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2015年 9月24日

暴走止まらず戦争法が成立
相次ぐ抗議の声

安倍やめろの声大きく

 安保関連法案(戦争法案)は9月19日の未明、参議院本会議で可決・成立した。国会の外では多くの市民が「憲法違反の法案強行は許さない」など抗議の声を上げ続けた。

▲戦後70年目の暴挙

 戦争法案は、武力で他国を守る集団的自衛権などの行使を可能にするもの。日本が攻撃されていない状態で自衛隊を戦争に参加させ、武器使用もできることになる。それらに歯止めはなく、政府の判断次第という危うい法律だ。憲法違反なのは言うまでもない。

 都内の専門学校に通う学生(19)は、「今年は戦後70年。過去の戦争の歴史を顧みず、海外派兵できることを強引に決める政府に憤りを覚えます。戦争を生き抜いたおじいさん、おばあさんの世代は今どう感じているのでしょうか」と、安倍政権への疑問を語った。 夫婦でデモに来たという50代の女性は、異論を封殺してきた安倍政権に対し「あらゆる点で姑息、独裁政治なのではないか」と批判した。一方で、SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)の若者たちが行っている行動について、「本当にありがたい」と述べた。

▲9条こそ日本の誇り

 参院本会議での採決を数時間後に控えた18日夜、「安保法制につき最高裁判所へ違憲立法審査権を求めましょう!」と書かれた自作のビラを配る女性(30代)がいた。違憲の法律を最高裁に申し立てる権利があることをデモ参加者に知ってほしいという。「審査には時間がかかるが、絶対に負けない」。

 国際政治が専門の20代男性は集団的自衛権に一定理解を示しつつも、今回の進め方には納得できないという。さらに、「6月の憲法学者による『違憲』発言以降、若い世代の空気が変わった。この動きを一過性にしないことが大事。メディアもしっかり政権を監視してほしい」と述べた。

 2歳の子どもを抱いて参加した女性(39)は参院特別委員会での「強行採決」について「これが民主主義なのかとがくぜんとした。憲法9条こそ日本の誇りなのに、この先何を誇りにしていくのでしょうか」と話していた。

 19歳の女子大学生はステージの裏でSEALDs司会の反対行動を静かに見詰めていた。デモは初めて。インターネットで行動を知った。「日本がきな臭い雰囲気になってきている。こんなにたくさんの人が反対しているのに採決を強行するのはおかしい」。

採決直前の国会に4万人超

 翌日深夜に安保法案の採決が強行された9月18日の夕方、国会正門前には続々と人々が集まって来た。ライブ会場のような熱気に、「安倍はやめろ」のコールが響きわたる。法律は数の横暴で成立させられたが、悲壮感はない。
 労組や市民団体でつくる総がかり行動実行委員会から、SEALDsの学生に進行のバトンが移ると、「戦争反対「憲法守れ」
「集団的自衛権はいらない」などさまざまな主張がラップ調でコールされ、参加者が声を合わせる。中でもひときわ声のトーンが高まるのが「安倍はやめろ」のコールだ。特に女性の声が響きわたる。
 国の安全保障のあり方を大転換する法案なのに、政府答弁はうそ、はぐらかし、矛盾にあふれ、首相は品のないヤジを何度も発した。人々の怒りは、独善的で聞く耳を持たない政権そのものに向けられている。
 野党も抵抗を続けた。90年代のPKO国会以降、牛歩などの少数野党の抵抗戦術は不人気だが、「皆さんの声が国会内に聞こえる」と議員の背を押した。とかく独りよがりと言われがちなデモが、現実を動かす力となった。
 毎夜のデモは、国の行く末に危惧を覚える人々の受け皿にもなった。18日は事前の新聞広告もないのに、参加者は4万人を超えた。続々集まる人々で、確認作業は主催者もお手上げだ。
 野党議員の一人は、強行採決を前提にこう激励した。「ワイマール憲法下のドイツで(ファシズム体制を敷く)授権法が成立した時、当時のドイツ国会はナチス親衛隊に囲まれ、同法に反対した議員は生きて国会を出られるかという状況だった。だが、今の日本は違う。こうして皆さんが国会を包囲し、政府与党を追いつめている」

壊れたものと生まれつつあるもの

 数々の赤信号を無視して、安倍政権は最後まで暴走を続けた。安保関連法案(戦争法案)の国会審議だ。国会内では憲法を大事に考えて政治を行うルールが壊れた。一方、国会の外では民主主義を取り戻そうという新たな息吹が生まれつつある。

▲お任せ民主主義と決別

 政府は、強行採決をしてもどうせ国民は諦めるし、選挙になっても与党が勝てると踏んでいるはずだ。
 だが、私たちは諦められるだろうか。諦めていいのだろうか。その問い掛けは学生グループSEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)から強烈に発せられた。「民主主義ってなんだ」「これだ」のコールは象徴的だ。国民こそが主権者であることを示し、声を上げ、立ち上がる姿を見せてくれた。民主主義はここにあるという主張は、多くの市民に共感されていった。
 国会内で民主主義が壊れたのなら、つくり直せばいい。国会の外からそれを再生する作業はいま始まったばかりだ。とても諦めていられる段階ではない。違憲の法律を廃止すること、それができる国会をつくれるかどうかが、今後の課題となる。
 2011年の東京電力福島第一原発で事故が起きて以来、誰かにお任せの政治ではいけないという空気は徐々に強まっていた。それが、戦争法案をめぐる国会審議と反対運動を通じて、よりはっきりしてきたのではないか。この流れはもう止まらない。
 法案に反対した野党の側も問われている。法律廃止と改憲阻止の国会勢力をどうつくるか。国会外の新たな息吹を踏まえた行動と戦略が求められる。

希望は市民の側にある/学識者らが発言

 安保関連法案(戦争法案)が最大のヤマ場を迎えた9月16日以降、国会前には立憲デモクラシーの会メンバーの大学教授のほか、俳優らも駆け付けてスピーチ。全国で抗議の声を上げ続けている市民たちへの連帯を表明した。発言の一部を紹介する(文責・編集部)

▲諦めてはいけない早稲田大学教授 長谷部恭男さん(憲法)

 この法案は違憲というだけでなく、必要性も合理性もない。ホルムズ海峡に機雷をまく必要がないことを首相も認めた。あるいは、この法案が成立すれば、北朝鮮はミサイル発射をやめるのか、中国の南方進出は止まるのか。そんなことはない。
 仮に法案が可決されても諦めてはいけない。今日のこの集会が明日への希望だ。多くの市民が自分自身の判断でここへ来て抗議の声を上げている。これこそ憲法の精神が社会に根付いてきたことを示している。明日に向けて運動を続けよう。

▲与党議員落とす運動を国際基督教大学特任教授 千葉眞さん(政治学)

 国民が納得できない法案を通すなど、平和主義と民主主義を否定する暴挙だ。憲法43条1項によれば、国会議員は政党や選挙区の代表である前に、全国民の代表だ。議員の皆さん、これだけ多くの人々が法案に問題ありと言っている。熟慮が必要ではないか。
 そうでなければ、議会制民主主義が崩壊する恐れがある。多数者による専制になってしまう。
 国会周辺の抗議の声は今後も続くだろう。誤った政治にストップをかけるため、次の選挙では与党議員を落選させる運動が必要だ。

▲首相こそ理解不足だ一橋大学教授 阪口正二郎さん(憲法)

 安倍首相は、法案への国民の理解が進んでいないと言うが、では自民党の理解は進んだのか。国民の理解は進んでいると思う。理解していないのは安倍さんだけだ。
 法案が可決されたとしても、運動は終わらない。60年安保のとき、岸首相は自衛隊に治安出動を命じようとしたが、当時の赤城長官は断った。(戦前のような事態を繰り返さないという)国民の思いが政府を拘束したのだ。この思い、決意をしっかり守っていこう。
 戦争法も法律の一つ。国会を変えれば、法律は変えることができる。われわれの思いが強ければこの流れを止められる。

▲立憲主義を取り戻そう学習院大学教授 青井未帆さん(憲法)

 これほど国民の反対があるのに、なぜ政権は立ち止まらないのか。これは立ち止まれないのではないか。自衛隊と米軍の一体化はずっと前から進められている。政治にはもはやこの流れを止める力がないのかもしれない。
 そうであれば、私たち自身が止めなければならない。立憲主義をまともな方向へ戻していこう。

▲改憲論への対処も必要東京大学教授 石田英敬さん(哲学)

 今、国際政治学者の一部では、国際社会の現実に対処するためなら憲法に合わない法律でもいいんだという議論が行われている。今回の法案を違憲だと知ったうえで、議論をその方向へ引っ張ろうとしている。
 違憲状態をつくり出したうえで、憲法の方をなし崩し的に現実に合わせるような世論をつくっていくと思う。これにどう対処するかを考えるべきだ。

▲アベ政治を忘れるな早稲田大学教授 中島徹さん(憲法)

 国会がどうなろうと、昨年7月(集団的自衛権行使容認の閣議決定)からのこの国の政治を忘れないことが大切だ。
 「アベノミクス」によって格差は拡大し、子どもの世界にも貧困が広がっている。お金持ちたちは、自分の息子を戦争に送りたくはないだろうから、確かに一律の徴兵制は考えにくい。だから経済的徴兵制に向かうことを考えておくべきだろう。
 諦めてはいけない。来年の参議院議員選挙でも、「安倍政治」を忘れずに覚えておこう。

▲国民は憲法9条を理解前学術会議議長 広渡清吾さん

 法案に反対する運動は広がり、憲法9条への国民の理解は深まったと思う。憲法9条を実現していくことは、不戦の約束を果たすことであり、そこに希望はある。盛り上がった運動はさらに続くと信じている。

▲与党は国会を愚ろう立教大学特任教授 西谷修さん(思想史)

 国会審議を通じ、議会が空洞化してしまっていることが分かった。これでいいのかと訴えるために、私たちはここに来ている。この法案に賛成している議員たちに言いたい。自ら国会を愚ろうしていいのかと。
 民主主義とはなにかを、私たちはここに来て示し続けなければならない。政治の無法状態は、社会生活の規範さえぶち壊すもの。だから、これからもここに来なければならない。

▲新しい政治文化に注目/法政大学教授 山口二郎さん(政治学)

 「デモになんの意味があるのか」という人たちがいる。だが、憲法には「不断の努力」が必要と書いてあるではないか。誰かに任せ切りにしないことこそ「不断の努力」だろう。
 国会審議がこれほどぶざまで無内容だったことはかつてない。討論の体をなしていないのだ。そんな中で若者たちは新しい政治文化をつくろうとしている。
 国会議員たちは思考停止状態なのではないか。与党議員たちは、米国に亡命したドイツ人哲学者のハンナ・アーレントがナチスのアイヒマンを評した「凡庸な悪」に加担している。目を覚ませ、自分の頭で考えろと言いたい。さもなければ、あなたたちの将来はないと告げよう。

▲もうすぐ夜は明ける神戸女学院大学名誉教授 内田樹さん(哲学)

 政治もメディアもとことん劣化している。夜明け前の闇が一番深いというように、もうすぐ夜が明けると信じている。
 かつて(ミュージシャンの)故大滝詠一さんが「新しいもの」は「思いがけないところからやってくる」と語ったことがある。6月に選挙権の年齢を引き下げたとき、自民党は若者を簡単に取り込めると思っていたのだろう。今では若者たちが国会を包囲し、「野党頑張れ」というコールを続けている。
 法案を採択してもこの闘いに終わりはない。賛成した議員を次の選挙で全員落とす。この運動を徹底的に行っていこう。

▲米国の過ち指摘すべき/俳優 石田純一さん

 まだモノを言える国、まだまだ救いがある。政治に無関心な人でも立ち上がっている。
 「攻められたらどうする」とツイッターなどで言われるが、個別的自衛権で対応すればいいではないか。なんでわざわざ中近東に行って米軍を助ける必要があるのか。そんなに米国の機嫌を取りたいのか。米国は友達。でも間違っていることは友達だからこそきちんと言わなければならない。
 戦争は文化ではない。日本は世界に誇るべき平和国家。戦後70年を、80年、100年と続けていこうではないか。

▲メディアの人に激励を作家 室井佑月さん

 勝つか負けるかではなくて絶対に勝たなければならない闘いだ。主権を私たちの手に取り戻さなければならない。私はもう自民党の暴走には驚かないことにした。次の参院選挙まで続けることが大事だ。〈連合通信〉 

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