えひめ丸事件の真実追う

生徒らの命奪ったあの惨劇から5年

米国人弁護士が本を出版

 米海軍の原子力潜水艦グリーンビルがハワイ沖で、愛媛県立宇和島水産高校の実習船えひめ丸に衝突、沈没させて実習生ら9人の命を奪った惨劇から、2月10日で5年を迎えます。
 その節目を前に、アメリカの人権派弁護士でロースクール教授でもあるピーター・アーリンダーさんが妻・薄井雅子さんと共著で『えひめ丸事件 語られざる真実を追う』(新日本出版社、2310円)を出版しました。
 事件当時、アーリンダーさんは司法改革の研究のため日本に来ていました。2001年4月、旧知の日本人弁護士から「米海軍が被害家族に説明会を開く。その前にアメリカ司法制度について家族たちに話してほしい」と頼まれたのです。「びっくりしました。アメリカでは、被害者が今後どうすべきかを加害者から説明されるなんて考えられませんから」とアーリンダーさんは振り返ります。
 アーリンダーさんはすぐに宇和島に飛び、愛する人を奪われた遺族らと会って「役にたちたい」という思いがつき上げました。ワドル元艦長が来日、謝罪した際にも尽力しています。
 著書では、そうした経験と、事故原因を調べた米国運輸安全委員会の記録など段ボール五箱分の資料を読み込み、衝突事故がなぜ起きたのか、米海軍はなぜ軍法会議を開かなかったのか、真実はいかに隠されたのかにも迫りました。とくに「アメリカの戦争政策を支える日本の政治が真相究明を妨げ、被害家族を2度傷つけた」という指摘には、考えさせられます。
 「多国籍企業は国を超えて活動している。私たち民衆も、それに負けずに手をつなごう」とアーリンダーさん。本書はえひめ丸事件の真相究明に挑んだ国際的連携の結晶でもあります。

目次へ