ1000円というが、どう実現するの? 与党の毎年3%も、現在の最賃なら24円だが、過去最高の引き上げだった昨年の18円を上回る。やったことがないものを毎年できるのか」

 与野党案とも実現不可能なのだという、実務家らしい現実的な見解だろう。

 確かに、今の最低賃金の決め方では指摘の通りかもしれない。ありていに言えば、今の決め方は前年よりいくら上げるか、抑えるかのようなやり方だ。企業の支払い能力が重視され、厚労省調査の中小企業の賃金上昇率(いわゆる第4表)が審議の中心となる。16年で言えば、賃金上昇率は1・1%。「これが上げられる数字の上限ですよ」との経営側の主張から始まるのだ。こうしたやり取りで決まっていく限り、(16年度の全国平均)798円があっという間に1000円になったりはしない。

▼支払い能力でいいのか

 しかし、そもそも、最低賃金は労働の再生産を可能にする賃金を保障しようというもの。生活できる水準がいくらなのかが議論されなければならない。連合の神津里季生会長も「水準の論議がきちんとできるよう最賃の決め方を見直す必要がある」と主張している。 前出の官僚に「水準論でなく支払い能力を決め手にするなんて日本だけだ」と指摘すると、深くうなずき「労使交渉で決めるという日本的労使慣行が最賃にも貫かれている」と話した。これは「生活できる水準かどうかより、使用者が支払えるかどうかが重要」ということだ。ここを変えない限り、労働者がまっとうな生活を送れる最低賃金など実現し得ない。(連合通信) 

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