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これは最終合意ではない!? |
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ペルーなどは納得せず? |
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TPP(環太平洋経済連携協定)が大筋合意されたと言われています。実際はどうだったのか、今後どうなるのかをまとめました。 ▲本当に合意されたの? 「大筋合意」と言っても、「大筋」が何を意味するのかは一切不明なままだ。 ▲なぞの「実質8年」 現地で会合を監視していたアジア太平洋資料センター(PARC)の内田聖子事務局長は、「最終合意したわけではありません。この時点で合意内容だといえる協定案は存在していないのです。主要国が主要な問題で合意したことになっているだけ。具体的な問題はいまだに交渉が続けられています」と指摘する。 例えば、今回の会合で大きな争点になった新薬のデータ保護(独占販売)期間。大手製薬会社の意向を背景にした米国は12年を主張し、オーストラリアやチリ、ペルーなどは5年を要求。会合では「実質8年」で折り合ったという。 だが、5日に開かれた閣僚らの記者会見で「なぜ折り合えたのか」との質問に対し、ペルーははぐらかして答えず。チリは「とても喜んでいる。国内法を改正する必要はなくなった」と述べ、5年が維持されたとの認識を表明。マレーシアの大臣は会合の途中で帰国し、その後に「私は国益を主張した。最終協定案ができあがれば、それを提出するので集団的に検討し判断してほしい」とコメント。合意したかどうかには触れていない。 彼らが「実質8年」に納得した形跡がないのだ。 ▲米国は空手形発行 とりあえず合意したことにしておこう、というのが内実なのではないか。 協定案ができても、2年以内に批准できない国は除外できることが決まったとされる。ペルーやマレーシアが国内の手続きでもめ続けた場合は、切り捨てる意向なのだ。だから、主要国さえ合意すればよくて、あとはどうにでもなるという運営だったと思われる。 さらに怪しいのは米国である。「実質8年」案は国内に持ち帰ればとうてい認められないと分かっていたはずだ。それをあえて提案したのは、「大筋合意できた」と発表するため。ただ、これは空手形を発行したに等しく、共和党が多数の米国議会が猛反対するのは確実で、あまりにも不誠実な態度だといえる。 ■国益は守られたのか/譲歩重ねた農産物輸入 「牛肉など輸入品が安くなる」「経済成長に期待」――といった見出しがズラリと並んだ。TPP(環太平洋経済連携協定)交渉の「大筋合意」を受けた主要メディアの報道だ。しかし、そんなに喜んでいて大丈夫なのだろうか。 交渉が最終合意に達していないことを前提で、心配な点を挙げてみる。 まずはコメや牛肉など主要5項目の農産物。聖域だったはずだが、大幅に譲歩してしまった。コメや小麦、乳製品は特別枠を設けて輸入を拡大。牛肉や豚肉は実質的に関税を大幅に引き下げる内容だ。安倍首相は「関税撤廃の例外を多く確保できた」と胸を張った。特別輸入枠のことだとしても、これは「関税撤廃の抜け道」であり、「例外確保」と自慢できるようなものではない。 輸入増を抑えるために関税があるわけで、無税の輸入枠を拡大すれば、国内への被害は同じ。国会決議違反は明らかだ。5項目以外の果実や水産物などを含めれば834品目中400品目の関税撤廃にも合意した。日本の農業への被害は甚大となる。 ▲自給率低下は危険 輸入を増やすなら、考えておくべきことがある。 第一は安全性の問題である。農薬や添加物、遺伝子組み換えなどの規制がどうなるのかがポイント。政府は「大丈夫」と言うが、最終合意文書が全て明らかにされるまで安心はできない。例外規定や抜け道規定の有無、用語や条文解釈の精査が必要だ。 第二は、今でも低い食料自給率をさらに引き下げることの危うさである。地球規模で気候が変動している昨今、農作物の出来を左右する干ばつや大水害は珍しくなくなった。そんな時に自給率を下げてどうするのか。 さらに、地域経済への打撃である。被害は農家だけにとどまらない。関連する食品加工や物流などの産業が痛手を被るのは必至で、雇用への影響も避けられない。輸入増に伴い、これまで地域に回っていたお金は外国に流れていくことにもなる。地域経済は一層疲弊するだろう。 ▲自動車は攻めきれず 日本が攻めるはずだった自動車分野はどうか。 唯一の「成果」は、米国への部品輸出の8割で米国の関税(2・5%)を即時撤廃するという約束だ。とはいえ、「原産地ルール」は今よりもきつくなる。非TPP国の中国やタイで部品を調達している割合が高い場合、この関税撤廃は適用されない。 気になるのは、自動車分野で日本の「非関税障壁」対策や「紛争解決手続き」が盛り込まれた点だ。米国車をもっと売るために、「低燃費」や「優遇税制」など日本独自の規制、政策を見直す仕組みづくりともいえる。内政干渉になる恐れがあり、最終合意の内容を早急に開示すべきだ。 ▲関税以外にも注目を 関税問題の陰に隠れて注目されていない分野がまだまだある。 外国企業に対して公共事業への参加枠を広げる規定(政府調達)や、外国企業が進出先でもうけ損なった場合に相手国政府などを訴える仕組み(ISD条項)、さらに公共サービスへの参入についても、全貌は不明である。 特にISD条項に関して設けられたという乱用防止措置がどれくらい歯止めになるのか、条文の細部を精査する必要がある。 ■「外国に雇用が奪われる」/米労組がTPP合意を批判 TPP(環太平洋経済連携協定)が「大筋合意」されたことについて、米国の労働組合から批判が相次いでいる。特に、製造業で雇用が奪われて産業が衰退するとの指摘が多い。 ▲オバマに不信感 労組ナショナルセンターAFL―CIO(米国労働総同盟産別会議)のリチャード・トラムカ会長は10月8日付の新聞寄稿でこう指摘している。 「オバマ大統領は労働者には強力な保護措置が設けられたと言っているが、雇用が保障されると確信できるものは何もない」 具体的には、4点を挙げている。第一は、TPPに「為替操作禁止」の条項が入っていないこと。意図的に通貨レートを下げる国に米国の雇用が奪われており、TPPがそれに拍車をかけることを懸念している。 第二は、ISD条項の存在。巨大企業は日本やオーストラリアに進出して相手国を訴え、規制などを変えさせる手段を手に入れた。米国内では操業せず、海外進出を一層進めるという。 第三は、自動車産業への打撃である。原産地ルールはNAFTA(北米自由貿易協定)より緩いものになっており、日本製といいながら実は中国製の安い製品が入ってくることを警戒している。 第四は、労働条項の実効性が担保されていないことだ。ILO(国際労働機関)の基本条約を守ると書かれていても、過去の自由貿易協定と同様、掛け声倒れになると強調している。 ▲議会は拒否すべき さらに、通信労組や製造業関係のIAM、鉄鋼労組、運輸関係のチームスターズも「合意」を批判。「雇用や地域社会を破壊する」「議会は拒否すべきだ」などと訴えている。 〈連合通信〉 |
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