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2015年 4月26日

 「受け手の表現の自由も侵害」
「慰安婦」写真展中止事件

中央大の宮下紘准教授が指摘

 表現の自由に関わるある裁判がヤマ場を迎えている。写真家の安世鴻(アン・セホン)さんが、「慰安婦」写真展を写真ギャラリー「ニコンサロン」から開催直前にいったん拒否され、さまざまな被害を受けた事件だ。4月20日に開かれた裁判の報告集会で中央大学の宮下紘准教授は「ニコンサロンは、多くの写真展来場者の、『表現を受ける自由』を奪おうとした。この点でも表現の自由への挑戦だ」と指摘した。

 安さんらが裁判の中で一貫してニコンに説明を求めてきたのは、写真展を中止しようとした本当の理由だ。ニコン側は、写真展を開催した場合、政治団体の抗議行動によって、安さんの身に危険が及ぶことを恐れたと説明してきた。

▼受け手の「表現の自由」

 安全性確保のためなら許されるのだろうか。今回の裁判に憲法学の視点から意見書を提出した宮下准教授はこう指摘する。

「憲法21条は一切の表現の自由を保障しており、安全性の点からこれを妨げるためには、明らかな差し迫った危険が、具体的に示されなければなりません」

 弁護団によれば、ニコンに寄せられた抗議電話などは30件ほどであり、その他はネット掲示板による書き込みだったという。それらを根拠に写真展中止を判断したとすれば、ニコン側の過剰反応が疑われる。

 宮下さんは、今回の事件で表現の自由を侵害されたのは、安さんだけでなく写真展に来るはずだった来場者だという。「表現は送り手と受け手があって初めて成り立つもの。その双方の表現の自由が保障されるべきというのが最高裁の判断です。安さんの写真を見たいと願った多くの人々の表現の自由を奪ったことが、今回の事件の一番の問題」と指摘する。

 安さんは報告集会で「今後同じことが起きてほしくない」と訴えた。「写真文化の向上」をめざし、多くの優れた写真表現の場となってきたニコンサロンの姿勢が問われている。

▼事件の経緯

 写真家の安世鴻(アン・セホン)さんは、2012年6月に写真ギャラリー「ニコンサロン」で「慰安婦」を題材にした写真展の開催を予定していた。しかし、開催1カ月前になって突然ニコンから中止を告げられた。その後、東京地裁で施設使用の仮処分が認められ、2週間の写真展が開催された。

 ニコンによる一方的な契約違反に加え、明確な根拠もなく表現の場を奪った違法な介入に対し、12年12月に、ニコンと当時の役員2人に損害賠償と謝罪広告掲載を求めて東京地裁に提訴。これまでに11回の口頭弁論が行われ、6月結審の予定だ。(連合通信) 

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