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2015年 6月22日

 世界の流れに逆行する制度
マイナンバー制度

先送りでなく中止の検討を

 年金情報流出の問題を受け、利用範囲の拡大を図るマイナンバー法改正案の参院審議が当面、見送られることになった。個人情報漏えいの危険性が誰の目にも明らかになったためだが、政府は制度導入そのものを見送ろうとはしていない。同様の制度がある各国では、既に情報漏えいによる被害が起きており、そこからの教訓を踏まえれば抜本的な見直しが必要だろう。

▼海外では被害多発

 日本で来年一月から導入が予定されているマイナンバー制度は、韓国、米国と同様、一つの番号を幅広い分野で使用することが想定されている。その両国ではクレジット会社の顧客管理など民間企業による自由な利用が可能で、インターネットの普及に伴い情報流出の被害が相次いでいる。

 米国連邦取引委員会の報告によれば、米国で共通番号を悪用したなりすまし犯罪の被害者は2006年から08年の3年間で1170万人。損害額は1兆7300億円に上る。今年2月には医療保険会社へのサイバー攻撃で約8000万件の個人情報が流出した。今では州法で番号の利用を制限する地域もある。

 韓国では近年個人情報を持ち出す企業内部の犯行が多発。クレジットカードの番号も一元管理されており、昨年にはカード会社内部の犯行によって約2000万人分の個人情報が流失した。

 カナダは国民のプライバシー保護のため民間での番号利用を禁止。米国での犯罪横行を深刻に受け止めたためだ。なりすましを防ぐため、番号を記載した身分証明カードも廃止した。

 ドイツで導入されているのは、税分野のみに利用を限定した個別番号。ナチス時代にユダヤ人を番号で管理した負の遺産から国民の抵抗感が強いため、共通番号による情報の一元管理は行わず、民間での利用も全面的に禁止している。

▼利用拡大法案は廃案に

 日本で今回見送られたマイナンバー法改正案は、共通番号を預金口座と関連付けたり、医療分野に利用を広げたりしている。さらに政府は今後、個人番号カードの電子情報とパスワードを組み合わせた個人認証システムを民間で広く利用させたい考え。利用範囲の制限に向かっている世界の流れとは逆行しているのは明らかだ。

 識者や市民らでつくる「共通番号いらないネット」世話人の白石孝さんは「プライバシー保護の面からみればマイナンバーは一番やってはいけない制度。政府は成長戦略と言うが、成長どころか国を滅ぼしかねない」と批判する。利用範囲を広げる法案の廃案とともに、リスクの大きいマイナンバー制度自体の中止を検討すべきだ。(連合通信) 

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