京都府職員労働組合 -自治労連-  Home 情報ボックス 府政NOW 京の写真館 賃金 料理 大学の法人化



2016年05月02日

復旧、支援に奮闘する労働組合
地震続く熊本

雇用への影響懸念も

 4月14日以降に発生した熊本での一連の地震は、死者49人、関連死14人、負傷者1398人(4月26日現在)という被害を生じさせた。地震活動はいまだに収束する気配はなく、震度1以上の揺れは約1000回に及ぶ。一時は約9万もの住民が避難した。現在も4万人余りが自宅の外で夜を過ごす。

 最初の大きな揺れから一週間、現地の労組は、役職員自身が被災するなかを、組織と機動力を活かし、復旧、生活支援に奔走していた。一方、今後雇用への影響も懸念される。ナショナルセンターと、おもにライフラインに関わる業種の組合を訪ねた。

★生活相談メーデーを開催〈熊本県労連〉

 熊本県労連もボランティアと物資の支援を全国に呼びかけている。5月1日のメーデーでは、炊き出しと生活相談を行う。熊本は全国に先駆け、今夏の参院選で野党と市民の共闘を実現させた県。「熊本から民主主義を! 県民の会(くまみん)」に加わる政党や市民団体にも協力、連携を求め、住民の暮らしを守る活動を強める。

 22日、県労連事務所では楳本光男議長が、無事を知らせる組合員の来訪や、ボランティア支援準備の電話に応対していた。自身、車中泊を続けながらの一週間だった。 

 同議長が懸念するのが、「休業で自宅待機の間の給料は出るのか」という相談が地震発生後一週間で3件も寄せられたこと。会社都合だと労働基準法は、賃金の6割支給を義務付けているが、天災の場合はこの限りではない。「会社も労働者も同じ被災者。年休取得で処理するなどの方法を話し合ったり、労働基準監督署に持ち込むなど、会社の言うことを鵜呑みにしてはならない」と話す。

 国は22日、熊本地震に伴い、休業補償の一部を負担する雇用調整助成金の適用要件の緩和を決めた。便乗解雇を防ぐとともに、国の制度や働く者の権利を広く知らせる活動を展開していく。

★車中泊で交代制夜勤も〈熊本県医労連〉

 二度にわたる大きな揺れは、医療にも影響を及ぼしている。熊本市民病院(556床)は入院患者を近隣自治体の病院に全て移送。入院機能を中止する病院も相次いだ。

 施設の損壊を免れたとしても、被災した職員の負担は大きい。熊本県医労連の田中直光委員長は「勤務する病院では職員235人のうち60人が車中泊か、避難所から出勤している。夜勤明けの職員にとっては相当きつい。十分な睡眠を確保するために宿泊施設を確保したいが、市内のビジネスホテルは(ガス、水道などの供給停止で)ほぼ全てだめ。皆相当に無理をしている状況だ」と話す。

 別の病院の話として、地震直後、患者を運ぶにも、閉じこめられる事態を考えるとエレベーターを使えず、屋上の水道タンクが壊れて水が滝のように流れる中、患者を病院の外に全員退避させたという。こうした事態が再び発生するかもしれないという不安を抱きながらの勤務が続く。

 熊本地震の特徴は、相当程度の地震が頻発し、いまだ収束のめどが立たないこと。長期間の緊張が続くなか、休息と人の確保が急務となっている。

★住宅修理に国の助成を〈熊建労〉

 「わぁ、野菜がある」

 震災による事務所損傷で本部機能を移した、熊本県建築労働組合(約5000人)東部支部は朝から組合員の来訪が絶えなかった。 事務所には、東京や阪神地方の土建労組からの米、野菜、果物、お茶などの食材、ティッシュペーパー、紙おむつ、歯磨き粉などの生活雑貨が積まれている。カップ麺やおにぎりに偏りがちな被災者にとって、野菜は嬉しい。

 お昼どきには主婦の会の組合員が炊き出しを振る舞う。温かい煮込みが体に染み入るようで、束の間疲れを忘れさせてくれる。

 仕事の合間を縫って対応してくれた林太介俊副委員長(大工)は、特に被害が甚大な益城町に住む。地震以降、80歳になる母親、妊娠中の娘ら家族5人で車中泊し、そこから仕事に出掛けていた。

「(15日未明の)二度目の震度7の揺れで『家の中にはいられない』と車の中で寝ていたが、もう限界。地震に備え、いつでもすぐに外に出られる状態にしながら家で寝ている。昼は年老いた母親を置いて仕事に回るのが心配だ」。

 地震後は崩れた屋根にブルーシートを覆う作業で忙しい。他都県の土建労組が届けてくれたブルーシートを使い、無償で地域の家を補修する。雨天での屋根の上の作業は危険なため、晴れの日に集中して仕事をこなす。

 気がかりなのは、屋根が崩れたまま放置されている家が少なくないこと。「雨にさらすと余計な修理が必要になる。応急措置を知らせる行政の対応が必要。今後を考えると、リフォーム助成のように、地震で壊れた住宅を修理するための助成制度も必要ではないか」

〈解説〉住民の不安にいかに向き合うか

 熊本地震は相当規模の揺れが収まらず、広域の活断層に沿って広がりつつあるのが特徴。「次に大きな揺れが生じたら家が倒壊するのでは」という恐怖にさいなまれ続けている。住民の不安に行政がいかに向き合うか。対応が問われる。

 震度7の揺れが続き、気象庁も「想定外」という地震。被災した人々は一様に、「ゴーという地鳴りと家屋のきしむ音でトラウマになった。とても家では眠れない」という。

 家屋の下敷きになる不安から、夜は車中に退避し、エコノミー症候群による関連死を招いている。指定外の避難先は、行政も把握しきれていない。支援物資の量、種類のミスマッチを引き起こしている。

 今後の支援は住民の不安に向き合い、安心できる住環境づくりへの道筋を示せるかがカギとなる。現地では、耐震診断の早期実施、耐震補強助成の拡充、家屋修理への助成、国家公務員宿舎など遊休施設の利用、避難所のプライバシー確保――などの声が聞かれた。

 だが、政府の初動は現地の人々に心を寄せる対応ではなかった。地震発生後、被災地に「屋内退避」を指示し、熊本県知事から「現場の気持ちを分かっていない」と批判された。当事者の声に耳を傾けない政治手法が露呈したといえる。

 さらに、批判の多いオスプレイ機での物資輸送を米軍に要請したり、菅官房長官が「憲法改正」による緊急事態条項創設を訴えるなど、「地震の政治利用」と非難されても仕方がない言動を繰り返した。震源地が南に広がっているのに、川内原子力発電所を稼働し続けていることの是非も問われて然るべきだろう。

 これから夏を迎え、現地は厳しい暮らしを余儀なくされる。住まい、雇用、医療など、被災者のニーズを丁寧に拾い上げる行政の対応が必要だ。現場の切実な声を届ける点で、被災現場を熟知する労組の役割が一層重要になっている。(連合通信) 

府職労ニュースインデックスへ