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2015年 6月23日

「当事者の声を聞け」
派遣法案が衆院通過・舞台は参議院に

強行採決に怒りうずまく

 派遣法「改正」案が衆議院本会議で強行採決された6月19日の午後、国会周辺では派遣労働者から不安や憤りの声が相次いだ。すでに3年後の解雇通告を受けている専門業務派遣の女性(56)は「この年齢で仕事を失うのがものすごく怖い。実際に不安に駆られている人がいることを(政府は)考えているのか」と声を震わせた。〈写真・派遣法改悪の強行採決をうけ抗議する派遣労働者〉

 午前中の採決を傍聴した40代女性の派遣労働者は、「生涯ハケンを強いる法律の採決が、(多数の与党によって)感情のない感じで進んで行くことにショックを受けた」と述べた。

 専門業務派遣で働く女性(39)は「高年齢の派遣社員ほど悲しい思いをすると思う。議員は現状を知っているのか」と訴えた。

▼見殺しにされる

 前日の18日には、採決に反対する派遣労働者や弁護士らが、法案に「均等待遇原則」を盛り込むことなどを求める要望書と、派遣労働者470人分のアンケート(声)を塩崎恭久厚生労働大臣宛てに提出した。

 このアンケートは、弁護士や研究者などでつくる「非正規労働者の権利実現全国会議」がインターネットを通じて実施。470人のうち、法案に肯定的なものは6人のみだという。

 要望書に名を連ねた元派遣労働者の廣瀬明美さんは、「当事者の声が生かされないまま、労働者を見殺しにする法案が強行採決されることは許されない」と訴えた。

「強行採決に抗議」全労連

 全労連は今回の衆院採決について、厚生労働省の「10・1ペーパー」の問題や、度重なる審議中断など不正常な委員会運営が続き、法案が十分に審議されていないことを指摘。採決強行は「議会運営の点からも許されない」と批判した。
 談話は法案について、派遣への置き換えを進める「正社員ゼロ・生涯ハケン法案」であることや、10月施行予定の「みなし制度」発動を防ぐ「違法企業免罪の狙い」があることも指摘。派遣法案採決と「同一労働同一賃金推進法」修正が取り引きされたことにも触れ、「与党と維新の党利党略」を厳しく批判した。
 その上で、広がりつつある批判の世論や運動と共同し、「廃案を求めてたたかいをさらに強化していく」と結んでいる。


解説ろくな答弁もできずに強行派遣法案をめぐる与党の対応

 派遣労働の規制を大幅に緩和する労働者派遣法「改正」案が6月19日、衆院を通過した。制度の大転換というべき内容なのに、与党は課題を多数積み残したまま採決を強行した。厚生労働省による怪文書(10・1ペーパー)配布、誤った答弁、調査データの不開示などを不問に付し、数の力で押し通そうという姿勢が際立った。

 この日、衆院厚生労働委員会では民主、共産、維新が反対したが、自民、公明の賛成多数で可決。同日、本会議に緊急上程され、与党賛成多数で可決された。一方、附則で解雇規制の検討を明記した「維新」提出の修正案は否決。与党との修正で骨抜きにされた「同一労働同一賃金推進法案」は可決された。

 委員会の運営をめぐっては、年金の個人情報流出への対策や、法案の徹底審議を求める野党に対し、渡辺博道委員長(自民)が職権を乱発して委員会を開催。採決を急ぐ与党のやり方に抗議して、民主、共産が委員会を欠席し、審議は空転した。

 安全保障関連法案を今国会で通したい与党は、野党欠席の下での強行採決は避けたいという事情を抱えていた。審議は一時こう着状態に陥ったが、与党は「同一賃金推進法案」の修正協議をえさに維新の党を抱き込み、採決に漕ぎ着けた。

▼業界の意向を最優先

 委員会では、政府答弁者が立ち往生し審議が中断する場面が目についた。6月17日の民主、共産による補充質疑だけでも、5回中断している。中断が20回近くに及ぶ日もあった。担当大臣が法案を理解していないということ。民主党政権時の派遣法改正審議では見られなかった現象であり、異常というほかない。

 事務方の答弁訂正も相次いだ。通訳などの派遣労働者の平均賃金を日額「3万7596円」と述べ、後にこれが派遣料金の額だったことが判明したり、施行前に派遣契約を結べばずっと改正法が適用されないかのような説明をしたりと、官僚としては極めてお粗末な「間違い」が繰り返された。野党委員が要請していた、法改正に関連する調査データが届けられないまま質疑を打ち切ったことも首を傾げざるを得ない。

 極めつけは、厚生労働省による怪文書問題だ。違法派遣を受け入れた派遣先に雇用義務を課す「みなし雇用制度」の10月1日施行を前に、法「改正」が必要と訴えた文書である。野党の追及を受け、後に大臣が謝罪した。「10月1日の前に法改正しないと大量失業が生じる」など、国がうその想定を喧伝し、違法派遣の合法化を図ろうとしたことは労働行政の汚点として記憶されるだろう。

 このような混乱が起きたのは、「みなし制度」の施行を前に何が何でも法「改正」を急ぎたい派遣業界と経済界の要請を最優先し、無理な審議を重ねたからではないか。その結果、法案は審議が不十分で、未解明の問題が少なくない。

 舞台は参院に移る。「良識の府」の名に恥じない委員会運営を求めたい。(連合通信)

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