雇用の現場で何が起こっている?

雇用破壊ー非正社員という生き方

岩波書店・鹿嶋 敬著

 1500万人まで膨れ上がった非正規といわれる労働者。パート、アルバイト、派遣、請負、契約など様々な労働者が同じ職場ではたらく。正規職員と非正規職員の賃金、社会保障などの格差はどんどん広がる。格差社会がどんどんすすむ。 著者の鹿嶋敬さんは「多様なはたらき方はあってもいい」といいながら、格差の拡大には警鐘を鳴らす。鹿嶋さんは、厚生労働省などの資料を踏まえ、直接の取材を通して非正規職員の実態に迫る。また、正規職員の長時間労働にも警鐘を鳴らす。
 実態に迫る中で明らかになるのは、非正規職員が若年層だけでなく、中高年者にも確実に広がっていること。
 非正規職員が増えつづける背景に「自由に働きたい」という要求がたしかにあるのは事実だが「社員を育てる教育投資も必要ない。それはみんな派遣会社、請負会社が行うべきこと。福利厚生にもお金がかからない。社会保険や雇用保険の負担はゼロ、退職金のための引当金もなくていい・・・」企業の勝手主義、人件費削減、儲け主義を指摘する。 
 請負は、人間ではなく人材の「カンバン方式」のモノになっているとも。
 パート職員が、「社会保険に加入できますか」と会社に問うと「そんなことを聞くのはあなたが初めて」と皮肉ともいやみとも取れる言い方をされたり、社会保険に加入できても「時間給を削減された」実態も明らかにされる。
 はたらき方を選んだつもりが、賃金も権利も社会保障も使用者のままに働かされる非正規職員。低賃金のため、家賃が要らない両親の家で暮らす「パラサイトシングル」。高い家賃を払うためのバイトを掛け持ちするフリーター。若者たちは夢も希望も捨てなければならない。低賃金のため結婚もできない。非正規職員同士が結婚しても子どもが産めない。こんな日本に未来はあるのか。
 一方、正規職員の実態はどうか。「自分をなくしてしまった」と、ある職場で若い職員が自殺。営業の第一線で働かせ、人間の尊厳を奪いかねないような罵倒、人間を自殺まで追い込む。相手の私生活などお構いなしに無理難題をぶっかけて仕事させる。セクハラも後を絶たないが、パワー・ハラスメント、モラル・ハラスメントも増えている。  新自由主義、市場万能論が日本列島を覆う。正規であれ、非正規であれ,人間の尊厳を取り戻す、企業の社会的責任を追及する労働運動が求められている、切迫した課題を提起している本です。

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