雨宮処凛の世直し随想

 

「ヘイトデモの悲しい光景」
 最近、ヘイトデモを初めて間近で見た。

 遠目に見たことはあったし、動画などでは何度も見ていた。しかし、今までどうしても間近で見る勇気がなかった。

 自分が今まで漠然と信じてきた人間の良心だとか善意だとか、そういうものが崩れそうな気がして怖かった。今まで傷つけられたことのない深い部分を、ざっくりえぐられるような予感がした。だから、周りの人たちがカウンターに行っていることは知りつつも、足が向かなかった。

 だけど、誘ってくれる人がいて、勇気を出して行ってみた。

 桜が咲き始めた頃の日曜日、新宿の街に現れた、日の丸を持つ一団の姿を見た瞬間、現実感がさっと蒸発したような気がした。

 彼らが掲げるプラカードには「難民受け入れ絶対反対」「移民難民で日本解体」「日韓断交」などの文字。参加者たちが笑っていることも衝撃だった。

 100人くらいのデモ隊の前で、「レイシストを通すな」と座り込んだ数十人を警察が暴力的に排除していく。中には座り込んだ女性の顔をわしづかみにする警官の姿もあった。

 むき出しの暴力と、白日の公道に堂々と響き渡る差別語に、脳が現実をうまく処理できずにフリーズした。

 「帰れ!」。カウンターの人たちは口々に言っていたけれど、全身が硬直して、言葉も出ないままだった。

 どうしてあんなデモをするのだろうという言葉が、今も頭の中をぐるぐる回っている。

 残酷で、ただただ悲しい光景だった。〈連合通信〉