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「この国は大変なことになる」 |
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元専門業務派遣の女性 |
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「派遣法の衆院通過を知った時、体中の力が抜けました。6月9日の院内集会で、失職の不安と、改正反対を訴えた派遣の方々の悔しさを思うと涙が出ました」 こう話すのは、13年間働いた都内の派遣先を昨年打ち切られた50代の女性。ユニオンに加入し、派遣先の雇用責任を追及したが、派遣先に甘い法律の壁が立ちはだかり、このほどやむなく和解。わずかな解決金を派遣会社に支払わせることで決着した。 派遣先の代理人は、威圧的で悪評高い弁護士。証拠集めは難航し、個人攻撃への対応で消耗した。疲れ果て悔しくて涙が止まらなかった。この一年間の出来事を書きつづることでようやく心の整理がつき、外を出歩けるようになった。派遣先の雇用責任がより甘くなる今回の「改正」案にはむなしささえ感じる。 そんな彼女の目に、国会審議はどう映ったか。 「人間の扱いが軽すぎます。モノ扱い発言に10・1ペーパー問題、人をばかにしているとしか思えない。安倍首相や塩崎大臣は当事者のことを全然分っていないのでしょう。『30時間議論した』というが、実態の把握がされないままの議論は机上の空論でしかない。派遣元と派遣先の責任を強化するという説明も、実効性への疑念に十分答えられていませんね」 「改正」で専門26業務の区分をなくし、一律に3年の期間制限を設ける。大量の失職が生じかねないとの野党の追及に、首相はそのような懸念は「全くあたらない」と気色ばむ一方、全国の労働局に相談窓口を設置すると説明した。 女性はこの発言を「とても信用はできない」と一蹴する。彼女自身、労働局の是正指導を引き出したが、違法派遣や雇い止めには無力だった。指導文書は、申し立てた本人にさえ手渡されない。首相の説明はまやかしだと直感する。 ▼パート求人にも派遣が 失業給付は切れ、最近就職活動を始めた。独り暮らし。両親は他界し、身内は故郷に住む弟が一人。先行きを考えると不安だ。「派遣は何も残らない」。ポツリとつぶやく。13年働いても退職金はゼロ。人間関係や実績も残らない。人一倍働いた末に最後はモノ扱いされて放り出された心の傷は今も時折うずく。 次は資格を生かし、オフィス労働ではない新たな分野での仕事に期待をかける。だが、50代の就職は簡単ではない。再び、派遣での就労も選択肢に入っているか、あえて尋ねた。 「派遣には二度と近寄りたくありません。でも心配なのが、最近はパートの求人にも、請負や派遣会社が多く進出していること。この国は大変なことになってしまうのではないでしょうか」 ■派遣社員をロックアウト/商船三井/「人格否定された」と労働者 株式会社商船三井に秘書として派遣されていた女性が6月22日、会社からロックアウト(閉め出し)された。契約は7月末までだったにもかかわらず、派遣会社社員ら数人が机を取り囲み、「本日17時をもって業務は終了。今すぐ私物を取りまとめるように」と有無を言わせず強制退去を強いた。女性は「人格を否定されたように感じる。企業の勝手な都合で労働者は奴隷のように扱われている」と憤っている。 女性はこれまで20年ほど、大手企業などで秘書業務に従事してきた。昨年9月からは海運業大手の同社に「長期」の前提で派遣されていた。勤務実態は「申し分なく助かっている」と評価されながらも、賃金は秘書を始めた20代の頃より低かった。今年1月にグループ会社で派遣元の「商船三井キャリアサポート」に時給を上げてほしいと要請したところ、4月いっぱいで雇い止めと言われた。同社は東京労働局の指導により一度は雇い止めを撤回したものの、直後の5月に再び「業務は6月22日で終わり」と通告していた。 女性が加入する派遣ユニオンの関根秀一郎書記長は、「派遣労働者が賃金などで会社に何か言うと、『うるさいやつ』と見られ、契約更新を盾に切られてしまう」と指摘し、直接雇用化などで派遣社員の雇用を安定させていくことが原則だと強調している。 女性は6月12日に連合が主催した派遣法改悪反対の集会で登壇し、「ハケンも同じ職場で働く仲間です。私は泣き寝入りしません」と訴えていた。 ■賛成なのか反対なのか不明/派遣法案審議/あきれた維新議員の言動 衆議院の派遣法審議で、与党の採決強行に手を貸した維新の党。野党と共同提案していた「同一労働同一賃金推進法案」も骨抜きにしてしまった。同党の際立った特徴は、個々の議員の主張に大きな隔たりがあること。これで同じ党なのかと疑うほどだ。 他の野党とほぼ足並みがそろっていたのが井坂信彦議員。みんなの党、結いの党を経てきた人物だ。 質疑終局とされた6月12日の審議では、常用代替を防げるとの政府の説明の不十分さを追及し、塩崎厚生労働大臣をしどろもどろにさせた。さらに、「派遣労働を臨時的・一時的な業務に限定するとしながら、企業は派遣をとっかえひっかえ使い続けられる規制緩和になっている」と指摘。派遣労働者にとっては全くメリットがないと反問し、政府与党に「大変大きな怒り」を表明して、質問を終えている。 他方、与党を称え、批判の矛先を野党に向けていたのが、足立康史議員。維新結党時のメンバーで、いわゆる「大阪組」だ。秘書の残業代支払いを拒否し、ネット上で批判にさらされていたのも記憶に新しい。 5月13日の審議では4日後に住民投票を控えた「大阪都構想」を取り上げ、場違いな主張に議場を騒然とさせた。厚労省が配布し、後に撤回した「10・1ペーパー」を2月の予算委員会に提出したのは同議員。15日の審議では、これを「人生最大のミス」と同省に謝罪し、同文書の「ロジックは完璧」と持ち上げた。他の野党の追及を「揚げ足取り」「レッテル張り」と非難。改正案に賛成なのか反対なのか分からない発言を終始繰り返していた。 対極ともいえる両者の主張。有権者にとってはあまりに不可解である。まずは政党としての見解をまとめてほしいものだ。(連合通信) |
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