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2015年 7月23日

正社員化問題でうそ繰り返す
〈参院での派遣法審議から〉

「派遣大国」めざし着々と

 「生涯ハケンで低賃金」をもたらす労働者派遣法「改正」案。参議院本会議の審議では、野党3党が衆院での論戦を踏まえ、法案の問題点を指摘した。政府答弁は「正社員化に道を開く」という、反論されつくされたうそを繰り返すばかりだ。「うそも百回言えば本当になる」と言わんばかりの態度を続けている。

国民だます答弁

 今回の「改正」案で、派遣労働者の増加に歯止めが効かなくなることや、派遣先への直接雇用などの「雇用安定措置」に実効性がないことは衆院段階で明らかにされてきた。7月8日の本会議でも、安倍首相は野党各党からの追及に対し、衆院での審議と同様、「正社員化に道を開く」と繰り返した。

 法案には「正社員化」などという文字はどこにも書かれてない。派遣先への直接雇用の義務付けもない。国権の最高機関である国会で、こんなうそを繰り返すことがなぜ許されるのか。この答弁をテレビ中継させることを狙っているとすれば、それは有権者をだます行為だ。政治家として許されることではない。

 この問題で津田弥太郎議員(民主)は、改正後の正社員と派遣労働者の増減見通しを尋ねている。「景気などの条件を現状に固定した場合」でも、首相は「見通しを立てることは困難」と、衆院と同様に明言を避けた。

自分はやる気なし

 衆院では、課題山積のまま採決強行したため、つめ切れていない多くの問題が残されている。

 法案は、現行の届け出制を廃止し、全ての事業を許可制にする。悪質な企業を排除できると政府が胸を張る規制強化だ。問題は許可取り消しの基準である。派遣会社による派遣先への直接雇用の依頼や、新たな派遣先の確保など「雇用安定措置」を実行させる担保になるという。

 この点について、「一人でも雇用継続が図れなければ(雇用安定措置義務違反で)許可を取り消すのか」との質問に対し、塩崎恭久厚労大臣は「違反の態様や規模などを総合的に判断する」と答弁した。すぐに派遣会社の許可が取り消されるものではないと言明したものだが、その基準についてはしっかり議論する必要がある。

 附則で「雇用慣行が損なわれるおそれがあると認められるときは速やかに新法の検討を行う」という条文の解釈についても質問が及んだ。派遣労働者への置き換え(常用代替)が広く進む恐れを、どの時点で判断するのかが問題とされる。

 塩崎大臣は「常用代替が常態化するまで容認するのではなく、常態化のおそれがある場合に速やかに検討する」と答弁した。重要な言質だが、まだまだ明確ではなく、さらなる審議が必要だ。

 各省庁で、派遣から正規採用された人数についても質問が出された。政府答弁は「0人」。定員管理や試験など民間とは仕組みが違うと釈明したが、「正社員化」の主張がうそでないならば、まずは国が率先して正職員化をすすめるべきではないか。政府の真意を正す審議を期待したい。

▼みなし制度撤廃は財界の要望

 派遣法「改正」案が参議院で審議入りした7月8日の本会議で、辰巳孝太郎議員(共産)が、「改正」案の成立を急ぐのは、みなし制度の発動を防ぎたい経団連の要望があると追及した。首相はみなし制度の円滑な施行のためと釈明、財界などの影響については否定したが、言っていることは経団連と同じだ。

 みなし制度は、違法派遣の派遣先に雇用義務を課す強い規制だ。2012年改正で新設された。法案が成立すれば、専門業務偽装などの違法が「合法」になる。

 経団連は13年にまとめた政策文書で、「みなし制度は採用の自由、労働契約の合意原則の観点から根本的な問題を抱えているだけでなく、予見可能性が極めて低い」などとし、「施行前に制度自体を廃止すべき」と主張。人材派遣協会も同年、「派遣として長く継続雇用を望む派遣社員が多くいることを鑑み、撤廃すべき」としていた。

 規制を業務単位から人ごとに変え、上限3年とすることも、両団体の主張だった。徹頭徹尾、大企業と派遣業界のための「改正」であることが分かる。

日本は世界一の派遣市場

「2008年、日本は世界最大の派遣市場となった」。参院本会議で、野党議員がこんな事実を指摘した。当時日本は派遣事業の年間売上高が米国と並び世界トップ水準で、翌09年には単独トップに躍り出た。派遣法「改正」で再び、「世界で一番、派遣会社がもうかる国」になろうとしている。

▼米国に次いで2位

 日本の派遣労働者数は、90年代末に原則自由となって以降、爆発的に増えた。2000年度の139万人が、08年度の最高時には399万人に。その後リーマン・ショックによる「派遣切り」などで減少したものの、それでも13年度には252万人となっている。
 事業規模も膨らんだ。00年度に1兆6700億円だった売上高は、08年度には7兆7800億円に激増。13年度は減少したとはいえ、5兆1042億円だ。

 派遣会社の国際団体CIETT(国際人材派遣事業団体連合)によると、世界全体の年間事業売上げに占める各国の割合(09年)は、日本が24%で、米国の22%、英国12%を押さえトップだった。12年は規制強化の動きもあり、日本は約17%に落ち込んだが、それでも米国(約29%)に次ぐ2位のポジションを占めている。

 世界トップ10企業の中にも、おなじみの名前が目に付く。スイスに本社を置くアデコ(1位)、米国資本のマンパワー(3位)のほか、リクルートスタッフ(7位)、テンプスタッフ(10位)という日本企業が名を連ねている。

 今回の「改正」では、竹中平蔵パソナグループ会長らの発言や働き掛けなど、派遣業界の姿が目に付く。企業が際限なく派遣労働を利用できるようにする法案が成立すれば、派遣労働が急激に増えることは、過去の経緯を見れば明らか。日本を「世界で一番、派遣会社が活動しやすい国」にすること。法改正の狙いはこの点にある。(連合通信)

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