「生涯派遣法」を許さず

落語作家・笑工房代表 小林康二

 「入社12年、頑張っていれば正社員になれると信じてきたが……今は、退職を考え……」。大手旅行会社労組での講演後、控室を訪れた女性組合員の相談だ。

 今、労働者派遣法改正案が国会でヤマ場を迎え、安倍首相は派遣労働者の「待遇改善……、正社員を希望する派遣労働者は正社員へ道が開かれる」と衆院本会議で気色ばった。しかし肝心の派遣労働者からは「生涯派遣につながる」と反対の声が強く、労働組合も「生涯派遣、正社員ゼロ法案」と手厳しい。ただ財界は「企業側として使い勝手が良くなっている」(榊原定征・経団連会長)と歓迎だ。

 「働き方の自由な選択」を喧伝して広がった非正規雇用が、今や若年労働者の半数近くを占めるが、そこには「自由な働き方」という解放感は微塵もない。

 それどころか絶望と暗澹(あんたん)たる日々の中でブラック企業の「正規募集」に託して転職し、心身を病み退職する若者が後を絶たない。その多くは心身に残った傷をどこにも償わせることも出来ず、中には自死する青年もいるのだ。

 安倍首相が「改正法案」を少しでも派遣労働者の待遇改善に役立たせる気があるなら、「同一労働同一賃金」の原則に従い改正案に「均等待遇」を明記すれば済むことだ。だが、それを拒否するのが安倍内閣だ。

 いつの時代も戦争は「平和」を口実に強行されてきたが、安倍首相の「正社員への道」もその類で、政治家の嘘には辟易する。

 安倍首相が国民に与えようとしている「改正アン」は毒アンのアベ川もちで、国民の幸せとはアベコベだ。