格差社会に警鐘乱打3冊の本

 格差拡大、二極化、格差社会という言葉がしきりに使われるようになってきました。日本も米英のように所得格差の拡大傾向をみせています。話題の新刊三冊からその実態を探ってみると。 

『しのびよるネオ階級社会』
(林信吾著、平凡社)は、十年にわたり英国で階級社会をつぶさに見てきたジャーナリストの最新作。貴族と大地主などの上流階級、そして中産階級、労働者階級の格差構造をレポートしています。教育環境の格差と階層固定化などを紹介しつつ、日本もエリート、スペシャリスト、低賃金労働者に階層分化し、「イギリス化する日本のネオ階級社会」に警鐘乱打。働き方、生き方を問い、機会の平等の重要性を訴えています。 

『希望格差社会』
(山田昌弘東京学芸大学教授著、筑摩書房)は、二極化には「量・質」格差があり、収入だけでなく、将来見通しなど「希望格差」があると指摘。「日本社会は将来に希望がもてる人と絶望している人に分裂していくプロセスに入っているのではないか。これを私は『希望格差社会』と名付けたい」。教育、職業、家族生活など不安定化の打開へ政府、自治体、企業などの総合的でスピーディーな対策を提唱しています。

『働くということ』
(ロナルド・ドーア・ロンドン大学教授著、中央公論)は日本労働運動への提言者でもある同氏の最新作。雇用機会の不平等、賃金格差、教育格差など各種の不平等について、職場の競争激化や労働者保護の後退などを指摘。「不平等拡大の基本的要因は労働組合の力の低下」と指摘し、逆転にげきを飛ばしています。

 「格差拡大は努力をあきらめ自暴自棄になる人もでて社会不安を高める」との指摘もある。悪化する生活と将来不安を招く格差社会の阻止へ賃金水準引き上げと均等待遇、雇用保障、福祉拡充へ労組と野党の奮起が望まれています。
目次へ