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2015年 8月31日

派遣法案の審議がストップ
「みなし制度」で答弁不能に

政府が労働者に不利な答弁

 派遣法「改正」案を審議している参議院厚生労働委員会は8月27日、野党側の追及に政府が答弁できず質疑が中断し、そのまま散会した。違法派遣から労働者を守る「労働契約申込みみなし制度」(10月1日施行予定)について、政府側が法案に明記もなく労働者に不利となる解釈を示したためだ。野党側は「政府は派遣会社の都合に合わせ、法律を勝手に解釈している」と批判を強めている。

 焦点となったのは、改正法案の「経過措置」を定めた条文だ。法案が成立した場合、施行日以降に結んだ新たな派遣契約は改正法の期間制限(無期雇用の場合期間制限なし・有期雇用の場合は一律3年)を受けるが、施行日以前に結ばれた契約には現行の期間制限(専門業務は期間制限なし、一般業務は最大3年)が、その契約が終了するまで適用されることになっている。

 仮に9月1日に改正法が施行された場合、8月31日以前に結ばれた派遣契約には現行法が適用される。そのため期間制限違反がある状態で10月1日を迎えれば、「みなし制度」が発動し派遣先は労働者に直接雇用を申し込んだとみなされるはずだ。

▼根拠のない解釈を強弁

 ところが石橋通宏議員(民主)がその点をただすと、厚労省の坂口卓部長は「みなし制度は、法律が施行された時点では未施行で効力を持っていないので、(経過措置として)適用されない」と答弁した。

 つまり経過措置中の期間制限違反を免罪するということ。法的な根拠がないなかで厚労省は、独自の解釈を示したのだ。塩崎厚労大臣もそれに同意し、審議は紛糾した。

 政府の答弁の矛盾が決定的となったのは、小池晃議員(共産)の質問だった。「派遣労働者は、違法派遣があれば直接雇用されるみなし制度に期待して派遣契約を結んでいる。すでにみなし制度は効力を発揮しており、答弁は矛盾している」と追及。政府は答えることができず審議は長時間中断し、そのまま散会した。

〈用語解説〉労働契約申込みみなし制度

 期間制限違反などの違法派遣が行われた時点で、派遣先が労働者に直接雇用を申し込んだとみなす制度。違法派遣に対するペナルティとして定められたもので、派遣業界は施行に強く反対してきました。2012年の派遣法改正で成立したものの、周知期間のため施行が3年間先送りされました(10月1日施行)。偽装請負など主に4つの違法派遣の類型があり、最も数が多いのが、専門26業務偽装などの期間制限違反。違法状態にある派遣労働者は施行を待ち望んでいましたが、「改正」案では専門26業務の区分けが撤廃されるため、現行法での期間制限違反も消滅します。

「3年でクビ」「差別待遇」に憤り/弁護士らが集約/派遣労働当事者アンケート

 研究者や弁護士などでつくる「非正規労働者の権利実現全国会議」が、派遣法「改正」案についてのコメントを当事者750人以上から集めた。その内容を見ると、「3年で雇い止め」と、「正社員との差別待遇」の2点に、怒りと不安が集中している。そのアンケートの分析が、8月25日に労働弁護団などが開いた集会で発表された。

▼「3年でクビ」やめて

 専門26業務で働く派遣労働者たちは、「3年でクビ」に対する不安を訴えている。40代女性の専門派遣労働者は、政府が強調する「正社員化への道」に対し、こう批判する。
「3年(の契約期間)満了で次の派遣に交代させる会社が増えることが容易に想像がつく。なぜなら派遣社員を使う理由がコスト削減のためだから。正社員にしなきゃいけない理由がありません(アンケートより、以下同)」。
 派遣先に対し、正規雇用への義務化を求める声も多い。専門派遣で働く別の40代女性は「派遣社員で転々としてきた結果、職務スキルが上がっているという実感もありません……なぜ派遣社員を正社員として登用しないのでしょうか」と憤る。アンケートからは、「雇用安定措置の実効性はなく、3年で人を入れ替えられるだけ」という現実が、共通の認識になっていることが分かる。

▼もはや「身分差別」

 正社員との差別待遇については強い怒りが表明されている。
「正社員と同様の業務でも給料は半分以下」などの賃金格差をはじめ、賞与・退職金なし、交通費なしという声や、「父親が死んだときには忌引きも香典もありませんでした(50代女性)」と、処遇のあらゆる面で差別的な格差がある。出産時の雇い止めや、育休や育児・介護の時短勤務がないなどの声も深刻だ。一般派遣で働く40代男性は、「派遣だって人生があります。会社のコマではありません。不安定な職だからこそ退職金を義務化したり、交通費支給、賞与だって払うべきでは?」と訴えている。

 アンケートはインターネットで行われ、結果は非正規全国会議のホームページで公開されている。

▼当事者発言より

 25日の集会では、2人の派遣労働者が自身の体験を語った。

 専門業務で総合商社へ派遣されていた女性は、勤め始めて2年ほど経ったとき、業務内容が契約から逸脱していることに気づき、社内のコンプライアンス(法令順守)部に違法と申告したところ、翌日に入館カードを取り上げられ出勤停止を言い渡された。

 女性は「派遣労働者が会社にコンプライアンスを指摘すると雇い止めに遭う。今回の法改正の『人ごと3年』という規制緩和は、そんな弱い立場の派遣労働者から、さらに夢も希望も奪う法案です」と訴えた。

 派遣会社テイケイワークスで日雇い派遣として働いていた女性は、就業中の劣悪な労働環境を語った。

 時給950円程度で交通費なし、さらに始業前1時間~1時間半前に無給でのミーティング参加を強いられた。ミーティングに参加できなかった日に、あとで派遣元から呼び出されて注意された。始業前は契約時間外だと抗議すると、「始業前のミーティングは派遣先に迷惑をかけないため当たり前。協力してくれないなら仕事の紹介はできない」と言われ、その後紹介は極端に減った。

「何か抗議したりすると仕事をもらえなくなるほど、派遣労働者の立場は弱いのです」と指摘。仕事の紹介を盾に、労働者に差別的な処遇を強いる派遣労働の実態を訴えた。

労働3団体が「廃案」で団結労働法制改悪反対の集会で

 労働弁護団などは8月25日、今国会に提出されている労働者派遣法と労働基準法の「改正」案に反対する集会を開き、150人以上が集まった。棗一郎弁護士は、「派遣法と労基法の改悪を止めなければ、奴隷労働のような社会が現れてしまう」と指摘。いま審議が進められている派遣法案の採決を阻止して、労基法の審議入りも止めようと呼び掛けた。

 集会では、派遣労働者と過労死遺族らが、両法案にそれぞれ反対の訴えを行った。野党の国会議員も参加し、「法案成立阻止に全力を尽くす」と応えた。

 労働組合からは、ナショナルセンターの枠を超えて連帯の訴えが続いた。連合の安永貴夫副事務局長は「労働法制改悪阻止に向け、座り込みもしてきた。諦めず、何度でも叫び続けていく」と表明。全労連の井上久事務局長は「9月1日施行の派遣法案を8月下旬に審議しているのはどうなのか。廃案にむけ全力を」と呼び掛け、全労協の柚木康子常任幹事は「派遣労働は人権侵害であり、過労死を助長する労基法改悪も絶対に許してはならない」と訴えた。(連合通信)

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