宿願の「過労死防止法」が

落語作家・笑工房代表 小林康二

 5月27日、国の責任で過労死対策を進める「過労死防止対策推進法案」が、衆議院本会議を全会一致で通過した。傍聴席には同法制定に全力傾注して来た「過労死家族の会」メンバーの涙で抱き合う姿があった。

 働き過ぎて死ぬ「過労死」を社会問題化したのは、労働弁護士らが88年から始めた「過労死110番」だ。

 ベアリングメーカーの椿本精工に勤続28年の平岡悟が、年間3500労働時間のすえ88年2月に48歳で突然死した。妻チエ子は同年4月の大阪「過労死110番」に電話を入れ、6年に及ぶ一家の闘いが始まった。1年後に労災認定を勝ち取るが、会社への損害賠償訴訟は「残業手当欲しさで自ら行った率先労働」だとする会社主張に反論する一片の資料も無く困難を極めた。しかし平岡訴訟を応援する世論を前に会社も裁判所の和解勧告を受入れ、94年11月、全国で初めて企業責任を全面的に認めた過労死和解が成立する(これを機に企業責任を認める判決や和解が続く)。

 長男は報告冊子で、過労に目をつむり遺族の闘いを一切支援しなかった労働組合を「死んだ組合だった」と指弾した。

 「過労死防止法」制定をめざす「家族の会」の訴えに対しても、「我々は労働基準法の改正で過重労働を無くす」と、一部を除き日本の主要組合は冷淡で非協力的だった。同法成立を前に組合の幹部たちは今どんな思いか聞きたい。

 「家族の会」の宿願が凝縮した「過労死防止法」は6月成立する。これを活かすも殺すも労働組合次第だ。いつまでも「死んだ組合」であってはならない。