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2015年12月15日

まやかしだらけの軽減税率
庶民の生活防衛に効果なし

経費は上乗せ

 政府と与党がすったもんだの揚げ句、消費税に軽減税率を適用する場合の中身をまとめました。生鮮品に加え、加工食品も軽減の対象にするといいます。しかし、庶民には負担軽減にならず、消費税に特有の逆進性を緩和することにもなりません。選挙目当てのまやかし政策だといえます。

 負担軽減は期待できず

 消費税が予定通り2017年4月に10%に引き上げられたとします。その際、食品にだけ8%の税率を適用するのが、与党の軽減税率の考え方です。

 実際に食品の値段は据え置かれるのでしょうか。

 水のペットボトルを例に考えてみましょう(図)。現在は本体価格100円に8%の消費税がかけられていると仮定します。軽減税率の対象となる「水」には8%が適用されるものの、その他の経費・材料代(運送代、ボトルやキャップのコスト)には10%がかかります。すると税額は9・8円。端数を丸めて売ろうとすれば110円となり、今より2円の値上げです。

 軽減税率を導入しない場合はどうでしょうか。計算してみると、売り値は結局110円になります。軽減税率を適用しても、負担軽減は期待できません。

▲「ばば」の押し付けに

 軽減税率はさらに問題をはらんでいます。

 水のペットボトルのケースでは、9・8円の消費税がかかることを確認しました。しかし、消費者からすると、「なぜ食品なのに安くならないのか」と言われるのは必至。販売店はやむなく108円で売ることにします。この差額(1・8円)は販売店の持ち出しになるわけです。

 一方、販売店が大手企業で力関係が強い場合は、そうなるとは限りません。

 この1・8円分を運送業者に付け回しすることもできます。どちらが負担するかは力関係で決まります。ばば抜きの「ばば」を押し付け合う構図です。

 結局、弱い立場の者が割を食う仕組みなのです。

 逆進性緩和も望み薄/「選挙目当ての愚策」

 軽減税率は消費税の逆進性緩和にも役立ちません。逆進性とは、低所得層ほど負担が重くなる現象のこと。生活必需品などに回す支出割合は、収入の多い人も少ない人も大きくは違いません。そこにかかっている消費税額も同様。すると、高所得の人ほど収入に占める消費税の負担割合は低く、低所得層は重くなります。

 この逆進性を緩和するというのも、軽減税率導入の理由の一つです。学識者らでつくる「民間税調」の三木義一・青山学院大学教授はこう指摘します。

「私たちの試算でも明らかなように、軽減税率では逆進性緩和はできない。選挙目当ての愚策であり、こんなものはやめるべきだ」 三木教授が示した試算を見てみましょう(グラフ)。総務省の家計調査年報や産業連関表を用いて、行ったものです。

 3本線の一番下が現在の家計負担率です。収入が高くなるほど負担率が下がっています。逆進性です。その上が、食品だけを8%にしたケース。一番上が軽減税率を入れずに全て10%税率にしたケースです。

 確かに、軽減税率を導入すると(食品の値段が下がると仮定して)、導入しないケースよりは若干負担が減ります。ただし、折れ線グラフが右肩下がりになるという逆進性の特徴は全く変わっていません。

 これでは何のために軽減税率を導入するのか、意味不明です。〈連合通信〉

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