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2016年06月27日

パワハラ配転で従業員を支配
東洋食品元社員が告発

残品再利用を指示

  惣菜の製造販売を行う東洋食品株式会社(福岡県北九州市)で、1年4カ月の間に5回の配転・異動命令を受けたうえ解雇された元社員の澤山秀之さん(50)が、解雇撤回を求め裁判に立ち上がった。同社では従業員への不払い残業、会計操作、在庫隠しなどが横行し、従わない社員に懲罰的な配転を強要しているという。澤山さんは「多くの従業員がつらい目にあっている。悪質な労働環境を社会的に訴えたい」と話している。

 同社はスーパーマーケット内のスペースで惣菜の製造販売を行っている。西日本を中心に全国で約250店舗を展開し、取引先にはイオンやコープ、エレナ、サンリブなど大手スーパーが並ぶ。2012年時点の売り上げは147億円、従業員は3251人(ホームページより)だ。

 澤山さんは別の食品会社で26年勤めた後、10年に入社。ベテランの営業社員として多いときは20店舗以上を担当してきた。

▼モノ言う社員は「配転」

 配転の強要が始まったのは、13年12月に会社の上層部が変わってからだ。その2カ月程前にパワハラの事実を訴えていた澤山さんは「標的」となる。

 当時会社からは、引き続き大分エリアを任せるので事業所の近くへ一家で引っ越してほしいと要望され、妻は仕事を辞めることになった。ところが急に広島へ配転命令を受け、大分の話もなくなった。同社ではそれまで、本人の同意なく転勤を強いることはなかったという。家族の人生も振り回される命令を受けるべきか迷った末、この時は従った。

 しかしその後15年4月までに、広島→山口→福岡→地域内異動→佐賀と5回の配転・異動命令(表)。5回目の命令を受けた際、3月に加入していた労働組合(北九州地域一般)を通じて命令取り消しの団体交渉を申し込んだが、回答のないまま着任日の翌日早朝に即日解雇された。その後の団交でも会社側の姿勢は変わらず、澤山さんは16年4月に解雇撤回を求め提訴に踏み切った。

 こうしたパワハラで解雇や退職に追い込まれた被害者は澤山さんだけでなく、既に20人近くに上るという。会社にとって都合の悪い社員には転勤を迫って退職に追い込み、会社に従う者だけが残る。そうしたいびつな労務管理の背景には、常態化する違法行為があった。

▼不払い残業による搾取

 同社の労働時間管理は、マークシート式の出勤表に本人が手書きで記入する形式になっている。しかし実際には何時間残業しても、契約書通りの出退勤時刻を記入するよう指示が出ているという。例えば5時間契約のパート労働者は5時間分のみを記入。営業社員は繁忙期で休みがとれず残業が長時間に及んでも、出勤表にはきっちり1日8時間、月8~9日の休日を記入させられているのだ。

 連合通信はある店舗での実際の労働時間が書かれたメモを入手した。それによると、4~5時間契約のパート労働者は、最長の人で一日当たり7時間以上、平均でも6時間勤務していた。毎日パート労働者全員が約2時間不払い残業をしている計算になる(表)。店舗担当の営業社員も休みは月4日程度しかとれていなかった。

 澤山さんは、こうした実態を労働基準監督署に申告し何度も足を運んでいるが、実効的な是正指導には結びついておらず実態は改善されないままだ。

 各店舗での不払い残業代は、膨大な額に上る可能性がある。会社は昨年11月、過去2年間分の未払い残業代の請求権を従業員に放棄させる内容の「示談書」を作成し、営業社員にサインするよう求めたという。

 澤山さんや在職中の営業社員など4人が原告となり昨年12月、同社を相手に未払い残業代を求めて福岡地裁小倉支部に提訴。現在裁判が進められている。

残品再利用を指示/東洋食品元社員が告発(下)

 東洋食品株式会社のパワハラで退職に追い込まれた一人である元営業社員の吉田孝平さん(30)に話を聞いた。労働者を使い捨てにする同社の体質が、労使間にとどまらず企業コンプライアンスや消費者の安全性を脅かしている事実が浮かびあがってきた。

▼会計操作、在庫隠し

 各店舗の決算の数字を操作する不正は2014年夏ごろから始まったという。吉田さんは毎月2回の決算の際に在庫を数え、棚卸し額を上司に報告していたが、折り返し「金額を変えるように」と、毎回指示を受けていた。黒字の多い店舗の数字を赤字店舗にまわす会計操作だ。また黒字の店舗で原材料などを余分に仕入れて隠し在庫をつくり、それを別店舗で使用することにより赤字を黒字にする会計操作も行われていたという。

 こうした不正は、いずれも本社への業績報告を実際より良く見せようとする目的で行われているとみられる。社内でのパワハラが深刻化する以前には「あり得ないことだった」。

 15年8月から9月にかけて同社には福岡国税局の特別調査が入り、追徴課税がされている。

▼残品再利用の指示

 消費者の立場から見過ごせない不正もあった。15年6月ころ、吉田さんはある店舗で前日に売れ残った焼き魚や焼き豚を再度焼き直し、ラベルを貼り替えて翌日再販売するよう上司に指示された。思いもよらない指示に「万一食中毒が出たら」と怖かったが、上司からのいじめなどパワハラが常態化する職場のなかで、とても意見ができるような状況ではなかった。指示はその後、何度も続いたという。

 食品の安全性を脅かす行為について、スーパー側はどう考えるのか。大分県で店舗展開し、今回残品再販売が行われた「トキハインダストリー」に電話で尋ねると、担当者は「あってはならないことだ。事実であれば厳しく対応したい」とコメントした。

 東洋食品は別のスーパー(沖縄)で15年11月に食中毒事故を起こしており、食品会社としての姿勢が問われている。

▼労組に加入し告発

 吉田さんはその後大分地域労働組合に加入。会計操作や残品利用などの不正行為に加え、夜間に酩酊(めいてい)状態の上司から電話で暴言を受けるなど常態化したパワハラ、長時間労働や不払い残業の是正を求め、団体交渉や宣伝行動で会社を追及した。ところが会社側は今年3月、会議室に吉田さんを呼び出し、役員や顧問弁護士ら6人でささいな社内ルールの違反を詰問。同弁護士が主導する形で強制的に退職に同意する確認書にサインさせた。

 翌日吉田さんと大分地域労組は確認書の取り消しを申し出たが会社は取り合おうとしないまま、退職の期日を迎えた。現在退職の撤回と未払い賃金の支払いなどを求め提訴を準備している。

▼「過労死出る前に…」

 他にも裁判を準備中の元社員がおり、全国的な争議になる可能性もある。しかし裁判に立ち上がることができるのは、被害者のごく一部だ。全国でパワハラや不払い残業、不当配転に苦しむ従業員の数は計り知れない。

 澤山さんの解雇撤回訴訟では、パワハラを受けて解雇に追い込まれた元社員や組合に加入し会社と交渉を続ける現役社員など8人が、証人として陳述書を提出している。そのなかには、新卒で入社し何もわからないまま配転命令が繰り返され、過酷な長時間労働や暴言によって「洗脳されている状況だった」という証言もある。

 澤山さんは「多くの従業員が不当に職を追われ、また社内で苦しんでいる。このような悪質な労働環境を社会的に訴えることで、健全な会社に戻ってほしい。過労死や過労自殺が出てからでは遅い」と話している。

 裁判の行方や会社側の対応について、引き続き監視が必要だ。(連合通信) 

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