スポーツに支配者たち 巨人帝国崩壊

谷口源太郎著・花伝社

 「ゼニと日の丸(商業主義や国策)」によって変質させられてきた日本スポーツ界の実態を描いています。プロ野球を企業の宣伝に使った巨人創設者・正力松太郎、巨人中心主義を強引に進めた渡邉恒雄。91年に読売新聞社社長に就任した渡邉氏は、93年からドラフト制度を覆す「逆指名制」(自由獲得枠)の導入を認めさせ人気と豊富な資金力で有力選手を獲得する道をつくった事など明らかにしていきます。 巨人改革が、長嶋監督の下で進められようとしたとき、これを押しつぶしたのも渡邉氏であったことも明るみにします。「今年、私は、巨人を棄てます。−長嶋茂雄」のコピーまでつくって改革の決意までしていたようです。
 巨人改革、プロ野球のグローバリ化、1リーグ制など揺れ動く日本のプロ野球界をとらえる視点がおもしろい。
 西武グループ総帥でオリンピックと深いかかわりを持つ堤義明氏など、実名をあげてその問題点を指摘しています。
 巨人中心主義の破たんという深刻な事態に直面するプロ野球とともに、オリンピック、サッカー、相撲などそれぞれが抱える病根をさまざまな角度から取り上げました。売り上げ激減のサッカーくじ、消費者金融にすりよる競技団体、政治や戦争にほんろうされ国威発揚に利用される現状なども鋭い筆致で告発しています。著者はスポーツを社会的視点でとらえる評論で知られるジャーナリスト。花伝社刊、1800円+税。

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