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本当に雇用の安定確保できるの? |
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「大量解雇対策」も示さないまま |
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▼安易な解雇なくなるか/審議は全く不十分 現行法では、専門26業務は派遣の受け入れ期間制限がなく、それ以外の業務は原則1年・最大3年の制限が設けられている。この規制を今回の「改正」で、派遣労働者が有期雇用ならば最大3年、無期雇用ならば制限なし――に改めようとしている。 派遣期間制限がなくなれば、派遣先にとっては労働者をいつまででも必要なだけ使い続けられる。企業にとって使いやすさを高めるのと引き換えに、雇用の安定化を図るというのが、政府の説明だ。 だが、2008年末のリーマン・ショック直後、無期雇用だった派遣労働者の77%が離職している。うち94%が解雇だった。 政府は「派遣契約の終了のみをもって解雇しないようにすること」を許可基準や指針に明記することで、安易な解雇に歯止めをかけるという。では企業が解雇の理由に「経営難」や「派遣先確保が困難」などを付け加えた場合でも歯止めとして機能するのか。その効果について、十分な審議はなされていない。 無期雇用の派遣労働者は、全体の約2割。派遣期間制限をなくせば、直接雇用との置き換えが進むと予想される。しかし、雇用終了のあり方や休業補償、賃金など、就労の実態についての国の調査はまだない。これで真摯な検討を行ったといえるだろうか。 ▼派遣制度の根幹が変質/違法行為前提の想定 派遣先が、勤勉な派遣労働者Aさんに3年経過後も働いてほしい場合、「課」を変えれば受け入れが可能になる。だが、派遣先が3年経過後にAさんを指定することは、違法な「労働者の特定行為」に当たる恐れが生じる(図2)。 労働者派遣制度では、雇用主はあくまで派遣会社でなければならない。派遣先による働き手の指定は採用行為そのもので、人身売買だとして戦後厳しく禁じられてきた労働者供給事業になってしまう。さらに、性別や年齢、容姿による差別の温床にもなる。 「課を変えれば3年後も派遣を続けられる」という政府の想定は、違法な特定行為を前提にしている――高橋千鶴子衆院議員(共産)の指摘に対し、厚労省の担当官はこう答えた。 「(改正で新たに)派遣労働者の業務遂行状況について、派遣先に報告の努力義務を課している」 つまり、派遣先は労働者の指定こそしないが、働きぶりについての「通信簿」を派遣会社に送るので、派遣会社はそれを見て派遣先の「(Aさんの派遣継続を希望する)心意気」(塩崎大臣)を感じ取り、Aさんを派遣するのだという。国による「脱法行為のすすめ」といえよう。 この職場で働き続けたければ、派遣先に評価されなければならない――。雇用不安を逆手にこき使う、違法すれすれの仕組みが完成する。 ▼失職の不安は他人事/専門業務区分の廃止で 専門26業務の区分が撤廃され、事務系の派遣で働く女性や中高年者から不安の声が上がっている。現行法では専門業務に派遣期間制限はないが、「改正」で、最長3年となるためだ。既に中高年の派遣労働者からは次の仕事はないことをほのめかされたとの悲鳴が上がっている。 厚労委員会で、この問題について問われた安倍首相は、「必ず失職するという指摘は全く当たらない」と声を強めた。 採決強行の前の週には、女性の派遣労働者たちが雇い止めの不安を訴え、抗議の声をあげ始めていた。労組の後ろ盾もない女性たちのやむにやまれぬ声を、安倍首相は根拠も示さずにはねつけたのである。 専門26業務は99年法改正で派遣期間制限が撤廃され、女性の事務労働は次々に派遣労働に置き換わっていった。本来であれば直接雇用に転換されるべきケースも多くあったはずだが、有効な手立てがとられないまま現在に至っている。 「改正」案の雇用安定措置(派遣先への直接雇用の依頼など)に実効性がない以上、3年後の大量失業を回避するには、専門26業務に焦点を絞った対策が必要だろう。この点についても政府はゼロ回答だ。 都内で働く50代の派遣労働者の女性は「既に年齢を理由に派遣先の紹介を断られている。(法「改正」は)セーフティネットなしにはしごを外されるようなもの」と憤る。 ▼直接雇用が遠のく/二重の壁に遭う 「改正」案で、直接雇用への道が遠のくことも示された。 現行法では、派遣先は、原則1年以上受け入れ、派遣労働者が希望する場合、直接雇用の努力義務が発生するが、「改正」でこの規定がなくなる。その代わりに、雇用安定措置として、派遣労働者ではなく、派遣会社が直接雇用を依頼する規定が新設されるのだ(図3)。 質問した阿部知子衆院議員(民主)は「現行法では労働者は派遣先にじかに直接雇用を依頼できるのに、改正で、派遣会社を通じて依頼しなければならなくなる。2階から目薬を差すようなもの。派遣労働者は(派遣会社と派遣先の)二重のバリアー(壁)に遭う」と危惧する。 直接雇用は、派遣会社にとっては営業上の損失。派遣先の抵抗感も大きい。 塩崎大臣は「難しい質問だ」と思わず本音をもらしたが、その後は制度の説明をする答弁書を棒読みするばかりだった。 ▼正社員化やる気なし/190年もかかる計画? 「正社員化を促す」という政府の説明について、その本気度を示すやり取りがあった。 派遣先企業が派遣労働者を正社員として雇用した際に国から支給される「キャリアアップ助成金」についての答弁。今年度の予算額の積算人数が、約3300人分しかないことが報告された。 派遣労働者の総数は約126万人。この半分を正社員にするだけでも、約190年かかる計算である。答弁はごまかせても、予算は正直だ。 ▼派遣なのに正社員?/虚偽求人に歯止めなし 無期雇用だからといって、派遣労働者として雇うのに「正社員」の求人だと言って募集できるか――。この問題も繰り返し追及された。塩崎大臣は「正社員の定義がない」「ケースバイケース」と明言を避け続けた。 既に、大手派遣会社が無期雇用の派遣労働者の求人を、「正社員」として自社のホームページで募集している。ハローワークでは認められない記載。民間の求人募集で許されるのかが問われた。 山井和則衆院議員(民主)の三日にわたる質問に対し、塩崎大臣は明言を避け続け、5月29日の答弁でようやく「無期雇用派遣を募集する時は、正社員という言葉を改正法施行後は使用しない旨を指針に規定することを検討する」と少し踏み込んだ。 一方、高橋千鶴子衆院議員(共産)も同日、この問題に触れたが、厚労省の担当官はやや異なる答弁をしている。企業が自社のホームページで求人募集する場合でも、「誤解を招く恐れのある場合は、職業安定法上の指導や助言の対象になる」という。担当官の答弁だと、現行法でも是正指導は可能だ。 どちらが政府の正式見解なのか。若者の一生を左右する求人広告の問題も、曖昧なまま審議が打ち切られた。(連合通信) |
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