京都府職員労働組合 -自治労連-  Home 情報ボックス 府政NOW 京の写真館 賃金 料理 大学の法人化



2016年05月23日

「生活ギリギリ、最賃上げて」
生協労連がパート労働黒書

貯蓄なし、真夏でもクーラーなし

 「ダブルワークで倒れ仕事を減らした。育ち盛りの息子に満足な食材が買えない」「家賃を滞納している。今の収入では子どもを高校に行かせられない」。生協で働くパートタイマーの声を集めた『パート労働黒書3』の一節だ。生協労連がまとめたもので、黒書からは、「家計の補助だから」と低賃金に抑えられている女性たちの深刻な実態が浮かび上がる。

 生協労連(6万5000人)の組合員は約7割がパート労働者で、うち9割以上が女性だ。非正規で働く現場の声を踏まえ春闘をたたかおうと、2014年から毎年黒書を作成し、今年は3年目。生協とその関連会社で働く53人からの聞き取りと、10人分の手記が集まった。渡辺利賀書記次長は「経営側に実態を訴えるとともに、組合員の間で要求の切実さを共有することも重要な狙いの一つ」と話す。

 特に深刻なのは、冒頭の訴えなどシングルマザーの現状だ。

 生協で働くある50代女性は3人の子どもと4人暮らし。週5日・約27時間の勤務で時給は800円だ。非正規で働く子どもたちの収入を入れても家賃や食費、水光熱費などに消え、貯金はほとんどできない。夏はエアコンなし、冬は電気ヒーター1台で過ごしているという。「最低賃金を上げてください。息子、娘が人間らしく希望をもって生きていけるように」と訴える。

▲背景に間接差別

 職務内容は正社員とほぼ同じなのに、賃金や処遇に大きな差がつけられている現実がある。渡辺さんは「例えば食品などをトラックで宅配する『配送』の仕事は正規・非正規ともに1人で行うなど、客観的にみても職務内容に大きな差はない」と指摘する。

 しかし賃金の格差は大きい。配送パート歴10年の女性は「供給量や達成目標はほとんど変わらないのに、パートというだけで給料は正規職員の半分!」と憤る。

 同労連の柳恵美子副委員長は「こうした実態の背景には雇用区分による間接差別がある」と指摘する。

 正社員の夫と主婦の妻という「性別役割分業」のもと、主婦が多くを占めるパート労働者の賃金は「家計の補助」とみなされ低く抑えられてきた。国民年金の扶養控除など社会制度もそれを前提として設計されている。実際には正社員と同様の仕事をしていても、「主たる生計者でない」という建前で賃金や処遇の著しい差別が温存され、シングルマザーなど家計を担うパート労働者の現状をより一層深刻にしている。

▲共働きでも苦境

 黒書から見えるのは「家計の補助」という働き方とはかけ離れた実態だ。夫の収入があっても生活は決して楽ではない。
 夫が介護職員という40代女性は、夫婦の収入を合わせてやっと暮らせるという。10歳の子どもを育てながら「万が一どちらかが働けなくなることが不安」と訴える。

 夫婦で子ども2人を育てている30代女性は時給810円。自身が大学の奨学金返済で苦労した経験から、子どもの教育費用の貯蓄を優先し、支出を切り詰める毎日だ。「子育てや教育にかけるお金は、将来的には社会に健全で効率的な循環をつくる初期投資。政府や自治体の大事な仕事だと思います」

『パート労働黒書3』は生協労連ホームページからダウンロード可能だ。http://bit.ly/1qpDyBc

1000円以上は世界の常識/日弁連が集会/低すぎる日本の最賃

 日本の最低賃金は国際的に見て低い水準だとして、弁護士や学者、最賃水準近くで働く人々が、時給1000円以上への引き上げが必要と訴える集会が5月13日、都内で開かれた。主催は日本弁護士連合会。日弁連は昨年、一昨年と大幅引き上げを求める会長声明を出すなど、この問題で積極的な発信を行っている。

▲水準の妥当性が問題

 日弁連貧困問題対策本部の竹下義樹本部長代行はあいさつで、「働けど働けどワーキングプアから抜け出せず、生活保護より低い水準で働く逆転現象が今も生じている。米国での最賃引き上げの状況も踏まえ、日本も1000円にとどまらず、1200円、1500円へと、実態を踏まえた議論が必要だ」と主張。弁護士の三浦直子事務局員は、最賃改定で生活保護と比較する際、現行の単身世帯だけでなく、子どものいる世帯との比較が必要だと指摘したほか、「企業の支払い能力」を考慮して決めるとしている現行法の規定の必要性に疑問を投げ掛けた。

 講演した神吉知郁子立教大学准教授(労働法)は「『最賃は家計補助者の賃金』という発想に基づいているため、非常に低い水準に抑えられてきた。引き上げ率ばかりが着目され、水準が妥当かどうか見直されたことがほとんどない」と問題点を指摘。「効果よりも、労使の決定プロセスが重視されてきたといえる。最賃引き上げの政策ターゲットを明確にすべき」と強調した。(連合通信) 

府職労ニュースインデックスへ