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戦前の供給事業に似てきた |
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遠のく直接雇用、進む常用代替 |
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▼相次ぐ規制緩和で戦前のような弊害が 参院本会議質疑では、戦前の日本で横行していた労働者供給事業(人夫出しなどの間接雇用)の問題が取り上げられた。戦後、こうした「鉄や石炭のように労働者を売買取引すること」をなくそうと奔走した、当事GHQ(連合国軍総司令部)担当官の発言が紹介された。差別や中間搾取など人権侵害の多い働かせ方が、その後の職業安定法で禁止された事実を指摘したものだ。 派遣法は制定当初こそ多くの規制がかけられていたが、相次ぐ規制緩和で戦前のような弊害が見られるようになっている。当時のGHQ担当官の分析(カギ括弧)は、今の派遣労働にもぴったりあてはまる。 ▼べらぼうなマージン率 「親分(派遣元)は人手の入用な仕事について(派遣先に)高賃金を要求していて、実際に働いている人たちにはほとんど満足には払っていない」 派遣労働の大きな問題が『ピンはね』。マージン率が5割を超えても規制はされない。衆院の委員会審議ではマージン率87%もの実例が取り上げられた。 ▼現代版たこ部屋も 「飯場(はんば)とか、たこ部屋と称するものの如きは人間として住むべきものとはいえない不潔不衛生のものである」 派遣会社がワンルームのアパートの一室に4人も5人も住まわせ、世間相場より高額な家賃を徴収していた。特にひどかったのが製造業務派遣のケース。テレビ代や布団代などで法外な請求もざら。派遣切りで多くの人がアパートを追い出され、08年の「年越し派遣村」につながった。 ▼派遣会社には富が集中 「しかもこの業者は労働者を売買して多額の富をたくわえ、政治的勢力を有し立派な顔役として幅を効かしているのである」 派遣業界は、大手パソナグループの竹中平蔵会長を政府の諮問会議に送り込み、ほぼ業界の要望に沿った「改正」法案を提案させることに成功。派遣業界の「政治力」の大きさは労働界でも有名な話だ。 ▼労組つくれば報復 「外部から労働運動でもしようものなら、それこそ生命の危険に晒(さら)される」 現在は殺されることこそないものの、組合をつくったために派遣契約を打ち切られるのは今も日常茶飯事だ。退職金も一時金もなく、貯えの乏しい派遣労働者にとって、雇用の打ち切りは生存の危機につながりかねない。 ○ 今回の「改正」案は、こうした問題を何も解決しない。「戦後レジームの打破」を掲げる安倍首相にとっては、戦後確立された直接雇用原則も打破の対象なのかもしれない。 ▼常用代替防止に対する歯止めは!? 労働者派遣法「改正」案の参院本会議の審議では、常用代替防止に対する歯止めがあるのかという問題が取り上げられました。衆院でも繰り返し指摘された課題です。改めて振り返ってみます。 業務単位ごとに規制する現行法の仕組みでは、専門業務ではない場合、業務単位で3年(原則1年)までしか派遣労働者を受け入れることができません。それ以上働き手が必要ならば、勤続3年の人はもちろん、派遣されてわずか1カ月の人にも、その時点で直接雇用を申し込まなければならないという制度なのです(図)。 派遣労働への置き換えを広げないための歯止めであり、直接雇用を促す仕組みでもありました。この直接雇用申し込み義務規定は今回の「改正」で削除されます。 一方、「改正」案では、働き手を取り替えさえすれば、ほぼ永続的に派遣労働を利用できます。過半数労組の意見聴取が義務付けられていますが、「同意」は必要なく、歯止めにはなりません。 代わりに、派遣先への直接雇用の依頼を派遣会社に一部義務付けています。これもお願いすることを義務付けただけ。派遣先の都合や「善意」に期待するような制度では実効性はありません。 ▼半数超が「直接雇用」 厚生労働省が2012年に派遣先企業に行った調査によると、期間制限を超えた際の対応について、53・5%が「直接雇用した」と答えていました。「派遣を終了し、自社の従業員で対応した」は19・6%(複数回答)。現行制度がある程度は機能していると見て取れます。 他方、「継続して派遣を受け入れた」は13・5%、「派遣を終了し外部委託した」は7・6%もありました。「継続」は明らかな違反、「委託」も違法な偽装請負となるおそれがあります。問題は、こうした違法行為に対し国がきちんと是正を指導していないこと。この点の検証と改善こそ必要です。 ■「なぜ3年か、なぜ急ぐのか」/専門業務派遣の50代女性 「なぜ3年で(派遣契約を)ひと区切りつけるのだろう。そんなに急ぐべきことなのか」 コールセンターの専門業務派遣(テレマーケティング)で少し前まで働き、いま就職活動中の女性(53)は法改正の動きを半ば冷めた目で見ている。賛成ではないが、かと言って声高に反対を訴えることにも踏み切れないでいる。 ▼「生きてて地獄」 改正案は派遣契約の上限を一律3年とする。法案が成立すれば、期間制限のない専門業務派遣で働く人々の雇用が揺らぐ。政府は正社員化やキャリアアップの機会になると説明するが、どう見ているのか。 「若いうちはいくらでも仕事が見つかるでしょう。でも50の声を聞くとなかなか見つからなくなります。年齢が高くなるほどさげすまれる。条件の悪い仕事しか紹介されなくなったり、ダブル、トリプル派遣もしなければならなくなってきます」 条件悪化でまずよくあるのが、比較的遠距離の派遣先の紹介。派遣の多くは交通費が全額は出ない。自己負担額が一日1000円を越えると、1時間分の時給が吹き飛んでしまう。 次が「獲得系」と言われる仕事。自らアポイントを取り、商品やサービスの契約を獲得する。成約には成功報酬が付くが、一日働いて一本も取れないと厳しいチェックが入る。「一度経験しましたが、ストレスで体がおかしくなりました」と笑う。 シングルマザーの友人にはダブル派遣で働く人も。自分もそろそろ始めなければならないか。最近そう考えるようになった。 「年を取るごとに時給は下がります。一所懸命働いているのに、ぜいたくしているわけではないのに、手元には何も残らない。生きてて地獄、かごの中のハムスターです。同じ所をぐるぐる回っているだけ。考えてもどうにもならない。ただ働き続けなければなりません。そう考えると、ダブル派遣もやむをえないかなと思います」 ▼雇用を切らず直雇用を 最近気になるのが、「釣り募集」の派遣求人。働き手を集めるための誇大広告と疑われる。インターネットで好条件の仕事を募集しているが、応募するといつも「定員に達した」と言われ、代わりに条件の低い仕事を紹介される。 派遣という働き方の周辺には、この手の質の悪い業者がつきまといがち。こういう現実を肌身で知っているので、政府の美辞麗句にはなびかない。だが、法案を阻止するということにも希望を持ちきれない。 「結局通ってしまうのかなと。諦めている人や、家族がいて差し迫っていない人は声をあげません。鬱積(うっせき)する思いがある人はたくさんいるはず。本気で『変えられる』と思える状況になれば、私も自信を持って声を出せるのだけれど」 どのような見直しが必要だと思うのか。女性は「わざわざ派遣契約を3年で切る必要はありません。今の仕事を長く続けられるようにして、派遣先と意見交換しながら、直接雇用を進めていく必要があるのではないでしょうか」と話す。 専門26業務は99年改正で期間制限が撤廃され、正社員との置き換えが進んだ。働き手の多くが女性だ。いわば政治によって生み出された不安定雇用の層。再び自民党政府により雇用不安の危機にさらされている。それも「雇用弱者」の年齢になった頃に。(連合通信) |
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