2003年6月27日、参議院本会議で、解雇ルールの新設を含む労働基準法の改正案が自民・公明の多数で押し切られました。最大の焦点だったのが「使用者による解雇の自由」と「金銭的解決」。同時に有期雇用の3年の制定、裁量労働の拡大など、「働くルール」を大幅に改悪するものでした。
「ルポ解雇」は、労働基準法が審議されていく過程、その背景などに切り込んでいく。何より説得力があるのは、著者の足で拾った「解雇」の現場とその具体例。いかに「改正労基法」が、働くルールを破壊しているのか、現場で急速に広がっている有期雇用が人間の尊厳を否定しているのか、そのリアリズムが迫ってくる。
その下でも「人間の誇り」「人格」をかけてたたかう解雇された労働者の姿は感動的です。また、使用者が労働者を「商品」としてしか見ていない実態も浮き彫りにします。
日本の数年先を行くといわれているアメリカの実態にも迫り、「解雇ルール」が使用者論理で貫かれている結果を「働きすぎと、低すぎる報酬による、不健全な職場文化」と結論づけたフレイザーの言葉を引く。 改正労基法の後、急速に契約社員や請負社員が増え、賃金の低水準化の進化と人間の尊厳が破壊されていっています。著者は『「人間の解体』が、足並みをそろえて近づく」と警告しています。
著者の島本慈子さんは、1974年に京都府立大学を卒業、「読売ライフ」などを経て現在はノンフィクションライター。著書に「子会社は叫ぶーこの国で今、起きていること」(筑摩書房)など。
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