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2015年 5月21日

 大阪の歴史的勝利
住民投票の結果受けて/神戸大学名誉教授 二宮厚美さん

さらに「橋下政治」追撃を

 大阪市の住民投票(5月17日)では、市の廃止・解体に反対する声が僅差で賛成を上回った。この結果をどう見たらいいのか、神戸大学名誉教授の二宮厚美さんにインタビューした。

 ――この結果をどう見ていますか?
 二宮 快挙とまでは言えないものの、大阪市民の歴史的な勝利だろう。
 橋下市長らの維新一派は「都構想」の実現をめざすと言っていたが、投票で問われたのは大阪市の廃止・解体計画だ。100年以上もの歴史がある市をつぶせという声を退け、存続を決めた意味は大きい。
 さらに、いわゆる橋下政治、その主義・手法について「NO」の判定を下した点は、全国的に見ても大きな価値がある。公務員叩きをはじめとして、教育への過度な競争持ちこみ、福祉などの軽視である。

▼「僅差」の意味

 ――しかし、勝利は僅差でした
 二宮 私自身の希望を含めて言うと、もっと大差をつけて勝ちたかった。橋下氏が政治の舞台に出てきてからもう8年。これほど野蛮ででたらめな政治家はいない。市民や府民は何度も苦い目に遭っている。それでもダラダラと彼らを支持する人々がかなりいる。
 投票日の出口調査でも、「中身はよく分からないけど賛成」という声が紹介されていた。これは、政治的判断においてあまりにも貧困な現象ではないか。

▼深刻化する貧困が背景

 ――なぜそんなに人気があるのでしょうか?
 二宮 大阪全体が社会的にも経済的にも貧困化していることと関係がある。貧すれば鈍するという。貧困化が政治意識を左右するのは、歴史的な教訓だ。自分たちの生活や世の中の先行きに見通しが持てず、社会や地域をどうしたいかという希望さえ分からなくなっている。その意味では、先の大戦前のドイツや日本の国民の気分に似ている。
 大阪市の場合は府下の他市に比べて、市政や行政から市民が長い間疎外されてきた。行政によって生活が良くなるという見通しが持てない状態が続いてきた。特に若者たちは生まれながら疎外状況にあり、自分たちの力で政治を正していく気分になれないのだろう。
 ここに独裁的な政治家が入り込むスキが生まれる。マスメディアを使いながら、自分ではどうしていいか分からない人々に、独裁者への依存意識を煽る。橋下氏は、このような根深い大衆的依存意識をたくみに醸成していったのである。

▼メディアの責任も

 ――メディアの責任も大きいですね
 二宮 橋下氏にしてみれば、選挙戦に持ち出すテーマはなんでもいい。本気で市政を良くしようと考えているわけではなく、いわゆる「都構想」も政治の場に居続けるためのキャッチフレーズに過ぎなかった。そういう代物をメディアがまともなものとして報道してしまった。いまだに彼を風雲児扱いする報道さえある。
 例の「従軍慰安婦に関する」という発言で、全国的には維新ブームは凋落してきた。しかし、大阪ではまた息を吹き返している。メディアなどを使って、市民に「他者に依存する意識」をつくり続けているためだろう。

▼根強い橋下待望論

 ――橋下氏はこれで政界を引退するでしょうか?
 二宮 任期満了まであと半年の間に、カムバックする可能性を断っていない。投票結果はほぼ互角であり、まだ支持率は高い。必ず待望論が出てくる。そのあたりのことも計算に入れた上での引退発言だったのではないか。会見での、あの作り笑いは彼の計算高さを物語っていると思う。

▼改憲踏線での役割

 ――安倍政権は橋下支持だったようですが?
 二宮 政府・自民党からの待望論は強い。橋下氏は安倍政権の改憲路線を後押ししてきた。政府にはこの点での期待があり、簡単に未練は断たれない。
 もう一つ、橋下氏には野党分断の役割が期待されている。安倍政権が改憲路線を進める上では、民主党を含めて野党が「反安倍」でまとまらないようにする必要がある。野党勢力を分断、かく乱しなければならない。反戦争法案で野党が結集しては困るのだ。そこに橋下氏の役割があるだろう。
 彼はそのことをよく自覚していると思う。私たちは、そうした狙いを見極め、ここで橋下維新一派を根絶やしにするべきだ。住民投票の勝利に気を緩めず、彼らを追撃する運動が必要だ。 (連合通信) 

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