真実はどこに隠されたのか
アメリカの弁護士が解き明かす真相

「えひめ丸」

 今年の2月9日、えひめ丸事件から5年がたちました。何の前触れもなく、一瞬にして悪夢と変わった船員や教師、生徒たち。9人の尊い命がアメリカの原子力潜水艦によって奪われました。
 事件の悲劇については、知られていますが、その背後にある隠された事実はあまり知られていません。この事件の背後に潜んでいる事実を追い続けたアメリカの弁護士・ピーター・アーリンダー氏。日本の法律を学ぶため滞在した経験を持ち、被害者の立場で事件を追い続けてきました。
 ピーター弁護士は、アメリカの原潜・グリーンビルの当日の行動を記録によって再現。艦長だったワドルはなぜ軍法会議でなく審問委員会にかけられたのか。そこには、米海軍関係者の保身と特別招待客の利害が絡んでくる。
 被害にあったえひめ丸の所有者・えひめ県知事の不可解な対応への批判も鋭い。県は、米海軍との対応に顧問弁護士を頼むが、その弁護士が被害者の訴訟の弁護も引き受ける。
 アーサー弁護士は、えひめ丸の構造的欠陥を見逃さない。もし。構造的欠陥が訴訟で取り上げると県の責任も問われる。
 その欠陥的構造とは、他の実習船と違ってえひめ丸はマグロ漁を中心すえた構造で実習生や船員の安全を守るうえで問題を持っていました。この責任が問われれば、被害者が県にも賠償を請求できます。同じ弁護士事務所の弁護士が加害者と被害者の弁護を引き受けると「利益相反」になります。
 これはも米海軍の弁護士さえ心配していました。これを平気で実行したえひめ県知事。
 当初、ワドル艦長の被害者への謝罪は、海軍によって拒否され続けていました。アーサー弁護士やアメリカのピープルズ・ロイヤー、ジェリー・ドットソンの奮闘で謝罪させることに。
 この「えひめ丸事件」―語られざる真実を追うーによって、えひめ丸事件のなぞが理解でき、アメリカ海軍の責任も明確になってくる。また、愛媛県高教組や被害家族のたたかいも明らかにされています。労働組合の役割も浮かび上がってきます。
 新日本出版、2200円(税別)ピーター・アーリンダー著 薄井雅子翻訳・共著

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