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2015年 6月02日

「史上最高のベア」とは程遠い
2015春闘 総括座談会

物価上昇より低い賃上げの連合要求

  2015春闘はいろんな意味で世間から注目された。その評価について、それぞれ経験も立場も異なるお三方に集まってもらい、率直なところを語り合ってもらった。今後、労組で本格化する春闘総括論議の参考になればとの思いも込めた。     出席者 鹿田勝一・労働ジャーナリスト・東海林智・毎日新聞社会部記者・匿名・連合産別OB
司会 伊藤篤 ・連合通信編集長 

▼厳しい総括が必要

 ――2015春闘に対する評価は?

 鹿田 取材を通じて印象に残っていることは、電機連合・有野正治委員長の「物価上昇率が3%なのに組合が2%しか要求しないのは及び腰ではないか」という発言と、JEC連合・永芳栄始会長の「われわれは少し臆病になり過ぎていたのではないか。これを払しょくして闘って行こう」という発言だ。

 10年近く「ベアなし」が続いた後の、2年目のベア春闘。昨年比でプラスアルファを取ったのは前進だが、物価が3%も上がっているのに、ベアは0・67%、昨年から0・2ポイントしか上がっていない。要求も春闘60年で初めて物価上昇分以下の実質賃金マイナスを設定したのは異例であり、妥結にも影を落としている。マスコミは「過去最高のベア」と言うが、厳しい結果であり、厳しい総括が必要だと思う。

 東海林 全体の印象は頑張っている感があったが、対決点が鮮明になり切らないまま結果が出てしまったという感じがする。もう少し、「燃える春闘」になる気がしていたが、そうはならなかった。

 春闘期間中、古賀伸明連合会長が会見で、「われわれはベアを要求しているわけではない」と述べ、報道陣が「何を言っているんだ」と色めきたつ場面があった。賃上げ分を一律に配分するわけではないという意味では、実態に即した言葉だったと思うが、あの時期に「ベアは要求していない」と言われるとがっかりする。息が合わない。労働運動のリーダーの発信の仕方として「そんな言い方するなよ」と思ってしまう。

 実際、全員に下駄を履かせる一律のベア配分を行っているところはあまりない。若手には手厚くして、中高年はゼロの配分もある。人手不足の中、いい人材を確保したいという思惑からこの傾向は続くだろう。しかし、若手は賃上げで、中高年は実質賃金マイナスというのはいびつだ。物価上昇分を確保し、そのうえで配分すべきと痛感した。そうでないと、「経済の好循環実現」もうさんくさくなってしまう。

 集中回答日の報道にも違和感を持った。「史上最高のベア」と言うが、何を基準に言うのか。今回の数字で史上最高といわれると「ちょっとなあ」という感がある。

▼製造業依存では無理

 連合産別OB 連合の春闘方針を読んだが、7、8年前と大きく変わっていない。

 「アベノミクス」で明らかに大手と中小の格差が開いたのに、春闘は相変わらずトヨタ中心。鉄鋼の隔年春闘はリストラで瀕死(ひんし)の重傷を負った時の交渉スタイルだし、電機も、シャープが経営危機、東芝が粉飾決算のゴタゴタ、さらに電機産業は大手のほとんどが雇用問題を抱えており牽引力はない。

 産業構造が大きく変化している中で、なぜもっと第3次産業共闘などを前面に出さないのか。製造業など第2次産業だけの春闘は、もう終わっている。連合が中心にならなければならないのは、産業構造の変化に伴う共闘体制のあり方と中小労組を中心とした春闘の構築。そのために産別の大手組合がどう影響力を持てるかだ。例えばUAゼンセンなどの第3次産業をもっと前面に出すべきだと思う。

 共闘という意識が見られないのも残念だ。電機は3000円を引き出したが、3000円でそろえただけ。なぜ満額の6000円を取りにいかないのか。決めた要求額を参加者が何が何でも引き出してくるというところに共闘の意味がある。厳しい縛りがない共闘は共闘の名に値しない。

▼政労使会議の思惑

 ――「官製春闘」という指摘があることについてはどう思いますか?

 東海林 政府に賃上げしろと言われて、経営側が黙って「握る」はずがない。賃上げしなければならない理由が元々あって、政府からの要請を受けてやったのだろう。いわば恩を売るためにあえてこうした形を取ったのだと思う。

 労働力人口が減る中で、いい人材を採って、売り上げを伸ばしていくには、若手の賃金を上げなければならない。まともな企業ならばそう考えるはず。元々、財布を開けていたんだ。経営側に賃上げする理由があるということに労組は確信を持つ必要がある。

 連合がその点を厳しく突いて、賃金引き上げの根拠とし、大企業に賃上げをさせていくのが筋だったが、政労使会議があったせいで問題が見えにくくなってしまった。

 鹿田 安倍政権の成長戦略にとっては、デフレ脱却のためインフレと賃上げが不可欠。賃上げ要請には、「アベノミクス」がうまくいくかどうかという危機感が背景にあったのではないか。

 財界は政府を支えることとあわせ、国民所得改善からみて2012年までベアは論外だと言っていたのが、安倍政権になって「容認」に変わった。財界は労働運動がだらしないと見ているのではないか。実際、経団連は消費税増税の影響を除いた物価上昇率は1%だとし、結果的に労組はベア1%も取れなかった。非力さが目立った。

 政労使会議は労組がパワー(実力)を持って臨まなければならない。ヨーロッパでも政労使が話し合う「ソーシャル・ダイアログ(社会対話)」が行われているが、日本との違いは労組がパワーを持っていること。実力を背景に迫らなければ、政府や財界になめられるだけだ。

▼共闘が忘れられている

 ――日本は政府の諮問会議から労働側を排除して労働規制緩和を進めながら、政労使会議には労働側を入れている。連合はのこのこ出て行くのではなく、しっかり苦言を呈すべきだったのではないでしょうか?

 東海林 その通りだと思う。いいように利用されている。

 鹿田 財務省の統計だと、2015年度に賃上げを行う理由について全国1372社に複数回答で聞いたところ、「政労使合意に対応」はわずか10%に過ぎなかった。最も多かったのが「社員のモチベーション向上」で76%、次いで「業績好調」が39%、「優秀な人材の確保」26%、「同業他社の動向」20%だった。ムード作りも指摘されているが、政労使会議があったから賃上げができたというのは違うのではないか。

 OB 政労使の話で言えば、1975年の宮田義二さん(旧鉄鋼労連委員長)の経済整合性論の合意がある。余談だが、これはその後の賃上げを抑えることが目的ではなく、30数パーセント以上もの賃上げをやっていたら日本経済がおかしくなってしまうということで、春闘の新たな方向を労働組合自らが行ったもの。当時を知る人の話を聞くと、経済整合性論をずっと続けるつもりはなかったらしい。

▼ベアゼロ春闘の爪痕

 ――以前に鉄鋼労連(現基幹労連)の幹部が「ベアの額が定昇を下回るようになれば、組合の求心力が弱ってしまう」と言っていたが、実際そうなったわけですね。

 OB かつては賃金体系が確立していなかったため、賃上げしない限り賃金水準は前年のままだった。その後、定期昇給制度が整備されてきた。これがあれば組合員は騒がない。なぜなら毎年自動的に賃金が5千~6千円と上がるんだから。つまり、組合員からの突き上げがなくなった。
 逆にベアを6000円要求した場合、それが確保できないと組合員から非難される。だから要求額を抑えるようになってしまう。

 鹿田 2000年以降ベアは0・1%とか0・01%とか虫眼鏡で見なければならないような額が続いた。経団連もあほらしくなったのか、一昨年から春闘の賃上げ調査でベアと定昇を分けなくなった。
 労組でも、賃金は上がるのが珍しく、上がらないのが普通と考える産別、単組の幹部が増えていると聞く。それは連合でも全労連でも同じだ。財界はかつて、定昇導入はベア闘争否定のためとしていた。いまや「ベアゼロ・定昇春闘」は組合活動家を育てず、労使関係を後退させてしまっている。

 OB 労使関係といえば、この10年くらいの間、企業に労務屋がいなくなった。今は労組の交渉相手はたいていが経理上がりだ。かつて鉄鋼が中心になって5つの組織が切磋琢磨していた頃は労務屋とのものすごいやり取りがあったものだ。
 今、労働法制の規制緩和に真剣になっているのは、第3次産業の「ブラック企業」だろう。ものづくりを知っている人間はそんなことをすれば、労働力が確保できなくなることを知っているからそんな主張はしない。

 東海林 今メーンストリームは、人事労務から企業経営、財務に変わってきている。

▼中小春闘は比較的健闘

 ――連合の回答集計をみると、大手はいいが、中小は厳しい。そのあたりをどうみますか?

 東海林 グループ間、親会社から関連子会社への交渉支援強化ということが盛んに言われたが、やはりこれが機能しなかったのではないだろうか。
 2000年代前半に取材した時、ベアを出した中小企業が「そんな余裕があるなら単価を引き下げる」との嫌がらせを受けたという話を聞いた。今年はトヨタが下請け価格の引き下げをしないと言っていたが、それで中小が賃上げをしたという話は全然聞こえて来ない。

 鹿田 トヨタは下請け単価の引き下げをやめただけ。毎年単価を引き下げて、為替差益などで史上最高の大もうけをしているのだから、むしろ原材料高騰分について単価を引き上げるべきではないか。
 産別内でバラつきが目立つ春闘だった。ただ、JAMをみると、ベア要求組合数、妥結額ともに増えている。先行組合の回答以降、厳しいながらも水準を維持している。フード連合、JEC連合も同様だ。UAゼンセンは中小が大手並みの賃上げ率を確保している。

 OB 2000年代前半は、春闘では共闘体制を構築している産別が少なかった。そこからの出発だったと思う。
 鹿田 2003年に「大企業の労使協調主義」を厳しく批判した連合評価委員会の提言を踏まえ、ベアゼロなど金属大手の回答に左右されない春闘をめざして、中小の賃金闘争が広がっていった。

 OB 今は、中小共闘を引っ張る産別の顔が見えない。
 鹿田 中小・下請企業は親会社に苦しめられているため、結束力があった。しかし、中小共闘に自動車や電機など大手が入ることによってぼやけた感がある。連合も中小の統一要求を決めているが、近年では最終盤の水準維持へ(妥結の最低額の)歯止め設定もなくなってしまった。
 また中小の格差是正では、大手の高額一時金は問題だ。社会的な相場とはならず、組合が掲げる格差縮小に反する。経営側は「業績は一時金で」としてベア抑制を強めている。もっと月例賃上げにこだわるべきだ。

 OB 中小企業の経営者というのは、ものづくり産業では大企業よりも理解のある経営者が多い。簡単にいえば、誰だって自分の会社をつぶしたくはない。しっかりした賃金でなければ、優秀な人を雇えないことをよく知っている。社長が一人の会社ほどそうだ。中小ほど相乗効果を出す意味が大きい。

▼共感得るストとは?

 ――闘い方についてはどんな問題意識を持っていますか? 昨年は相鉄労組や全国港湾がストを行いましたが、今年はそうした動きがあまり見えません。

 東海林 労働条件の改善を勝ち取るためのストは当然だが、社会的アピールのためのストもあっていいと思う。10年ほど前に私鉄のある労組が、非正規労働者の正規化を求めてストをした際、乗客から応援の言葉がかけられた。その前に経済闘争でストをやった時は、乗客からの強い反発があり、若い組合員なんかはまいっちゃった。ストの中身によっては、支持されることもあるんですよね。
 昨年の春闘では、東京メトロの販売店で働く非正規労働者の女性たち(東京東部労組メトロコマース支部)が3回ストを行ったが、アピール度は高いし、彼女たちの待遇改善にもつながった。
 今一度、なぜ私たちにスト権が与えられているのかを考えてみるべきだろう。権利を持っているのに行使しないのはもったいない。

 鹿田 昨年の連合の中闘確認には、「スト権確立」という言葉が入っていた。ところが、今年はスト権のスの字もない。潮目を変えるといいながらも、争議に訴えるという構えは希薄だ。
 半日ストの争議件数と妥結水準には相関関係がみられる。しかし、その争議件数も1974年の5197件をピークに、2012年には38件に減り、参加人数も362万人から1万人にまで低下した。
 半世紀以上にわたり日本の労働運動を見つめ続けてきた英国のロナルド・ドーア氏は、昨年出版した著書『幻滅』で、ストを行わない日本の労働運動の弱点を指摘している。
 政労使会議を逆手に取って、不満ならばストをするという構えをなぜ取れないのか。一挙には無理かもしれないが、分配のゆがみを改善するためにも、春闘再生のためにも、必要ではないだろうか。

 OB 日本の労働組合は企業内組合の延長線上にある。個人加盟のドイツとの決定的な違いだ。私は30年以上前にストを打ったが、今はそんな経験のない幹部ばかりだろう。ただ、その当時はストをやらないと交渉に入れないという事情もあった。

 ――以前、連合の幹部が「日本は成熟した労使関係なのだから、ストなど野蛮なことはもうしないんだ」と話していたのを思い出します。

 OB 野蛮かどうかは分らないが、今は組合員がついて来ない。組合員がついてきてくれるかどうかが最大のポイント。48時間なんてとても無理で、半日が限度だろう。ただ、春闘よりも雇用問題についてのストならばあり得る。

 東海林 毎日新聞労組でも毎年、春闘や一時金闘争ではスト権を立て、実際にストに突入することもある。そうは言っても実際に新聞発行ができないようなストはさすがにできない。だからやるとしても2時間がギリギリ。選抜高校野球の開会式の日にストを設定し、自社主催の開会式の取材ができなくなるかもしれないというプレッシャーをかけて回答を迫ったことが1度だけある。ストに入る前に1時間前倒しして記事を出稿し、最低限の保安要員(デスク)を置いたうえで、スト解除指令と同時に輪転機を回すという手はずだった。

▼労働法制改悪でストを

 ――先ほども出ましたが、私鉄の組合ではストをした場合、乗客の反応が非常に気になるといいます。ただでさえ乗客から駅員への暴力行為が頻繁にあるのに、ストなんてしたら大変だと。

 OB 周りがどれだけ理解してくれるかにかかっている。近隣の人々が理解してくれるならば、ストをする価値があるだろう。「左翼的な組合」の場合は思想的なものだから別の論理でするのだろうが…。

 鹿田 フランスのパリ市民はスト慣れしている。大事なことは、年金などの国民的課題でストをすれば、周りの人々も自分たちと無関係ではないと考える。テーマの社会性は重要だろう。
 春闘華やかなりし頃は、労組がストをすると、「われわれの賃金も上がるのではないか」という波及力への期待があった。組合との関係が目に見える形であった。

 OB 労働法制改悪問題での半日ストなら価値があるかもしれない。
 労働側の代表がいない政府の諮問会議で労働法制改悪が決められている問題をもっと追及すべきだ。三者構成主義というILO(国際労働機関)の原則に反するわけだから。そういう感性がないから塩崎(厚生労働大臣)なんかになめられるんだ。「ふざけんな」と怒るべきだ。

 鹿田 全労連は今春闘で労働法制改悪でのストも提起したが、全体としては不十分なままで終わった。重要段階で職場からの争議行動が課題となっている。

 ――全労連でも労働法制でストを打てないのですか。

 鹿田 先日、連合がAFL―CIO(米国労働総同盟産別会議)のトラムカ会長を招待し、その講演を聴く機会があった。印象的だったのは、「賃上げを軸に経済、社会、政治の実現」を訴えつつ、ビジネスユニオニズムからソーシャルユニオニズムに移行しようとしていること。自分たちの要求だけやっていたら、攻撃されたときに国民や地域に支援してもらえないことが分かった。そこで各種のコミュニティと連帯した運動に切り替え、組合のスト、デモを地域が守っているという。
 日本の場合も、企業別組合が内向きで、いざという時に支援が得られない。世のため、地域のため、というそんな運動が必要ではないか。

▼非正規主役春闘ヘ

 ――非正規労働者の底上げという点はいかがですか?

 東海林 金属大手の集中回答日に合わせて、連合が非正規労働者の賃上げ回答を集めて公表するなど、波及させようという心意気を感じた。今年は、KDDIが正社員を上回る4800円のベアを引き出したが、早い段階で公表した意義は大きい。
 しかし、まだ、春闘は非正規労働者のものにはなっていない。その点は工夫が必要だ。連合は完全に無視していたが、ファストフードの最低時給を1500円以上にしようと呼びかけた世界同時アクション(国際食品労連などが呼びかけ)のような取り組みに乗っていくべきだと思う。第3次産業の非正規労働者を取り込んでいく場が必要。その役割を果たすのが地方連合会だと思う。
 連合は今年、各地方で経営者団体を招きフォーラムの開催を掲げた。そこには非正規労働者が参加が欠かせないのではないか。

OB 連合は非正規の面倒をもっと見るべきだと思う。時給50円上げるなどの事例をつくり、それを全国に広げていくような取り組みだ。データだけ集めても…。

 鹿田 笹森会長の時代にパートの処遇改善を重視し、高木会長の時代に非正規センターを作った。そこで非正規労働者にも目を向けようということになった。人手不足で企業が働き手の囲い込みに走っている今は、均等待遇や正社員化を進めるチャンスが到来しているといえるだろう。運動でもパートの組織化と組合役員就任による正規と非正規との同時・同水準妥結などの前進もみられる。

▼新たな取り組みに注目

 ――全労連や全労協の春闘についてはどうですか?

 鹿田 全労連の場合も、結成25年を経るなかで「ベア闘争をやったことがない」という組合もある。産別間でバラツキがあるものの、必ずしもうまくいっているわけではない。
 今年新しい取り組みとしては、要求を4000円引き上げて2万円に設定し、3月半ばのヤマ場で単産代表者会議を開いて、物価上昇分や生計費確保など春闘の独自課題で意思統一し、単産任せの対応から一歩踏み出した。
 公務員賃下げの給与制度改革の実施見送りを求める官公労の交渉に、民間の単産が出席する取り組みもみられ、今年は「官民春闘」として初めて東京駅で街頭宣伝を行った。
 春闘の賃上げ回答もねばって回答額を引き上げているが、いかんせん水準は前年並み。ベアゼロ春闘10年間の後遺症は重い。春闘再構築へ春闘の原点である生計費に基づく賃上げとストを背景とする産別・全国統一闘争の強化とあわせ、最賃・公契約など「社会的賃金闘争」を重視する方針だ。
 全労協は消費税が上がったこともあり、昨年から2600円上げて2万円を要求基準に設定した。3月には全労連の春闘集会に初めて全労協議長がきてエールを交換するなど、新たな連携が模索されている点は注目したい。

 東海林 要求の立て方は正しくても、それが結果に結びついているのか。規模が小さいせいもあるのかもしれないが、丁寧な春闘をしているという印象はある。

▼トヨタ中心でいいのか

 ――最後に、春闘再生に向けてメッセージを

 鹿田 ベア春闘の道筋をいかに拡大・定着させていくかが課題となる。そのためには産別自決でなく、連合として統一要求をきちんとつくることが大切だ。今年のように満額でも物価上昇分以下という目減り賃金要求を組合員に押し付ける運動にしてはいけない。「定昇プラス物価上昇プラス経済成長」でもいいけれど、「総合的に判断」というあいまいな要求ではなく、生計費確保の考え方を明快に示すしっかりした要求づくりが必要だ。
 2015年1~3月のGDPは年率換算で2・4%。15年度の3月期決算も史上最高益だ。一方で実質賃金は最大の落ち込み。どう分配のゆがみを是正していくか。連合総研やJEC連合も指摘しているように、内部留保の社会的活用を追求する世論を盛り上げていくことは、来春闘の大きな課題となるだろう。

 東海林 春闘を労組の社会的役割を発揮する場として考えて欲しいし、考えたい。中央でも、地方でも、労組のプレゼンスを高める場にしてほしい。そのためにも貧困問題や、セクシャル・マイノリティー、原発反対や平和運動との連帯の場として春闘を構築していく必要があるのではないか。全労連はそこを意識して取り組んでおり、運動の芽は出てきている。

 OB やはり連合中心の春闘をきちんと構築していくということだ。トヨタ中心でなく、産業構造の大きな変化に伴ってあくまで連合を中心とした第2次産業及び第3次産業一体の、中小を含めた新たな共闘体制の構築が求められている。最初にも言ったように、サービス産業などの産別を含めて連合春闘をつくらないとダメだ。2兆数千億円も利益を出すような企業の労使が中心になる春闘では、中小企業の労使には影響力が少ない。

 ――ありがとうございました。(連合通信)

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