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2015年 5月25日

 レポート/命の格差は見過ごせない・上
山梨を訪ねて

後を絶たない手遅れ死亡例

 貧困に陥ったため治療が受けられず亡くなってしまう人が後を絶たない。民医連の調査によると、2014年に経済的な理由による受診の手遅れで死亡した人は分かっているだけで56人。山梨県内でも5人が死亡しているという。手遅れに至った背景には何があったのか。患者のケアに携わった医療ソーシャルワーカーを訪ねた。

▼こうなった自分が悪い

「自分が悪いのだから、病気が悪くなっても仕方がない。診療を受けるのは申し訳ない」

 不整脈を患っていた60代の男性(事例5)は、そう言って自ら治療を中断した。困窮から保険料が払えず、無保険状態だった。派遣先から解雇され、貯金を切り崩しながら生活を続けたものの、その後、路上での生活を余儀なくされていた。山梨県内の病院で無料低額診療事業(低所得者などに医療機関が無料または低額な料金で診療する事業)を受けたが、「保険料を払えない自分が悪いから」と、治療には消極的になっていた。最後は、橋の下で亡くなっているところを発見された。

 この男性を含め、山梨県の5つの事例は不安定な就労状態、不況による借金、低年金など、いずれも社会的な要因で困窮に陥ってしまった人ばかり。うち4人は国保料滞納などで無保険状態だった。

▼行政窓口も「壁」に

 ソーシャルワーカーの須田かおりさんは「患者さんの間で聞かれるのは『自己責任だから』、という自責の声」と話す。やむを得ない事情で貧困に陥っても「保険料を滞納しているから」と、引け目を強く感じてしまい、病院の受診や生活保護の申請をためらってしまうという。患者を治療から遠ざける要因として、過剰な生活保護バッシングも挙げられた。結果として治療の抑制が起こり、病状が悪化する悪循環が生じているのである。

 すい臓がんで亡くなった女性(事例(2))は、負担限度額認定証(大きな病気などで医療費が高額になった場合、窓口負担を軽減できる認定証)の交付を行政に要請したが、保険料滞納を理由に拒まれた。

 行政窓口に同行することがあるというソーシャルワーカーの中嶋はるかさんは、「行政窓口では保険料を払っていなければ医療を受ける権利は保障されない、と言う姿勢を感じる」と語る。保険料未納者に対しては、「払えなければ去ってもらう」といった対応が常態化している。 そんな患者にとっては、行政窓口に相談に行くこと自体が大きな負担になる。「困窮は自己責任」と思わせ、治療を断念させている実態があった。

▼本物の社会保障を

 同じくソーシャルワーカーの坡場彩子さんは、 「義務を果たさなければ援助が得られないというのなら、それは社会保障ではない」と指摘し、こう語った。

「経済的に苦しい状況でも、人は健康に生きる権利がある。『いま自分は苦しい』と声に出し、助けを求めてもいいのだと知ってほしい」 (連合通信) 

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