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2015年11月16日

米国で相次ぐ最賃引き上げ
15ドル運動の背景を考える

サービス従業員労組が中心に

 米国の270都市で11月10日、時給15ドル(約1800円)と労働組合活動の保障を求めるストライキやデモが行われた。この2、3年で運動は急速に広がり、自治体の最低賃金を相次ぎ引き上げるまでになっている。15ドル運動はなぜ前進できたのか、最近来日した活動家や研究者の話を基に考えてみた。

▼連邦最賃は低すぎる

 この間の州や市レベルでの最低賃金改定は、1100万人の賃金に影響するという。サンフランシスコ市では2018年までに、ロサンゼルス市では2020年までに時給15ドルを実施することが決まっている。

 なぜ自治体なのか。ニューヨーク市立大学のステファニー・ルース教授は「連邦最賃を引き上げる可能性が全くないからだ」と指摘する。

 米国には全国一律に適用される連邦最賃がある。現在は7・25ドル(約890円)だが、09年以降全く上がっておらず、凍結状態だ。引き上げるには公正労働基準法の改正が必要で、保守系の共和党が上下両院で多数を占める議会では、改正が期待できないのである。

 州レベルでは以前から連邦最賃より高めの額を設定しているところが少なくなかった。最近は、そうした動きに拍車がかかるとともに、市レベルでの設定と引き上げが相次いでいるのが、大きな特徴だ。

▼社会的公正を求めて

 運動はどういう人々が担っているのだろうか。

 労働組合では、SEIU(サービス従業員労組)が相当力を入れている。ハンバーガーチェーンのマクドナルドなどで働くファストフード労働者に働き掛けて「15ドルのために闘う」というグループを結成。賃上げと労組の権利承認を求め、店舗前などでストや抗議行動を展開している。

 年を追うごとに運動は広がり、現在はファストフードの国際統一キャンペーンを展開するまでになってきた。同労組の国際担当オルグであるニック・ルディコフ氏は「ファストフード行動を始めた2012年ころは、参加者がわずか200人だった。当時はここまで広がるとは思わなかった」と語っている。

 かつては不可能と思われた「15ドル」が現実のものとなり、来年の大統領選挙でも「大きな焦点になっている」という。
 その背景について共通して指摘されているのが、格差と貧困が広がるなかで人々が「この状態は公正ではない」という思いを強め、怒りを持ち始めたこと。さらに、当事者が声を上げ、立ち上がるよう労働組合や関係者が積極的に支援してきた側面も大きいという。

▼移民労働者らが主導

 ステファニー・ルース教授は、運動が飛躍するきっかけをつくったのは、ウォール街を起点に繰り広げられたオキュパイ運動だったと振り返る。

「富める者1%と持たざる者99%という問題提起が社会的なコンセンサスになっていった。15ドル運動の活動家たちはオキュパイ運動にも参加したし、そこから多くを学んだ」

 既に2000年代から動きが始まっていたと指摘するのは、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校労働研究教育センター)のケント・ウォン所長だ。

 2006年には全米で数百万人のメーデーデモが行われた。メーデー発祥の地でありながら、1世紀近くもメーデーとは無縁だった米国では画期的な出来事だった。ロサンゼルスでは国内で最大の約100万人が集まった。参加したのは中南米からの移民労働者とアフリカ系の黒人労働者たちである。ケント・ウォン所長らが移民労働者たちへの教育や組織化キャンペーンを進めてきたことの一つの結実だ。

「格差と差別の広がりに対し、社会的正義を取り戻す運動が必要だった。既存の労組を含めてロサンゼルスの運動は全国をけん引している」

 同市の最賃引き上げは、こうした流れの中で実現できたという。格差と貧困が広がる日米の状況は共通していると述べた上で、労働運動は、社会の底辺層と連帯し社会的正義の実現を追求する取り組みが必要と訴えていた。(連合通信)

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