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2015年 6月30日

歴史わい曲、憲法敵視
育鵬社版中学校「歴史」「公民」教科書

集団的自衛権は肯定的

▼安倍首相らの考えによく似た内容

 小中学校で使う教科書は原則4年ごとに決められます。この夏は来年度から使われる中学教科書を選ぶ年。「歴史」と「公民」で、あの「新しい歴史教科書をつくる会」の流れをくむ育鵬社版を採択させようという動きが各地で強まっています。

 その中身は読んでびっくり。安倍首相とその仲間たちの主張と瓜二つです。過去の戦争は間違っていなかったとか、人権を尊重し過ぎるのは疑問だとか…。

 特殊なイデオロギーを押し付けられる子どもや先生たちにとっては、大きな迷惑です。

▼〈太平洋戦争〉侵略ではなく自衛だった!?

 「日本は米英に宣戦布告し、この戦争を『自存自衛』の戦争と宣言したうえで、大東亜戦争と名づけました」(歴史P214)。 育鵬社版歴史教科書は、過去の戦争を侵略戦争とは認めません。あくまで日本の「自衛」のためだという記述を貫いています。

 別の箇所では、「欧米の植民地支配からアジアの国々を解放し…」と解説しています。いずれも、当時の政府や軍の主張をそのまま紹介しているのです。

 侵略戦争への反省は、日本の戦後再出発に当たっての大原則であり、世界への約束です。それを否定する意見や考え方は、国際社会で通用しない異質なイデオロギーに過ぎません。

▼〈基本的人権〉権利・自由の制限は当然!?

 「行きすぎた平等意識はかえって社会を混乱させ、個性をうばってしまう結果になることもあります」(公民P52)

 育鵬社版「公民」では、基本的人権を尊重することに否定的な書きぶりが目立ちます。あれこれと条件を付けて、制約しようという姿勢がミエミエです。

 そもそも、日本国憲法は基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」(97条)と規定。絶対的なものと定めています。事情によっては守らなくてもいいという話ではありません。

 国民が権利を主張することを嫌うのは、権力者にありがちな思考パターン。育鵬社版は時の権力者と同じ発想です。

▼〈集団的自衛権〉権利は行使すべきだって!?

 「自衛隊がより国際的な責任を果たせるよう、現在は『権利を保持するが行使できない』(内閣法制局)とされる集団的自衛権を『行使することができる』と解釈を変えるべきだという主張もあります」(公民P49)
 他国を武力で守る集団的自衛権についての記述です。権利があるなら行使すればいいし、それは国際的な責任でもあるという主張を紹介しています。
 でも、これって安倍政権の主張の丸写しです。多くの憲法学者が否定し、自民党が推薦した参考人にさえ「違憲」と言われたもの。世の中に通用しない憲法論を子どもたちに教えてもいいのでしょうか。

▼〈男女平等〉風習や伝統の否定はダメ!?

 「男女のちがいというものを否定的にとらえることなく、男らしさ・女らしさを大切にしながらそれぞれの個性をみがきあげていくことが重要」(公民P54)

 男女間での不合理な差別や偏見があってはならないといいながら、「社会の風習や古くからある伝統」「性別を尊重しようとする個人の生き方」を否定してはいけないとも言います。

 一体、何が言いたいのでしょうか。

 実は、「女らしさ」を肯定しているところがミソ。「だから女はだめなんだ」「女のくせに生意気だ」といった類の認識は、必ずしも間違いではないし、時代遅れでもないと言いたいのではないでしょうか。 (連合通信) 

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