中高年職員は7%の給与引き下げ

全国的には18%もの地域差

いくつかの質問に人事院が回答

 公務労組連絡会は人事院との交渉で、現在人事院が進めている「給与構造の見直し」について、ただしました。

(1)北海道・東 北ブロックの官民較差(寒冷地手当を含む)5%がなぜ全国俸給表水準決定の根拠とされるのか

 ●地域の民間賃金水準をより反映するため、ブロック別の官民較差を参照 し、俸給水準を5%程度下げることを提案している。「公務員給与が高い」という批判の原因は、地域別の手当が12%と少ないためではないかというのが 当初の問題意識であったが、有識者研究会にも図った上で、現在以上に地域較差を反映する必要があると判断した。
・ そのやり方はいろいろ考えられるが、職務給原則の枠内で「全国俸給表+手当」という枠を維持しながら、地域差を拡大することがよいと判断。俸給表水準(ベース)を下げる代わりに地域調整手当を拡大するやり方の方が、(当初言われていた)ブロック別俸給表の導入よりは合理的で、組合の意向にも沿うものと考える。
 ・俸給表水準をどれだけ下げるかは、民間給与と公務員給与の散らばり(較差)が一番大きいところをみて考える。それがどの程度あり、どのような指標でみるかについては、各種統計資料の中から賃金センサスによる県別較差も試算したが、現在のラス比較が総水準をつくっていることから、これを使うのが一番納得性が高いと判断。これにより職務評価の違い、職種の違いも統一されるし、地域較差もより緩和され、妥当、穏当なものとなる。ブロック別にすることで、都市の分布もならされ、職種も統一され、より穏当な差となる。
 ・これにより俸給水準が設定されれば、ブロック別較差には意味がなくなり、あとは地域別指標に基づいて地域手当を具体的にどうするかということになる。
  ●18%の差は民間準拠からいってどうかというが、民間でも手当による地域調整は相当みられるが、本俸に相当する基本給によるものは少ない。ただ、民間では全国展開にあたり、地域別に子会社をつくり、給与の地域別調整をするとか、地域限定社員制度とすることが多い。その点で、公務は子会社は作れず、単純に民間と比較できない。もっとも全国展開しているのは国しかないので、地域の水準に合わせるには手当が適当と判断。

 ●寒冷地手当を含めた比較というが、民間の燃料手当も含めて総所定内給与で比較している。

 
(2)官の都合で転勤しても転居を伴わないと転勤手当が> でないのはなぜか、 
 ●転勤手当の考え方は、民間は地場にいる人と広域異動するグループとでは水準に一定の差があることを踏まえ、公務でも手当で一定の水準調整をしてはどうかということ。ただ、異動の形態は県内、管区内などいろいろであり、広域展開しない地場の人と、管区内や全国異動者の人の特定をどうするかということで、転居・転勤を対象にしたいというもの。
 
(3)地方の高齢者は7%以上の引き下げとなり、枠外者> はそれ以上というのは働く意欲にも関わり、根拠も曖昧で納得できない 
 ●地場の公務員給与が高い要因には、地域別水準差のほかに年齢別カーブが公務が立っていることもある。素案の説明では、非支給地の高齢層で7%程度の官民較差があると説明。取り方によっては10〜12%高いともいえる。
 民間は成果主義導入など年功賃金見直しでフラット化が進んだが、公務は是正 が進まず、カーブが立ったままになっている。地域別要因の5%を超える年齢要因2%分をカーブのフラット化で是正し、その分を生活も考慮して若年層に積み上げることで、結果的に5%下げても絶対額が下がらないようにしたい。

 
  公務の成果主義はなじまない 
 

 この回答に対し、参加者からは「地方の賃金が引き下げられることは憲法が保障する法の下の平等や幸福追求権にも反する」「地方事務局は本院に伝えるというだけで、十分な説明責任を果たしていない。その一方で、マスコミでには具体的な検討内容が報道される事態も続いている」「地域差を拡大する理由で、納得できる説明はないし、地域差指標もブレが大きく信頼性がない」「夏までにすべてやるというなら、その重大性にふさわしいキチンとした説明が必要」「枠外廃止、査定昇給、退職手当への影響も含め、職員の士気への影響が大きい」「何でも民間準拠ではなく、公務の特殊性についても人事院が積極的に説明する必要がある」「チームワークへのマイナス影響も含め、公務に成果主義はなじまない」「地方に影響の大きい今回の見直しは、景気回復やバランスある地域経済発展の足を引っ張るものだ」などと、回答内容への反論や見直しの問題点の指摘が相次ぎました。
 それを受けて人事院側は、さらに以下のように再回答しました。
 ●国民やマスコミからの相当厳しい声に対し、公務員給与に対する信頼を確保するためにも、夏には成案を得て勧告する必要性が高まっている。素案は人事院のたたき台であり、これをもう一度練り直した上で、勧告することになれば、勧告に向けての再提示をし、さらに作業することになろう。関係者との議論はその中で行う。マスコミへのリークなどはない。実際、素案や報告を含めた後追い記事が多い。
 ●地方事務局に対しては、資料も含め内容を説明している。不十分な点はさらに指導したい。各省当局に対してもできるだけ早く意見を聞くようにしているが、やむを得ないという意見が相当数あると認識している。 ●配分問題として10数年の歪みを直したい。地域配分については調整手当や寒冷地手当の見直しを通じて行ってはきたが、地域と年齢で歪みがでている。これは通常のベア配分の中ではできない。研究会や勧告後の説明会でもそうした問題が指摘された。民間と比べて配分是正が進まず、地域別の較差も拡大傾向にあるなか、地域較差反映が不十分という認識に達し、データも示しながら現在よりも民間との差を反映することにしたい。
 ●地域経済への影響は経済政策上の問題であり、そのために公務員給与を考えることは、困難だ。なにより公務員給与への理解が重要。
 ●職務給原則の中で、俸給表は維持しつつ、引き下げ後の俸給と地域手当の関係は基本的に今と同じであり、性格を変えるものではない。
 ●退職手当への影響はあるが、それについては総務省で検討している。
 ●年齢別配分を是正して初任給から世帯形成層までは下がらないような見直しを考えている。その層は5%を下回る。
 ●枠外については、民間でどこまでも枠外を超えるようなことはないので、廃止を考える。1号上位昇格によって先輩より高い水準に達していることもある。それについては、相当程度の経過措置も考える。(職員の士気については)勤勉手当等、がんばりで処遇が決まるという勤務成績反映の措置も検討する。
 ●民間の成果・実績主義見直しの動きはあっても、年功給に戻ったという話はない。より合理的なやりかたで苦労している。何でも民間準拠というつもりはないが、国民の理解と支持を調達するためにも、民間とそうかけ離れるのも問題であり、民間で大幅に成果主義が入っているなら、公務も遅れないようについて行かねばならないが、この面でもなかなか進まず、遅れている。国会からもその辺を指弾されており、改革の実を上げたい。
 ●5%の引き下げといっても配分があるので、その分はどこかに必ず戻るし、給与水準は変わらない。戻る先は転勤手当とか特別調整額の地方の分の改善もあるので、地域も5%は下がらない。
 さらに組合側は、「較差拡大の判断理由としてはとても理解できないし、18%もの較差は民間と比べても大きすぎる」「寒冷地手当は経過措置もあるし、手当の性格からしてもこれを含めた比較は問題」「単純な年齢別給与較差を根拠とするカーブのフラット化は問題。職種、役職、資格、仕事の特性なども考慮すべき」「若年層は水準が維持されるとしても、3級で退職するものはいない。将来、6級、7級で退職することも念頭に検討すべきだ」などと主張し、交渉を締め括りました。