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「日本にプラス」は本当か |
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書き換え可能な大筋合意文書 |
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「大筋合意」したとされるTPP(環太平洋経済連携協定)文書の公開(11月5日)を受け、日本を含めた関係国内でその分析が進んでいる。全体像はまだつかみ切れないものの、危険な中身が徐々に明らかになってきた。政府は、合意内容は日本にプラスだとか、心配はいらないと説明するが、本当だろうか。市民活動家らの分析を踏まえ、現時点での5つの疑問をまとめた。〈TPP協定文を検証しようと開かれた緊急集会。パネル 中央の山田正彦・元農水相は「闘いはこれからだ」と訴えていた(11月13日、都内で)〉 ▼日本語正文がない/一人前扱いされない悲哀 政府が発表した「概要」の97ページ(最終規定章)には、協定の正文を英語、フランス語、スペイン語とすることが書かれている。 TPP阻止国民会議の首藤信彦事務局長は「国辱協定だ」と憤る。通常、外国と取り決めをするときにはそれぞれの国の言語で「正文協定」をつくり、確認するものだという。「ある言葉や概念が何を意味するのかは、国によってずれていることがある。後日問題が起きたときのために、正文があれば主張の根拠にできる」(首藤事務局長)わけだ。正文がなければ、立場はどうしても弱くなる。 フランス語があるのに、なぜ日本語の正文がないのだろうか。仏語があるのはカナダ人の5人に1人が第一言語にしているため。そこまで気を使うなら、TPP交渉国の経済規模第2位の日本の言語があってもいいはずだが、政府は「後日全文を翻訳するので問題ない」という。 日本が一人前の国家として扱われていないことへの問題意識はゼロだ。さらに、首藤事務局長は「外務省の翻訳は微妙に意味をずらしたり、ごまかしたりするので信用できない」とも指摘している。 ▼聖域は守れたのか/TPPは強い農家にも打撃 安倍政権は農産物の関税に関して「守るべきものは守った」と胸を張る。コメなど5品目は「聖域」として守ると言っていたはずだが、日本政府は輸入の特別枠設定や関税の段階的撤廃などで合意してしまった。 TPP阻止国民会議の首藤事務局長は「聖域というのは神の領域であり、結界の中には1ミリたりとも入ってはならないもの。何割かを守ったという話ではないはず」と怒る。自民党の選挙公約や国会決議に違反しているのは明らかだ。 一方、政府は「攻めの農業」を打ち出し、外国への売り込みを図ろうとしている。それはうまくいくのだろうか。 農民運動全国連合会(農民連)は、「強い農家」にとってもTPPは歓迎できないと訴えている。静岡県浜松市で養豚業を営む男性の例を紹介。その男性は「こだわりの黒豚」は輸入品に負けない自信があるとしつつも「周りの養豚家がつぶれていけば、と畜場も廃止され、自分の経営にも影響が出てくる」と語っている。 また、高級ハチミツを生産している、ある農家も「近所のミカン畑がなくなって採蜜環境が変わるのが恐い」と訴えている。 TPPで地域の農業が衰退すれば、強い農家も共倒れしかねないのである。 ▼3年以内に見直し/「大筋合意」は暫定合意か 協定文の公表を受けて新聞各紙は、農産物関税を7年後に見直す規定があることを報じた。豚肉(10年で撤廃)やりんご(11年で撤廃)についても7年後にどうなるか分からないのである。 これとは別に、相手国から要請があった場合は「撤廃時期の繰り上げを検討する」義務もある。日本の農産物関税に対し、早期撤廃を迫る動きが今後も続くということだ。 見直し規定が入っているのは農産物関税だけではない。本文27条は、「TPP委員会をつくって3年以内に協定の見直しを検討すること」を規定。さらに、見直しを検討する場として、各分野に「作業部会」「委員会」「ワーキンググループ」を設置するという。大筋合意した協定文の内容は、今後どんどん書き換えられていく可能性があるのだ。 アジア太平洋資料センター(PARC)の内田聖子事務局長は「幅広く再協議規定が設けられているところを見ると、実際にはTPP交渉は終わっていないのではないか。日本は今後も新たな要求を突き付けられるだろう」と懸念する。 ▼自由化へ一直線/公共サービスが危ない 日本でほとんど報道されていないのが「ラチェット条項」の存在である。 ラチェットとは、回り始めた歯車が逆回転しないよう歯止めをかける装置を意味する。つまり、自由化や民営化を進めるときに後戻りさせないための措置だ。自由化や民営化が失敗したとしても、再規制や再公有化はできない。 ただし、予め例外分野を定めておけば対象からの除外は可能。日本政府も保健などの社会事業サービスや政府財産、公営競技、放送業、初等・中等教育、エネルギー産業、漁業、警備業などを列挙し、「だから大丈夫」と説明している。 PARCの内田事務局長は「逆に言えば、政府が列挙していない分野にはラチェット条項が適用されるということ。例えば水道事業はどうなるのか心配だ」と指摘する。その上でこう述べる。 「一度自由化した後に、未来の国民が、『やっぱり以前の形がいい』と判断しても、それは無理。これは民主主義と主権に関わる問題だ」 ▼並行協議のわな/米国の本音がてんこ盛り TPP協定文は抽象的な文言が目立つ。より具体的な内容は本文以外の資料を見なければならない。その典型が日米並行協議に関わる文書である。 これは、TPP交渉と同時並行で日米が話し合ってきたもの。米国が日本の「閉鎖的な市場」をこじ開けるために活用してきた。今回公表された合意文書には、この日米協議の内容も要旨で紹介されており、そこには米国側の本音が見て取れる。 例えば、食品添加物。収穫後の農産物保存のために使う「防かび剤」は現在、農薬と食品添加物の両方の基準が適用されている。それを米国基準に合わせて、農薬基準だけを適用することに。食品添加物としての表示義務はなくなるのだ。 保険分野では、日本郵政の「かんぽ生命」について、外資系保険会社よりも優遇する措置を導入しないことが決まっている。かんぽ加入者より外資を大事にする姿勢の表れだろう。 自動車分野でも多くの定めがつくられた。平行協議では、「閉鎖的」と批判される日本の自動車市場が主要なターゲットとなり、部品や装置の安全基準変更などが約束されている。〈連合通信〉 |
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