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2015年 6月16日

 東京大空襲は無差別殺戮
発言抄・戦争体験者の責任として

作家 早乙女勝元さん

 私は大変な貧困家庭に育ちました。当時同じく貧しさに耐えている隣人に、朝鮮人の友達がいて、心の触れ合いがあったと思います。70年前の東京大空襲は無差別殺戮(りく)ですが、私たちは貧困と戦争と二重の抑圧を受けたといえるかもしれません。

 終戦後は、米軍基地を受け入れたこの国から朝鮮やベトナムへ爆撃機が飛んでいきました。心がうずきました。爆撃下で起きていることを知っているからです。それで民間人の戦争体験を伝えるために私は十代から文章を書き始めました。

 今は戦後70年間の中でも最大の危機だと思います。憲法9条が崖っぷちに来た。安倍政権は来年夏の参院選挙後、一気に改憲を狙っています。 「これは違うな」と思えば、まず「一声を上げること」が大切ではないでしょうか。自分で自分の意思を確認し、それを誰かに伝える。そうすればジワジワ風向きが変わっていく。必ず変わると思います。道理を欠いているのは政府ですから。

 一方で、道理だけでは人は動かないとも思います。道理に感動が必要でしょうね。心を揺さぶられるような体験を通し人は変わるのです。

 戦争の体験は聞くほうも辛いけど語らなければならない時があります。東京大空襲の体験だって、それを訴えてこなければ「なかったこと」にされかねなかった。黙っていてはダメ。認めたことになってしまうんです。戦後、軍人・軍属には総額50兆円以上の補償がされたのに一般の被害者にはビタ一文出ていません。結局この国にはまだ民主主義が根づいていない。それを民が主権者として取り戻す闘いが必要です。

 誰か一人が声をあげなければゼロです。誰かが踏み出した一歩から何事も始まる。一歩進んだあとは、二歩、三歩進むより先に隣の人と手をつなぐ。そういう共闘がこれから大切になるでしょう。(連合通信) 

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