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2015年 4月 9日

サービス生産性革命
経済ニュースの裏側/(17)

問題点を掘り下げることこそ報道の役割

 3月2日、安倍首相は日本生産性本部の60周年パーティーであいさつし、「日本のサービス業の生産性は、製造業に比べても外国に比べても低く、産業としてのポテンシャルを発揮しきれていない」とし、「今こそ、『サービス生産性革命』を起こす時」と語った。

 日経新聞はその前打ち記事で、「政府はサービス産業の生産性を高めるため、小売りや医療、宿泊など主要業種ごとに新たな経営指標を設定する。IT(情報技術)やロボットの活用などで、生産性向上が遅れているサービス産業に効率化を促す」と報じた。

 同じ首相あいさつを取り上げた共同通信は、「政権は新たな指標を設けて経営の効率性を高めようとしているが、企業の労務管理体制が不十分なまま進めればブラック化を助長しかねない」とした。重要な指摘である。単に横書きのリリースを縦書きの記事に直すのではなく、意味や問題点を掘り下げることこそ報道の役割だからだ。

 さらに考えるべきことがある。サービス業の生産性については、実は統計が未整備だ。サービス業に属する企業ごとに生産性を見ると、その水準は製造業に比べて決して低いとはいえないと、経済産業研究所・森川正之理事は説いている(同研究所ホームページ「サービス産業の生産性は本当に低いのか?」)。

 「サービスの質」が生産性の数値に必ずしも反映されていない、という問題もある。付加価値(ないし売上)を労働時間(ないし人件費)で割ったものを生産性とする場合、同じ種類のサービスを少ない人手で回しながら、利用者から高い料金を取れば、数字上「生産性」は上がる。

 「日米サービス品質比較」を見ると、「地下鉄」「航空旅客機」「コンビニ」「郵便」「ファミレス」などほとんどの分野で、米国人も日本人も「日本の品質が高い」と回答している(内閣府「サービス産業の生産性」2014年4月)。

 考えてみれば、サービス業の大半は、「ここで使える」ことに意味がある地域密着産業だ。グローバル化する製造業とは前提が違う。

 産業特性を無視した「合理化」は、かえって不合理な結果を招く。性急な生産性アップが品質を低下させ、顧客に見放される例はめずらしくもない。国単位でそんな失敗に突き進まぬよう目を光らせることが報道の仕事ではないか。(連合通信) 

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