京都府職員労働組合 -自治労連-  Home 情報ボックス 府政NOW 京の写真館 賃金 料理 大学の法人化



2015年12月05日

労働側の訴え認めて終結
日本IBMの賃金減額訴訟

判決前に会社が「白旗」

 情報システム大手の「日本IBM」(東京都中央区)の社員ら9人が原告となり、同社が就業規則を一方的に変更して大幅に賃金を減額したことは違法だと訴えていた裁判で、会社側が社員らの訴えを全面的に認め(認諾)終結した。11月27日、社員らが加入するJMIU日本アイビーエム支部が明らかにした。(記者会見で原告の一人は「職場では低評価を恐れ、長時間労働が常態化している」と述べた(11月27日、都内で))

▼退職強要の手段?

 同社は2010年に賃金を減額できるよう就業規則を変更して減給を開始。13年と14年の2年間は、5段階職務評価制度で5段階のうち下位2つの評価を受けた社員全員に、年収換算で10~15%もの賃金減額を行った。組合によれば、対象となった社員は1年で2000人程。労働者を退職に追い込むのが目的とみられている。

 これに対し13年9月、合理的な理由がなく一方的な就業規則の変更は違法だとして原告らが提訴。10回の口頭弁論が開かれ、裁判は15年9月に結審した。12月25日が判決日だったが、1カ月前の11月25日、会社側が原告の請求をすべて認め、賃金減額分など計1183万円を支払う「請求認諾」をして裁判は終結した。

▼「闘いは継続する」

 原告代理人の岡田尚弁護士は「原告側の完全勝利の内容。判決直前の『請求認諾』は極めて異例で、会社側は社会的影響力の大きい判決を避けたかったのではないか」と指摘する。

 就業規則の不合理な不利益変更は違法との最高裁判例も多く、裁判所からは原告側の勝利的和解を勧告されていたという。会社側からも高額な和解額が提示されたが、「公表しない」との条件だったため原告側が和解を拒んだ。

 原告の一人の女性は「(結果を公表せず)私たちの減額された賃金が戻ってくるだけでは問題は解決しない」と述べる。女性の周りでも、賃金減額を受けて既に自主退職した社員も少なくない。「会社に残る多くの減額対象社員の賃金がどうなるのかも大きな問題」と話している。

 JMIUの三木陵一書記長は「会社は裁判での請求は認諾したが、賃金減額制度そのものをやめるとは言っていない。今後の団体交渉では、原告以外の社員の賃金減額分の請求とともに、制度そのものの見直しを求めていく」と述べた。

裁判官は制度に不信感/IBM賃金減額訴訟/「成果主義」で賃下げし放題

 「日本IBM」で行われている賃金減額をめぐる裁判で、会社側は社員ら原告9人の請求を全面的に認める「認諾」を行った。裁判では、会社が就業規則を一方的に不利益変更した違法性とともに、相対評価に基づいて減給する賃金制度そのものも争点だった。裁判官は減額の合理性について説明するよう何度も求めたが、会社側は十分に答えられなかったという。

 同社の賃金減額制度は、5段階の相対評価で下位2つのランクとなった社員全員に、年収換算で10~15%もの減給を行うもの。労働基準法で懲戒処分の限度とされる10%を超えた減額率で、期間の定めなく定年まで続く。数年間連続して下位評価を受けた場合、どんどん年収が下がっていく仕組み(図)だ。

 原告側代理人の岡田尚弁護士は「めちゃくちゃな制度。会社側のフリーハンドでいくらでも減給されかねない。絶対に勝たなければいけない裁判だった」と振り返る。

 原告らが加入するJMIUの三木陵一書記長は「裁判では、個々の原告への(下位2ランクの)評価が妥当だったかどうかは一切問わず、賃金減額制度そのものに絞って争点にした」。その上で「同社の成果主義賃金制度に法的な瑕疵(かし)があったことを会社自らが認めた点で重要だ」と話している。(連合通信)

府職労ニュースインデックスへ