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2015年10月08日

安保法制の「立法事実」
経済ニュースの裏側

目立った「米側の要請」隠した報道

 その法律はなぜ必要か。法律の必要性や正当性を裏付ける客観的な事実を「立法事実」という。安保法制(戦争法案)をめぐる国会論議では、政府が説明した見せかけの立法事実が、音を立てて崩れ落ちた。

 石油タンカーが通るホルムズ海峡をイランが機雷で封鎖したら、集団的自衛権を行使して機雷を取り除き、わが国の存立を守らなければならない。ホルムズ海峡封鎖は重要な「立法事実」だったはずだが、可決強行の5日前、「ホルムズ海峡での機雷封鎖は、発生を想定していない」(参院安保特別委での答弁)と首相自ら全否定した。

 ここまでは広く報じられ、反対世論も広がった。だが、それならなぜ、政府は成立に固執したのか。深層に迫る報道は、いまだに少ない。

 すぐれた例外の一つが、『中日新聞』9月22日付朝刊の1面を飾った「これからどうなる安保法(1)」。

 米政府のアーミテージ元国務副長官、ナイ国防次官補らが2012年にまとめた対日提言「アーミテージ・ナイ報告書」の方向性が「ほぼ(今回成立した)安保法に網羅され」た、と報じた。

 米軍への弾薬提供について中谷元防衛大臣は「日米協議の中でニーズが出てきた」と認めたが、ことは弾薬にとどまらない。安保法制の立法事実は、日本の安全ではなく「米側の要請」だったのである。

 事実、米国の外交政策研究誌「フォーリン・ポリシー」は安保法制の衆議院通過を受け、「アメリカの防衛関係業者にとっては非常に良いニュース」と喜びを隠さなかった。

 軍部と防衛関係業者が結託した「軍産複合体」がある。ナオミ・クラインは名著『ショック・ドクトリン』で、「ブッシュ政権においては、戦争成金が政府に接近しようとしたばかりではなく、政府そのものが戦争成金で構成されていた」とし、綿密な現場取材に基づく事例をあげ、「彼らは、自ら惨事を引き起こすことに加担しつつ、同時にそこから利益を得ていた」と喝破している。

 こうした国に、資金、弾薬ばかりか若者の血まで差し出し戦争成金たちの「次の荒稼ぎ」を支援するのが、安保法制の重要な一面ではないか。

 権力監視はいつだって報道の使命である。戦争法が成立してしまった今、経済報道もまた、戦争とその利権に目を光らせなければならない。〈連合通信〉 

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