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2015年 5月12日

 大阪の運命決める1週間
5・17住民投票

市の廃止分割の是非を問う

 大阪市をなくし5つの特別区に分割することの賛否を問う住民投票が5月17日に行われる。府・市議会の主要野党が全て反対する中、「大阪維新の会」は2011年の府・市ダブル選挙時の勢いこそないが、自民党などの過去の失政を挙げて攻勢に出る。残る1週間足らずで、大阪の運命が決まる。〈写真・大阪市をつぶすなと5000人が集会〉

▼大阪市を分割するだけ

 住民投票で問うのは、大阪市と24区をなくし、東京都のような5つの特別区に分割すること。「大阪都」の賛否が直接のテーマではない。各紙の報道が「いわゆる『都構想』」と表現するのはそのためだ。最低投票率などの制限はなく、投票総数の過半数で、大阪市の行方が決まる。

 この問題をめぐっては混乱が続いた。一昨年、制度設計を担う法定協議会の審議が暗礁に乗り上げ、竹山修身堺市長が橋下市長とたもとを分かち「都構想」入りへの反対を表明。橋下市長は翌年早々、出直し市長選挙を強行した。

 野党が「選挙に大義がない」として対立候補擁立を見送る中、再選を果たした橋下市長は、法定協議会委員を「維新」が過半数を占めるよう入れ替え、協定書の承認を取り付けた。その後、議会で否決されたが、昨年末、公明党が住民投票には賛成の姿勢に転じ、現在に至る。

 大阪市の廃止・分割に反対しているのは、政党では自民、公明、共産、民主。市内1万4000店の会員を擁す大阪市商店会総連盟、地域自治会の役割を担う大阪市地域振興会、日本商工連盟大阪地区などが反対に名を連ねる。5月6日には、財政学や行政学などの学者106人の批判的見解も発表された。

 11日発表の各紙の世論調査では、「反対」が若干上回るが、賛成派の象徴である橋下市長はメディアへの露出が多く、賛否は拮抗(きっこう)しているというべき状況だ。

▼言行不一致への不信

 反対派が指摘する主な問題点は、特別区に分割することで、市の収入8500億円のうち2200億円が大阪府に吸い上げられ、それが市政に使われるという保証がないこと。橋下市長は「(使い方は)変わらない」と述べているが、そのための制度上の担保はなく、口約束への信頼感も乏しい。

 実際、「大阪維新の会」の公約とその後の政策は一致していない。11年の大阪府・市ダブル選挙時のビラでは「敬老パスはなくしません」と言いながら、有料化を実施。「大阪市をバラバラにはしません」とも述べていた。知事だった当時、「大阪市が持っている権限、力、お金をむしりとる」と述べていたことも記憶に新しい。

 財源が失われることによる、福祉や医療、教育など暮らしへの影響を懸念するのは当然だろう。

 経済効果として誇示していた数字も変化している。維新の会の当初のパンフレットでは4000億円としていたが、その後、17年間で2600億円以上に変化。9日の演説では「バラ色になるかのように言い過ぎた。皆さんの生活に大きな変化はない」とまで述べた。

 一方、反対派は「効果は1億円に過ぎない」と批判する。これは市が試算した数字。特別区の庁舎建設など初期投資費用は680億円で、大きなマイナスになると訴える。

▼攻勢に出る、維新の会

 橋下市長、松井一郎知事の活動は精力的だ。5月9日に西成区で開いた演説会で、市長は2時間余り、熱弁を振るった。

 会場が最も静まり返ったのが、大阪府・市による過去の大型開発の失敗を指摘した場面。「二重行政の象徴」と声を強めた。

 バブル期に全国各地で計画されたゼネコンによる大型開発の失敗例だが、1200億円もの金額の大きさに聴衆は息を飲む。演説の終盤、「大阪市を今のままでいいという人は反対して下さって結構。一歩でも前に進もうという人は賛成を」と述べ、会場からは盛んな拍手を浴びていた。

 同市長は投票で否決されれば政界を引退すると表明している。市内を回る宣伝カーは「衰退する大阪を変える最後のチャンス」と賛成を促す。

 一方、市民は複雑だ。会場から出てきた女性に投票を決めたかと聞くと、「無駄遣いの話がほんまやったら許せませんね。でももう少し考えます」。飲食店店主も「大阪市民としては複雑。じっくり考えたい」と話していた。

 熱狂の一方、戸惑いも少なくない。「朝日」などの世論調査でも4人に1人が態度を明確にしていない。

▼大阪が沈んでしまう」

 反対派も運動を強める。

 5月10日には、全主要野党、労組、商店会、中小企業団体など5000人が集会・パレードを行い、「大阪市をつぶすな」と声をあげた。同日朝には、自民、民主、共産の国会議員が初めて街頭での合同演説会を開催。自民党大阪府連会長の竹本直一衆院議員は「大阪府民の一人当たりGDPは7年前全国5位だったのが今や14位。『都構想』にこのまま膨大なエネルギーを使っていたら大阪は沈んでしまう」と嘆いた。

 夜は、連合大阪などでつくる団体の集会に、保坂展人・世田谷区長が参加し、財源と権限の乏しい特別区のデメリットを強調。「そんなにいい構想ならなぜ横浜や名古屋でそういう声が出ないのか」と皮肉った。

 仮に賛成が上回れば、元の大阪市に戻ることは法律上できない。「片道切符」を買うのか、それとも考える時間を置くのか。あと6日で大阪の運命が決まる。(連合通信) 

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