「桜を訪ねて15年」

落語作家・笑工房代表 小林康二

 「春ごとの花にこころをなぐさめて 六十あまりのとしをへにける」。桜の歌人・西行法師の一首である。桜好きの私も各地の桜を巡って15年。ただ、私が訪れるのは「名所」ではなく1本の名桜である。

 山梨県北杜市の山高神代桜、岐阜県根尾の淡墨(うすずみ)桜、福島県三春の滝桜の日本三大桜はもとより30本超の名桜を訪ねた。

 一番のおすすめは三春の滝桜。エドヒガン系ベニシダレで樹齢は千年超だが、枝振り東西25メートル、その隅々に濃いピンクの花を咲かせ樹に勢いがある。毎年4月、私は滝桜の下で数時間を過ごす。親子連れ、幼稚園児、息子の背の老人、熟年夫婦、若いカップル等、老若男女が幸せいっぱいに花を仰ぐ。万人が幸福を感じる社会を実現できないものか、と痛感する。

 出身地の関西では、京都舞鶴の吉田のしだれ桜、奈良は仏隆寺の千年桜、兵庫が養父市樽見の大桜。滋賀は水上勉の小説「櫻守」に登場する清水の桜で、花びらが墓地に散る風情は幻想的哀愁をおび、五体が凍るほど感動した。

 品種は、やはりエドヒガン系のシダレ桜が最高、見頃は開花の3日間と散る花吹雪。ただし桜は気まぐれ、わずかな気温の変化で機嫌を損ね開花予想を狂わせるから困り者だ。

 昨年も山高神代桜の「桜まつり」に出かけたが、花は散りつくして葉桜ばかり。ガックリして、「旅費を返せ」と怒鳴りたい気分だ。トホホホホ。

 何です、「大阪の有名な桜?」ですか。それは「ハシモトサクラ」やねぇ。ただし品種がジミンホカンサクラですから有害でっせ。