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2016年06月13日

リストラビジネスは野放し
時の問題/人材会社の商機を拡大

雇用仲介事業で報告書

 厚生労働省の有識者検討会が6月3日、職業紹介事業の規制を大幅に緩和・撤廃する報告書をまとめました。人材会社の商機を拡大する一方、批判の強いリストラビジネスへの規制は、全くの及び腰。労組による労働者供給事業には規制を強める内容です。

 営利事業者による職業紹介は、人身売買、中間搾取などの弊害を防ぐため、厳しく規制されてきました。報告書は、この緩和を主張する人材会社の意向に沿う内容といえます。

 まず、職業紹介事業の許可要件緩和を打ち出しました。これまで事業所は20平方メートル以上でなければならないとされてきましたが、この面積要件を廃止、事業所外での事業も認める方向です。実態のないペーパー会社や、携帯電話一本で求職者を右から左へとさばくような業者の参入が懸念されます。

 現行法では、職業紹介事業者には全ての求職者、求人を受け付けなければならない「全件受理義務」が定められています。公共性の強い事業なので、求職者や求人を選別してはならないという原則です。

 報告書はこの義務を維持するとしながらも、「取り扱い職種」を示せるように例示するとしました。うま味の多い高年収の職業紹介については人材会社で行おうという狙いだとみられます。職業安定行政をゆがめかねない問題です。

 職業紹介と労働者派遣を兼業する場合、求人や求職者の情報については「別個の管理を要しないことが適当」としています。既にハローワークの求人情報はオンラインで民間職業紹介事業者に提供されていますが、その情報が派遣会社の営業に利用される弊害が懸念されます。「正社員求人で募集しながら、実際は派遣の仕事だった」という被害を助長するとの指摘もあります。

▼「人買い業者」の横行

 企業が人材募集を第三者に任せる「委託募集」も完全自由化の方向です。人権侵害が多発する外国人技能実習生の問題で絶えず登場するのが、ブローカーなど「人買い業者」の存在。少子高齢化による人手不足が深刻化するなか、こうした「人買い業者」の横行が懸念されます。

 一方、労働組合による労働者供給事業は規制を強める内容です。現行の許可基準を維持するとしながら、許可・更新間に「継続的に確認すべき」と、監視を強める文言を加えました。厚生労働省の担当者は「特に違法や不適切な事例があるわけではないが、検討会の議論でそうなった」と述べています。

▼人材会社支配の社会へ

 報告書には、虚偽求人への罰則整備など「求職者保護」が盛り込まれました。違法を恥じない悪質企業への批判と運動の高まりの反映ですが、不十分な点が少なくありません。

「虚偽求人」は表面化しにくく、実効ある規制とするには一層の検討が必要です。「固定残業代の明示等指針の充実」も盛り込まれましたが、固定残業代はそもそも脱法行為。それに対して行政がお墨付きを与えるような指針を作るのは本末転倒との指摘もあります。

 人材会社が国の助成金を使って企業のリストラを請け負っている問題への規制も極めて及び腰です。検討会では「新たなビジネスなのだから規制は必要ない」という暴論も「有識者」から飛び出したといいます。「規制」の文字はなく、業界の自主的取り組みや助言のあり方の検討にとどめています。

 どれを見ても人材会社においしい話ばかり。就職から退職まで人材会社が強い影響力を持つ雇用社会の出現が懸念されます。

 秋以降、労働政策審議会の議論が始まります。注意が必要です。(連合通信) 

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