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2015年 5月28日

「3年後には雇い止めだ」
派遣会社が女性に通告

「改正」案見越した対応始まる

 今回の派遣法「改正」によって専門26業務で働く有期雇用の派遣労働者は、3年後ほぼ確実に失職するとみられている。大量失職という言い方は大げさではない。既に派遣会社から3年後の雇い止めを通告された労働者がいるのだ。

▼違法派遣で15年

 宇山洋美さん(56)はシングルマザーとして、2人の子どもを育てながら30年間働いてきた。現在の職場に派遣されたのは15年前で、契約は専門業務の一つ「OA機器操作」。実際には電話対応や資料整理といった雑務が多く「専門26業務」の要件を満たさない違法派遣の状態だ。

 正社員と同じように休日出勤や出張などをこなし、月100時間近い残業を行う時期もあった。それでも正社員化されることなく3か月更新が繰り返され、2年前には時給を250円下げられた。一方的な不利益変更だったが、明確な理由は示されなかった。

 宇山さんは5月26日、派遣元から「9月1日に法律が変わり、3年後には今の派遣先にはいられなくなる」と告げられた。「法令順守のため」だという。派遣先への直接雇用はされないのかと聞くと「それは派遣先次第」と返された。

▼合法的なリストラ

 宇山さんのような違法派遣状態の場合、「みなし雇用制度」(10月1日施行)が適用され、派遣先が直接雇用したとみなされることになる。ところが今回の「改正」案が成立すれば、専門26業務はなくなり、「違法状態」が消滅してしまう。得られたはずの直接雇用の権利は消え、新たに設けられる3年の上限期間によって合法的に雇い止めされてしまうのだ。

 宇山さんにとっては、希望を奪いさるリストラ法案以外の何ものでもない。

塩崎厚労大臣の辞任を要求/自由法曹団/虚偽ペーパー問題で意見書

 自由法曹団(荒井新二団長)は5月25日、労働者派遣法「改正」案の撤回と塩崎恭久厚生労働大臣の即時辞任を求める意見書を発表した。意見書は、担当課が経済界の意向を最優先して作成したことがミエミエの「10・1虚偽ペーパー」(4月18日付で既報)を国会議員などに配布・説明していた事実を厳しく批判。監督責任がある塩崎厚労相は辞任すべきとした。

▼「労働者への背信行為」

 鷲見(すみ)賢一郎弁護士は、「改正」案の施行期日が9月1日となっているのは、10月1日に始まる「みなし雇用制度」を適用させないためであり、「(雇用転換を期待している)派遣労働者への背信行為だ」と訴えた。
 みなし雇用は、派遣先企業に違法行為があった場合に労働者を直接雇用したとみなす制度。2012年10月に施行された改正派遣法の中で、この制度だけは3年間もの周知期間が置かれていた。専門26業務の区分をなくす今回の「改正」案が成立すれば、「専門職偽装」自体が問題にならなくなる。直接雇用を期待して2年11か月間働いてきた労働者は、施行直前でその権利を奪われることになる。
 意見書は、担当課によるこうした行為を不当だと批判している。

▼改定版でも正されず

 塩崎大臣は4月下旬に野党から国会で批判を受け、問題ペーパーの「改定版」(5月2日付で既報)を作成した。そこでは、派遣先がみなし制度のリスクを回避するために派遣切りすることを当然のように描いている。意見書は、みなし制度を適用されるような違法行為をやめさせることこそ厚労省の役割だと指摘。「改定版」でも労働者軽視という問題点が正されていないと批判している。
 自由法曹団が5月に開いた討論集会では、参加した弁護士からこの虚偽ペーパーへの批判が相次いで出されたという。

  〈用語解説〉
 自由法曹団 1921年(大正10年)に起きた労働争議弾圧に対する弁護・支援をきっかけに結成された弁護士団体。「平和で独立した民主日本の実現に寄与する」「ひろく人民と団結して権利擁護のためにたたかう」ことをうたっています。全国で約2100人の弁護士が加入しています。

派遣「続けたい」たった2割/東京産業労働局調査/国の調査とは大きな差

 「派遣の仕事をずっと続けていきたい」はわずか19%――。東京都産業労働局がまとめた実態調査で、こんな結果が示された。厚生労働省の調査と比べて半分以下の低い割合だ。設問の仕方次第では、国の調査結果も大きく変わることが考えられる。

 これは「派遣労働に関する実態調査2014」。都内派遣会社の登録型派遣労働者2000人に聞いている。

 今後希望する働き方を聞いた設問への回答で、最も多かったのが「できれば正社員として働きたい」の41・2%。以下、「今のところはっきりしない」25・7%、「派遣の仕事をずっと続けて行きたい」19%などと続く。派遣を希望する割合は、39歳以下だと、10%台前半で著しく低いのが特徴だ。

 一方、厚労省の2012年実態調査では、今後希望する働き方として、「派遣労働者として働きたい」が43・1%で、「正社員」は43・2%。東京産業労働局調査と比べて、派遣を希望する割合が2倍以上高くなっている。

 両調査の違いは、東京産業労働局が「今のところはっきりしない」という選択肢を設けていること。派遣を希望する回答と合わせれば、国の調査結果に近くなる。「派遣か正社員か」の二者択一で派遣を選んだ人の半数以上が、実は「はっきりしない」状態で迷っていると見るのが自然だろう。正社員が長時間過密労働を意味するなら二の足を踏むということかもしれない。

 厚労省の調査では、「登録型」以外に比較的雇用が安定しているはずの「常用型」派遣労働者も約半数いるが、派遣希望は48%。全体の数字に大きな影響を与えるほどではない。国も東京産業労働局のように「今のところはっきりしない」という選択肢を設けていれば、派遣希望の割合はもっと低くなったのではないか。

 派遣法改正案をめぐっては、同省担当課による「怪文書」(10・1虚偽ペーパー)問題などで、法案作成手続きへの信用が失われつつある。国会審議どころか、労働政策審議会を含む全ての審議の基本となる実態調査からやり直す必要がある。(連合通信)

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