「人生最後の裁判闘争」

落語作家・笑工房代表 小林康二

 突然の訃報だった。昨年11月30日、東京出張中の私に「娘婿Tが死んだ、すぐ連絡を」のメールだ。「急病か? 交通事故?」と聞けば、「自殺だ」と、ケイタイの向こうで号泣している。5年前に次女と結婚し仲睦まじい39歳が「なぜ?」「どうして一言……」、疑問と悔いが交錯し、「早く」「急いで」と焦るが足が前に出ない。

 Tは高卒後、中小零細企業や「非正規」を転職し、「将来安心な仕事」をめざして35歳で理学療法士養成専門学校近畿リハビリテーション学院夜間部に入学した。成績は学年トップで就職先も内定し、4カ月後に卒業予定だった。だが実習先のハラスメントに耐えきれず、そこを飛び出して夜半に縊死した。同学院では5年間に二人目の自殺だ。

 近年、若者の雇用環境が厳しい。一度「非正規」に就くと「正規」の再就職は至難なだけに、資格取得で「正規に」と、数百万円の入学金と授業料を工面し「これが最後のチャンス」と勉学に励む30代の若者が増えている。彼らにとって卒業や就職の失敗は「絶望」を意味する。「専門学校では実習生の自殺や失踪が時々ある」と元同学院教官は語る。

 Tは実習先で、いわれなき叱責、意図的な無視、衆人面前での罵倒等々に苦しむメモを残し、さらに膨大なデイリー(宿題)に連日午前3〜4時まで追われ、心身疲弊して命を絶った。

 夜中、目を覚まし明かりのないTの部屋を見るごとに今も涙が……。

 28日は一周忌だ。我々家族は安全確保の義務を怠った同学院と実習先クリニックを相手に訴訟を起こす。