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2015年11月24日

今でも違法状態が横行
〈元日雇い派遣労働者の訴え〉

奴隷労働の拡大に反対

 「日雇い派遣の拡大には、絶対に反対です」

 物流・軽作業の人材派遣を行う「テイケイワークス株式会社」で日雇い派遣労働者として働いていた30代女性は憤る。いま政府が、不十分ながら原則禁止の日雇い派遣規制をさらに緩和しようとしているのが許せないという。

▼契約上は「有期派遣」

 女性は2014年春に同社で働き始めた。契約のために事務所へ行くと、「去年の年収は500万円以上ありましたか?」と聞かれた。「ないと思います」と答えると、それ以上は詳しい説明を受けず、その日から仕事が始まった。

 後で知ったのだが、「年収500万円以上」の例外要件を満たしていないと軽作業の日雇い派遣はできない。そのため契約上は日雇い派遣ではなく31日以上の雇用期間で、週3日程度勤務の有期の派遣労働者とされていた(写真)。

 実際に働き始めると、仕事のある日しか給料が支払われない日雇い派遣だった。禁止措置をすり抜けるための違法な偽装契約だ。

▼歯向かうと仕事干される

 現場では「奴隷のようだった」という。

 真夏の倉庫内作業。風通しが悪くクーラーもないなかで動き回り、全身汗びっしょりになる。ペットボトルは3本空に。作業中トイレへ行っていいか管理者に尋ねると「休憩まで待って」と軽くあしらわれた。

 交通費も社会保険もなし、会社都合の突然のキャンセルにも保証はゼロ。始業の1時間前に集合して、無給の「ミーティング」への参加を強いられる。

 ある現場でのこと。始業前のミーティングに参加できず、始業時刻ちょうどに行った。その場では派遣先社員が仕事のコツを教えてくれたが、後で派遣元(テイケイワークス)に呼び出され、「なぜミーティングに参加しないのか、派遣先の社員に話しかけるな」と言われた。疑問に感じ、「契約時間外のミーティング参加は強制できないはず。派遣先社員は雇用契約書に記載された指揮命令者ではないか」と伝えた。すると「協力してくれないなら仕事は紹介できない」と言われ、実際に仕事が激減した。

 後日人づてに「(女性が派遣先社員に)色目を使って仕事をしている」というウワサを真に受けた担当者が、女性を「出入り禁止にした」と聞いた。驚いて同社に電話で聞くと、「担当者から折り返し連絡する」と言われた。待っていたが連絡はなく、一方的に派遣登録を抹消され、仕事紹介のメールも途絶えた。

▼ユニオンに相談

「単なるウワサ話によって一方的に仕事を干すなど、許されるのか」と女性は強く疑問に感じ、派遣ユニオンに相談。14年12月に「テイケイワークスユニオン」を立ち上げた。団体交渉で契約時間外の「ミーティング」など未払い賃金や、契約上勤務日となるのに仕事を紹介されなかった日の休業補償などを求めた。

▼ユニオン結成して交渉

 会社側は当初「すべて支払う」と回答していたが、具体的な明細を提示すると一転して「支払わない」と主張。現在再度交渉を求めているが、会社側からは返答がない。
 同じ派遣労働者なのに、組合を作って会社と交渉することを「会社への反抗」と捉え、よく思わない人たちもいるという。しかし女性は、「『権利がはく奪されて当たり前』と思ってしまったら、それは奴隷と同じ」と話す。
 現在大学生には例外的に日雇い派遣が認められている点について「無権利状態で働くことが当たり前になってしまったら、その後ブラック企業に就職しても疑問を持たないのでは。若者にとって(日雇い派遣は)毒だと思います」と述べた。


要件緩和狙う派遣業界/日雇い派遣の禁止規定/問われる厚労省の追随姿勢

 今年9月30日の「改正」派遣法施行に先立ち、9月に開かれた労働政策審議会の場で、厚生労働省は現在年収500万円以上とされている日雇い派遣の例外要件の引き下げを提案した。「改正」派遣法の施行に合わせて要件を緩和しようという狙いだったが、労働側の強い反対を受けていったんは取り下げられている。

 要件緩和は派遣業界の宿願だ。「日本人材派遣協会」のホームページトップに掲載されている「あしたへの派遣宣言。」(13年6月発行)には、日雇い派遣を認めるべきだとして「年収制限が逆に(求職者の)足かせになっている」と明記。経団連も13年7月に「日雇派遣については、原則禁止を撤廃するか、少なくとも収入要件の水準を大幅に引き下げるべきである」とする政策提言を発表している。厚労省が要件緩和を進めようとしている背景にはこうした「要望」がある。実際に派遣労働のあり方を審議する労政審分科会の使用者側「オブザーバー」には、「日本人材派遣協会」理事と「日本生産技能労務協会」副理事長の2人がそろって名を連ねている。

 派遣ユニオンの関根秀一郎書記長は、契約を偽って違法に日雇い派遣を行うなどの業界の実態があると指摘した上でこう批判する。

「厚労省の役割はこうした違法行為を取り締まること。逆に日雇い派遣の規制を緩和しようとするなどとんでもない行為だ。ワーキングプア(働く貧困層)の象徴のような働き方を拡大させてはならない」(連合通信)

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