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2015年10月30日

国際標準へ最賃引き上げを
インタビュー/三上元・静岡県湖西市長

大幅な引き上げを静岡労働局長に送付起

 10月、全国で新年度の地域別最低賃金が発効した。地域間格差は最大214円に広がった。人口の転入超過数が全国有数の愛知県と接する静岡県湖西市の三上元・市長は「最低賃金をせめて国際標準に引き上げるよう、国が強い意思を示すべき」と熱く語る。

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 今年、静岡県の地方最賃審議会が中央最賃審の目安どおり18円引き上げを答申した際、市長という使用者の立場で異議申し立てを行いました。「横並びではなく、大幅な引き上げを」と要請する文書を静岡労働局長宛てに送ったのです。

 静岡県の最賃は783円で、西隣の愛知(820円)と、東隣の神奈川(905円)に大きく水をあけられています。県東部は、

熱海(静岡)と湯河原(神奈川)とが、わずか一駅違うだけで122円時給が異なります。湖西市ならば、最賃の水準に張り付きがちなコンビニやスーパーで働こうとする人は、豊橋(愛知)で働こうということになってしまいます。

 そのため、10代、20代の人口流出が深刻です。2014年の静岡県の人口の社会減(県外への転出超過数)は全国ワースト2位。逆に、神奈川と愛知は、転入超過数が全国3位、5位です。

 また、日本の母子世帯の母親の就業率は85%と、OECD(経済協力開発機構)34カ国中断トツ一位でありながら、一人親世帯の貧困率は同ワースト1位。人を安く使えるので、時間当たり労働生産性も低いままです。

 県外への人口流出の阻止や、母子家庭の救済、労働生産性の改善のためにも、最賃の大幅引き上げが急がれます。静岡の一人あたり県民所得は、東京、愛知に次ぐ全国3位なのに、なぜ最賃は全国平均以下なのか、理解できません。

 このような意見をしたため、異議を申し立てましたが、結果は、「却下」と書かれた紙切れが一枚届けられただけでした。

▼国の決定追認するだけ

 異議申し立てに加え、公益委員に大幅引き上げを要請する手紙も送りました。

 委員の方々は学者、社会保険労務士、地方新聞社の役員、弁護士。これらの有識者の方々からは、最賃に関する意思や哲学が見えません。役所(国)が常識的な意見を言ってくれそうな人を選んでいるようです。

 現行制度では、地方は中央に従うだけです。国が強いメッセージを出す必要があります。安倍首相は「最賃引き上げ」をアピールしましたが、残念ながらポーズでしかありません。民主党政権時の政労使合意「全国平均1000円」の到達目標は、どこへ消えたのでしょうか。

 賃金の中央値(平均的労働者の賃金)に対する最賃の比率は、日本は38%。OECD(経済協力開発機構)の対象26カ国中、下から4番目という、恥ずかしい水準です。せめてOECD平均の49%程度(約1000円)まで早急に引き上げるべきと考えます。

▼世界の運動に呼応して

 私は「脱原発をめざす首長会議」の世話人も務めています。原発という関心の高いテーマとは違い、最賃の問題はまだまだ知られていません。先日の「♯雇用激変~あなたの暮らしを守るには~」と題したNHKスペシャル(10月24日)では、最賃への言及は全くなし。これが日本の有識者の現状です。

 でも、世界に目を転じれば、日本と同様に最賃が低い米国では、15ドル(1800円)に引き上げる運動が広がっています。ニューヨーク州をはじめ、いくつかの地方都市で相次いで実現しています。現行連邦最賃の2倍の水準です。

 国内では、SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)の運動に参加した若い人たちが、最賃の大幅引き上げを求めて立ち上がったと聞きます。大いにやってほしい。

 私も来年度の最賃改定に向けて、市長の立場で何ができるか、今から考えをめぐらせています。共にがんばりましょう。感謝!〈連声通信〉。

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