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2016年09月05日

国に従うのが「政治的中立性」?
教育現場を委縮させるもの

自民党の「密告サイト」

 いつ、どの教師が、どこで「偏向教育」を行ったのか――政権与党である自民党が今年6~7月にインターネット上に開設した「密告サイト」は、教育現場を萎縮させる思想統制だと批判が続いています。18歳以上に選挙権が与えられるなか、「政治的中立性」を掲げた教育への介入に対し、現場ではどのような実践が求められるのでしょうか。

▼本来は国家権力の介入防止

 大阪府内の公立中学校で社会科を教える50代の女性教員は、「こうした動きは以前から起きている」と指摘します。

 女性は沖縄戦を扱った授業の後、テストで「日本軍の任務は沖縄を守るより本土決戦を遅らせる時間稼ぎだった」という内容の問題を出題しました。すると自民党の地方議員からテスト問題を情報開示請求され、議会で「偏向教育だ」と攻撃を受けました。「安倍政権の発足以降、地方議員の教育への監視・介入が強まっている」と危機感を募らせます。

 名古屋大学の中嶋哲彦教授(教育学)は、「『政治的中立』とは、まず国家権力が教育に介入しないということ。いま政府が進めているのは『国の考えを伝えるのが中立』ということで、本来の意味とは全く逆」と批判します。

▼生徒の政治参加保障を

 現場ではどんな実践が求められるのでしょうか。

 中嶋教授は「多様な意見があることを示した上で、生徒自らが価値判断や政治的選択ができるような実践が重要」といいます。
 教師が一市民として教室で意見を述べるのが自由である一方、教育実践としては、生徒に押し付けにならないための「中立性」が必要という指摘です。

 そうした教育実践についての社会的合意を、世論を含め広くつくっていくこと。それが国家主義的な教育への介入を押し返していくためにも重要だと中嶋教授は強調します。

 「その上で必要なのは、選挙や国民投票などの制度的な政治参加だけでなく、デモや集会など非制度的な政治参加を生徒自身に保障すること。それが政治的教養の育成には不可欠です」

▼「自前の社会づくり」をめざす実践

 埼玉県の私立高校で社会科を教える菅間正道さんは、「政治・経済」の授業のなかで「政治家に手紙を出す」取り組みを8年ほど続けています。今年は、選挙権を得た生徒が参議院選挙の候補者に政策を尋ね、投票先を決めました。

 「いざ手紙を書こうとすると、生徒は『自分はこの社会をどう見ているのか。どんな課題や問題があるのか』と思い悩みます。それを通じ政治への関わり方が少しでも変わってほしい」

 菅間さんは、そうした自らへの問いかけや実践を通じて目指すのは「自前の社会づくり」だといいます。

 「この社会は自分たちがつくっているということ。自分が願う世界や社会はどんなものなのか、生徒自身に考えてほしい。また、大人も含めて『政治を語ること』は敬遠されがちです。教室や職場で普通に政治を語り、願いや思いを声にしていくことが重要ではないでしょうか」(連合通信) 

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