「新日本むかし話」

落語作家・笑工房代表 小林康二

 東の果てに人口1300数人の島があり、島民は昔から「決して戦争をしない」と誓い、戦争で人を殺さず、死なすことなく平和に暮らしていました。

 ある日、この島の新しい酋長が「デフレから脱却」を口実に、お金を大量に印刷してばらまきました。島民は収入が増え大喜びし酋長の人気は高まりました。次に酋長は、カワラ版屋の元締めに忠実な子分を据えて情報を操作し、酋長の秘密を「しゃべったり、知ろう」とすれば10年間島の洞窟に閉じ込める掟を定めました。島民は自由にものを言わなくなり、「長いものには巻かれろ」と、酋長に逆らいませんでした。次に酋長は「親分の軍隊を守ることが島の平和に必要だ」と、島は攻撃されていないのに親分の敵国を攻め、たくさんの人を死亡させました。相手国は怒って、島の原子力発電所にミサイルを撃ち込みました。島は放射能で汚れ島民は皆死にましたが、自動車や原発の商人と、商人が儲かるように手助けした酋長一家は早くから海外に移住して生き残りました。

 この島には何千年も咲き続けてきた桜の大木があり、根元の石碑には「再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と刻まれていました。

 しかし、その石碑も放射能でボロボロになって読みとれず、生き残った傷だらけの桜も「まだ何千年も、何万年も生きたかったのに、誰がこんな島に……」と言って朽ち、島に桜は二度と咲きませんでした。

 この島は今……。