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20mSv受忍論に怒りの声 |
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被ばくか貧困かの二者択一に |
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![]() ![]() ▲平常時は1mSv基準 避難指示の解除は、放射線20ミリシーベルト(mSv)を基準にしている。それ以下なら健康に影響はないという考え方に基づく。しかし、20mSvとは、原発事故など「緊急時被ばく状況」下での防護対策として設定されているギリギリの水準。平常時における一般人の被ばく線量の限度は1mSvというのが国際的な常識だ。日本の安全衛生法では、放射線に関わる業務の場合、5・2mSv以上を「放射線管理区域」に設定して安全対策を講じている。 事故前への現状回復と国・東京電力の責任を追及している「生業(なりわい)裁判」の原告団長を務める中島孝さんは「これは?20mSv受忍論″に他ならない。今後日本のどこかで事故が起きても『20mSv以下は被害として扱わない』とされてしまうのではないか」と訴えている。 判決が出る前に「決着済み」という既成事実をつくるのも狙いだろうと、中島さん。原告たちは受忍論の理不尽さをアピールするため、意見広告運動に取り組んでいる。カンパを募り、年明けにも福島の地元紙2紙に掲載する予定である。 ▲権利獲得は自らの手で 12月5日には、「原発事故被害者の切捨てを許さない東京集会」が開かれ、200人近い人が集まった。そこでは今年10月に結成されたばかりの全国避難者の会(「避難の権利」を求める全国避難者の会)が紹介され、メンバーの長谷川克己さんは結成に至る経緯をこう語った。 「被害者が分断され、声を上げれば波風が立つ状況があってなかなか結成に至らなかったが、政府と県による切り捨て方針が明らかになる中で、立ち上がろうと決断した。私たちは捨てられてしまっていいのかと問い、権利は自らの手で勝ち取ろうと考えている」 福島県は既に自主避難者への住宅支援を打ち切ると決めた。今後、解除地域からの避難者は、新たな「自主避難者」になる。支援がないまま避難を続けるか、健康への不安を抱えたまま帰還するかを選ばなければならなくなるのだ。 集会に参加した反貧困ネットワークの宇都宮健児代表は「被災者に被ばくか貧困かの選択を強いる政策を許してはならない」と憤った。 ■帰還せずは身勝手なのか/生業裁判でのやりとりから 福島の原発事故被害者4000人が原告になっている「生業(なりわい)裁判」で、被告の国と東京電力は「20ミリシーベルト(mSv)以内なら安全」という主張を展開している。原告らはこれを「20mSv受忍論」と呼ぶ。 ▲野菜不足の方が危険? 国や東電はどういう根拠に基づいて「安全」と言っているのだろうか。比較的分かりやすいのが東電の準備書面だ。 そこでは、発がんリスクについて他の要因と比較した国立がん研究センターの研究結果を引用してこう述べている。 「年間20ミリシーベルト被ばくすると仮定した場合の健康リスクは、例えば他の発がん要因(喫煙、肥満、野菜不足等)によるリスクと比べても低い」 具体的には、喫煙は1000~2000mSvの被ばくと同等、野菜不足と受動喫煙は100~200mSvの被ばくと同等としながら、「100ミリシーベルト以下の被ばく線量域では、がん等の影響は他の要因による発がんの影響等によって隠れてしまうほど小さい」と主張。さらに「年間20ミリシーベルトを大きく下回る放射線を受けたとしても、違法に法的権利が侵害されたと評価することは困難」と結論付けた。 要するに、放射能汚染は大したことないのだから、権利がどうのこうのと四の五の言わず、早く帰還しろということだ。 ▲平穏な生活を返して これに対し、原告側は選択の余地がある喫煙や野菜不足と、原発被害者を比較するのは不適切と批判。ただし、逆に20mSv以下は危険とか、発がんリスクが高いとは主張していない点に注目したい。 放射線による発がんリスクについては、さまざまな研究・実証データがある。被告が引用するような「リスクは小さい」というものから、「13・3mSvの被ばくでがん死亡率が4%有意に増加」(財団法人放射線影響協会の2010年調査)など、低線量被ばくの危険性を示すデータまである。現在の科学的知見では、「これ以下なら安全」「これ以上なら危険」とは言えず、線量が高ければリスクは高まり、低ければ低減するということが分かっているだけだ。 原告側はこう訴える。 「われわれが問題としているのは、低線量被ばくが健康に影響を与えるか否かということそのものではない」「(そういう)医学論争をするつもりはない」 そうではなくて、健康に悪影響があるという情報やデータがあふれている中で恐怖や不安を抱かざるを得ない状況に置かれ、その結果、家族の分断や地域社会からの疎外など平穏な生活を送る権利(平穏生活権)が侵害されていることを問題にしているのである。 ▲明日は我が身かも 精神的苦痛を含む平穏生活権侵害の原告側主張に対し、国は「不安感や危惧感にとどまるものは、本件事故との相当因果関係の認められる損害として賠償の対象とはなり得ない」と言い放つ。 平穏な生活の保障を求める原告側と、低線量被ばくなら我慢すべきという国と東電。 一部の住民に犠牲を強いて、政府方針に従わなければ「身勝手」と決め付ける流れを放置していていいのだろうか。〈連合通信〉 |
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