一望する山並みを眺めるとき、
        それは至福のとき
         春浅い雪の北アルプス燕岳から槍を見る
 ゴールデンウィークの北アルプスは、まだたっぷりと雪が残っています。でも山小屋が開業して、雪山でもちょっぴり安心して入山できるようになりました。 この時期の山麓の安曇野は桜が満開。京都からすれば、季節のずれというか逆戻りした気分です。いよいよ中房温泉から入山。しばらくすると雪道。このあたりは溶けかけの重い雪質で、「腐った雪」と呼びます。 中腹からは、アイゼン(10本爪)を着用。でも、ピッケルは終始お荷物でした。私の登山は、登り始めの1時間はゆっくり、その後の調子がよければピッチを上げます。今回は病み上がり(風邪)とまったくの練習不足のため絶不調。終始ゆっくりペースでしたが、でも息が上がってしまいました。
 樹林帯を抜けると、「合戦の頭」。いっきに展望が開けます。快晴の空、一面白一色、槍ヶ岳の穂先も見え、いわゆる至福のひと時。しかし、サングラスがないとまぶしいのだ。
 山肌の雪は、風のせいか年輪のような縞模様が走っています。場所によってはその奇跡は様々。しかも光と影で明暗がはっきりしたモノトーンの世界で、研ぎ澄まされた美しさを感じます。
 ここまで来ると雪はざらざらで、カキ氷みたい。食べると水分が少なく、一瞬で溶けてしまいます。注意しないと積雪量が多く、踏み外すと膝上まで埋没する。 苦しながらも稜線の山小屋の「燕山荘」へ。北アルプスの大半の山々が一望でき、急に元気が沸いてくる。人間、現金なものですよ。 さて、ここからの槍ヶ岳は「北、東、西鎌尾根」という3本の尾根が穂先からのび、後方に連なる穂高岳も格好がよく、槍、穂高岳の一番の展望台ではなかろうか。
 稜線の雪は、強風で吹き飛ばされて雪のないところが多い。雪山では、雪の有無と縞模様を見ると、風の方向と強さがわかるようだ。そして雪山は、風の影響が強く、そのため様々な表情を見せてくれます。
 翌朝も快晴。御来光のあと、流れ雲で隠れていた槍ヶ岳が、ベールを取り払うように一気に姿を現しました。眠っていた山の神が起き上がったような気がしました。
 朝日を浴び始めた雪の槍ヶ岳。山の色が白から、薄い紫、薄いピンク、オレンジ、黄、また白へとめまぐるしく変化。山が最も神聖化する一瞬にただ呆然。 のんびりと昼まで北アルプスの山々を眺めて、下山。最後に中房温泉にどぼ〜ん。 江戸時代からの古湯で、少し硫黄のにおいがする。新緑を眺め、川のせせらぎを聞きながら、とにかく極楽。山では秘湯も味わえます。(写真はホームページから)